マニュアル作成初心者向け・おすすめ書籍案内(第4弾・「人を操る禁断の文章術」・DaiGo著)

「マニュアル作成」を進める本に、なぜメンタリストのDaiGoと思われるかもしれない。しかし、それが非常に役立つのである(特に私にとっては)。まず、マニュアルとは「読む人に行動させる本」である。当然、文章もそのようになっていなければならない。読んだ人が行動しないマニュアル、読んだ人が「何をしていいのかわからない」というマニュアルは無意味なのだ! その点、この本は徹底的に「読んだ人を動かす(操るというと印象が悪いが)」ことに重点を置いている。だから「マニュアル作成」には大いに役立つのだ。

そして、これは私の本業にも役立つ。「自分史作成サービス」において、作成された自分史を読んだ顧客の満足度をあげる文章を書くテクニックが満載だった。人が興味を惹きつけられ、「面白い!」「感動した!」となるような自分史を書くには、読者の感情を動かさなければならない。この本は、まさに「人の感情を動かす文章の書き方」が大量に入っていた。

そしてもう一つ、この本はズバリ「自分の商品・サービスを買ってもらう文章の書き方」も満載である。それこそは、自分史作成サービスや自分史ライター養成講座をネットを使って販売している私にとって、求めているテクニックだ。そんなわけで、この本は私にとって、「一粒で3度おいしい本」だったのである。

それでは、早速紹介してみよう!


まえがき:文章だけにできること

この本の「まえがき」は、かなりスゴイ。この本を買う気にさせるテクニックが、バリバリに使われているのだ。具体的に言うと、「この本を手にとった人の想像力を刺激しまくる」ように描かれている。

例えば冒頭には「あなたの思う世界最高の美女とは?」という文章が出てくる。人間には好みがあるから、太ったのが好き、痩せたのが好き、おっぱいが大きいのが好き、小さいのが好き、年上が好き、年下が好き、日本人が好き、外人が好き、ありとあらゆる美女の条件があるだろう。だから、どんな実在の美人を持ってきても、「世界最高の美女」だとは思わない人が出てくる。

ところが文章で「世界最高の美女が、あなたの目の前に現れた!」と書かれると、読者は勝手に自分にとっての「世界最高の美女」を想像してくれる。そして、勝手に鼻の下を伸ばしてくれるわけだ(笑)。これは文章にしかできないことだ、と本書は語る。確かにその通り。

さて、ポイントは「読む→言葉に反応する→想像する」という人間の避けられない仕組みがあることだ。DaiGoは、この「読者の想像力」を使え、とこの本で訴えている。本書の表現を借りれば、「文章はただ書くのではなく、読んだ相手の心を動かし、想像力を使ってもらうために書く」ということだ。

では、なぜ、「読者の想像力」を使ってもらう必要があるのか? その答えは、人間は想像すると、ワクワクし、相手の提案を聞いて行動を起こす準備を整えてしまうからだ! 

自動車のトップセールスマンは、新車の性能や品質については語らない。まず、「どこへ行きたいですか?」「誰を乗せたいですか?」といった、顧客が車に乗っている場面を想像させるそうだ。

自分史なら、「どんなことを書いておきたいですか?」「誰に読んでもらいたいですか?」といった質問をして、顧客が自分史を作っているところ、自分史が完成してそれを誰かに読んでもらっているところを想像させる、ということだろう。

で、このように相手がポワワン……と想像を広げたところで、「週末に試乗会があります」と言うと、何人かは来てくれる。自分史なら、「無料相談」を申し込んでくれる、と言うことだ。

つまり、現時点で、その商品(車や自分史)のことを考えていない人に、いきなり商品やサービスの話をしても反応は起こらない。しかし、その商品を使っているところを想像した人は、その商品に関心を持ち、こちらが望む結果を出せる可能性がグンと高まる、と本書は主張する。たしかに、自分たちのものを買う時の心の動きを思い返せば、そうかもしれない。

この本は、「読む→言葉に反応する→想像する→行動を起こす」という人間の仕組みを利用した文章術、ということなのだ。本書ではこれを「読み手の想像力を刺激して、感情を揺さぶり、行動を誘導する文章術」(メンタリズム文章術)と名付けている。そこで大切なのは、「相手の興味を探り、心に刺さる言葉を投げかけること」であり、そのためのテクニックが色々と書かれているのだ。

また、文章は「文字」だけでできているので、営業マンのルックスにこだわる必要がないのもメリットに本書ではあげられている。保険の営業マンなどは高いお金で、常日頃から外見を整えるが、文章は一度完成させてしまえば、そんな必要もないわけだ。

第1章:文章が持つ力は無限大

まず、第一の例として、「オムツ売り場で使い捨てカメラを売った」コピーが紹介されている。

「私たちは想像力のスイッチを“カチッ”と入れられると、あとは勝手に行動に移してしまうと解説される。

オムツを買いにくる人=身近に幼児がいる←想像できる状況
幼児=かわいい=写真に残したい←潜在的な欲望

コピー「今しか見れない姿、残しませんか?」

オムツの横に使い捨てカメラを置く=買ってしまう

自分史の場合はどうだろうか?

自分史というキーワードでネット検索する人=どういう状況?
どういう状況?=潜在的な欲望は?

どんなコピーで、想像力のスイッチが押せる?

→自分史を買ってしまう

繰り返しになるが、メンタリスト文章術の極意は「相手の想像力を使って、こちらの望む行動を起こしてもらう」こと。ぜひ、自分のホームページの中で、こういう流れを作りたいものだ。

コラム1:名文を作る方法

ここでは名言を作るコツが書かれていた。ゴーストライターの仕事もあるため、なんかいい感じの名言っぽい言い回しを作る技術は、ぜひ身につけたかったところ。そのコツは本書によれば、たったの2つだった。

コツ1:名言は、誰が聞いても当たり前で常識的なことを述べる。

たしかにそうでなくては、誰もが納得できない。しかし、それでは「当たり前やん!」「聞いたことあるし!」と言われてしまう。そこで、コツ2。

コツ2:過剰で具体的な条件を表す言葉を組み込む。

本書ではこんな例が挙げられていた。

成功者は夢を諦めない←当たり前で常識的な文章

成功者は、「飢え死にしそうなときでも」夢を諦めない←名言に変身!

とにかく、具体的な数字や無茶な前提条件をつけると、名言っぽくなるらしい。エジソンの名言も、だいたいそれだ。

「成功したいなら一日18時間頑張れ」
「失敗はしていない。うまくいかない方法を700通り発見しただけだ」

自分史でも、読ませる内容にするには、このテクニックが使える。まず、インタビューの段階で「その人らしい過剰で具体的な表現」を拾う。そして、それを使って原稿を書くのだ。そうすれば、その人らしさが出るし、もしかしたら名言と受け止められるかもしれない。

第2章:書かない「3原則」で人を操る

メンタリズム文章術・大原則その1〜! 「あれこれ書かない」

書くときには、「自分が何を伝えたいか」ではなく、「どのように書けば読み手が「それをしてもいいかな?」「ぜひ、そうしたい!」と思うのかを考えよう。

ここまでの人間の仕組みからすると、情報を伝える文章よりも、想像してしまう文章を書こうということだ。で、その想像してしまう文章というのが、「あれこれ書かない文章」なのである。

「人間は受け取った情報が少ないとき、自分にとって好ましい方向に想像を働かせやすい」

……人間は都合よく物事を解釈したがるということですね! これを私のメンターは「理解と誤解の狭間を利用する」と言っていた。本書では「読み手が都合のいいように想像できる、ある程度の隙や余白を残した文章がいい文章、と言えると書いてある。あえて短い文章にするのが正解だ。

あれもこれもと情報を詰め込んだり、あれもしてほしい、これもしてほしいと書き手の狙いがボケていてはダメなのだ。

だから、「相手にどんな行動をしてほしいか」を明確に決めてから、文章は書かなければならない。これが「ワンメッセージ・ワンアウトカム」とのこと。だがこれは、ワンメッセージ・ワンゴールと言ったほうが伝わりやすいかも?

「自分史作成サービス」なら、「問い合わせ」というリアクションをしてほしいというイメージを持つことだろう。

ここで大事なのは、冒頭にも出てきた読み手の姿を考えること。読み手の姿を想像し、適切な材料を集める必要がある。また、言葉選びも変えなければならない。

メンタリズム文章術・大原則その2〜! 「きれいに書かない」

洗練された文章より、感情がこもった文章の方が、読み手の感情は動く、ということ。自分史で言えば、こぎれいな文章よりも、個人的な思いや背景が盛り込まれた文章の方が好まれる、というふうに活用できるだろう。

伝わる文章に必要なのは、互いを結びつける言葉(交わした会話の続き、相手が関心を持っていた出来事の報告、家族の近況を問う一言)。定型文は血が通っていないのでダメなのだ。

文章には、読み手の感情に響くキーワードが大切。「読み手」や「書き手」がそこにいるかのようなイメージが浮かび上がる文章がいい。例として、本書では

「肉汁がジュワっと」←ハンバーグの感想
「気になりませんか?」←ダイレクトメール
「ねぇ、私のこと本当に好き?」←レンタルビデオのポップ

メンタリズム文章術・大原則その3〜! 「自分で書かない」

ここはマーケティングには必須のポイントだが、自分史作成サービスでもとても大事なポイント。読み手がどんな人か、どんなことについて悩んでいるかを考えて、書けということだ。

これを本書では、ズバリ「書くべきことは相手の心の中にある」と指摘している。だから文章を書く前に「読み手の心を読む」=マインドリーティングをせよ、と続く。

具体的には「メールの文面を見直す」「SNSで相手の趣味や興味をリサーチする」「実際に会ったことがあれば、その時の会話や出来事を思い出す」といったことだ。

自分史ならば、打ち合わせプラス2回インタビューを行うので、打ち合わせや1回目のインタビューで大体のポイントを掴み、2回目のインタビューで深掘りをし、そのインタビュー内容からキーワードを見つけて、それを中心にして書き上げるということだ。刺さる言葉は書き手の中ではなく、相手の心の中にある。自分史作成サービスでいうなら、顧客の言った言葉こそ、一番顧客(読み手)に刺さるのだ。

自分が書きたいことを考えるより、読む人のことを調べる時間を取ろう、とこの章はまとめられている。文章を読む人の「読みたい内容」や「求めている言葉」を探ろう。←例題で面白かったのが、「クリスマス前に独身男女を勧誘する結婚相談所のポスター」を考える課題。正解は「まだ、間に合います!」……確かに一番言ってほしい言葉だと思う。

第3章 人を動かす7つの引き金

人間が文章を「わざわざ」読んでくれるのは、そこに「自分の欲求と関連したことが書いてある」と気付いた時だけ、と本書は指摘する。

「読まれる文章には、『あなたの欲求を満たすものがここにありますよ!』という強い求心力が備わっている」

で、この求心力の源が、人間が持つ7つの欲求だそうだ。この欲求に関連した言葉を文章に散りばめることで、読み手が読みたい文章になるとのこと。それは以下の通り。

トリガー1:興味

「読者は自分が興味を持っていることが文章に書いてあれば、その文章を読む」

当たり前すぎるけれども、忘れがちなポイントだ。そのために、メールやSNSを調べるのが大切ということ。そして興味のあることを書き、相手が使っている言葉を使えということだ。自分史作成サービスなら、インタビューの時には、相手が興味を持っていることを探りだし、それを書けということだろう。

これはマーケティングの話になるが、相手と面識がなくても、相手と同じ業界の人のフェイスブック、会社がある地域や出身地、読んでいそうな雑誌もヒントになるとのこと。想定顧客に刺さるマーケティング、コピーを書くコツだ。

トリガー2:ホンネとタテマエ

相手の隠されたタテマエを認め、タテマエのつらさに共感し、本音も認めてあげるのが売れる文章。ここでは、特に使えそうな具体的なフレーズが出てきた。

「●●だって、人間ですから」→(使用例)「先生だって人間ですから」
「普通の人だったら」→ちなみに「自分だったら」は超NGワード! うっかり間違えないように!

タテマエを認め、共感するとともに、本音(=隠された欲望、つまり理想の状態)に気づかせて、そちらに誘導(=解決策である商品・サービスの購入)に結びつけるのだ。

トリガー3:悩み

人間の悩みの9割は、次の4つとのこと。

Health(健康)
Ambition(将来の夢、叶えたい希望)
Relation(人間関係)
Money(お金)

これらに世代を掛け合わせると、大体その人の悩みが当てられるそうなのだ。(メンタリスト的に)。10代の健康の悩み、20代の健康の悩み、30代、40代、50代、60代……それぞれ大体決まっている。だから、文章を書くときには、それぞれの想定顧客に合わせた言葉やテーマを選ぼう、という内容だった。

読み手の世代に合わせ、どんな悩みを抱えているのか、想像しながら(または調査して)書き出そう。厚生労働省の国民生活基礎調査のほか、統計データやインターネットが使えるそうだ。

トリガー4:ソン・トク

人間は「5000円のトク」よりも「5000円のソン」がツライ。

また、デメリットとメリットの両方を提示した方が、文章に説得力が増す。ただし、「ソン→トク」または「トク→ソン→トク」の順番を間違えないように(必ず最後は「トク」で終わらせる)。

トリガー5:みんな一緒

これまた使えるキラーフレーズが登場。

あの人(あの人たち)と一緒になりたい……という顧客にグサリと刺さるのが、
「いつまでも肌が綺麗なセレブたち。その秘密は『水』にありました」

想定顧客が誰と一緒になりたいかという「憧れ」や誰と一緒になっているかという「共通点」探すことがポイント。

また、自分だけ乗り遅れたくない……という顧客にグサリと刺さるのが、
「●●%の人が●●してます」というフレーズ。

具体例
「ご存知ですか? 今、30代の人たちの40%がすでに家を購入しています」
「ご存知ですか? 今、30代の人たちの75%が家を買おうと考えています」

自分史に使うなら……
「ご存知ですか? 今、80代の人たちの40%が自分史を作っています」
「ご存知ですか? 今、80代の人たちの75%が自分史を作ろうと考えています」

「みんな一緒」「共通点」は距離感をぐっと縮めてくれるので、自分史には「地元の風習」「家族の習慣」を入れたい。

トリガー6:認められたい

またまたキラーフレーズ。鉄板の「ヨイショ」ワード。

「こんなの初めて〜!!」
「変わりました〜!!」

具体例
「こんなに楽しい時間を過ごせたの、初めてでした」
「お散歩デートがこんなに楽しいなんて、街歩きで見えてくる風景が変わりました」

年下の承認欲求を満たしてあげるときには、こんな風に。
「それは初耳だよ。また教えてくれ」←初めて〜!
「若いやつの考え方、見直したよ」←変わりました〜!

トリガー7:あなただけ

「会員だけのおトクなセール」、「会員だけに伝える情報」は読み手の心を動かす。具体的には、「あなただけに伝えるから、内密に」というのがコツ。

コラム2:ブレインダンプ

テーマを決めて、ひたすら関連キーワードを書き出す。タイマーを使って、5秒〜15秒に1個キーワードを出すようにすると、思いがけない言葉が出てくる。

第4章:あとは5つのテクニックに従って書くだけ

テクニックその1
書き出し(=文章の冒頭)はポジティブに(=元気よく!)

文章の冒頭は、ポジティブな体験(「初めて〜!」とか「変わった〜!」)を書くと良い。自分の感情の動きをしっかりと言葉にする。相手との共通体験なら尚よし。自分史なら、本人(顧客)の感情の動きをしっかりと言葉にする。

テクニックその2
なんども繰り返す

同じ言葉を言い換えるのではなく、同じ目標を様々な切り口で表現するということだと思われる。

(具体例:相手の心をつかみたい)
「誘われたゴルフは楽しかった」
「いい出会いがあった」
「ゴルフスクールのコーチよりアドバイスがわかりやすかった」

相手が嬉しくなる言葉を「繰り返す」ことで、効果が出る。

要するに、こないだのゴルフは楽しかった、また誘ってほしいという感情を具体的な言葉に変えて、繰り返すということだ。

「うれしかった」「楽しかった」ではすぐにネタ切れになるので、5W1Hで、表現すると良い。

これは自分史を書くときも使えそう。
まず、「うれしい」「たのしい」ではなく、具体的な内容・エピソードを書く。
5W1Hを、「感情を表現する道具箱」にする。
これにより読まれる文章になる。

Who:誰が、もしくは誰の行動がうれしかったか
What:何がうれしかったのか
When:いつうれしかったのか
Where:どこがうれしかったのか
Why:なぜうれしかったのか
How:どのようにうれしかったのか
(他の感情「楽しい」「悲しい」「ツライ」「興奮した」いろいろ使える)

コラム3:3世代向け文章トレーニング

世代により響く表現は違う。60代以上には、「経験」を尊重し、プライドを満たす表現が大事。

テクニックその3
話しかけるように書く

落語のような会話文を書いて、それを文章化すると「読み手」の疑問や反応を取り込んだ、読みやすくわかりやすい文章になる。

テクニックその4
上げて、下げて、また上げる

書き出しはポジティブに、続いて、ネガティブなことを書き、ラストはネガティブをひっくり返してポジティブに締める。そうすると文章はドラマチックになる。自分史もできればそういう構成にすべき。この「上げて、下げて、また上げる」のは、「読み手の感情」であることに注意!

テクニックその5
追伸をつける

追伸は一番読まれるので、「伝えたいこと(願望)」「相手にに行動させたいこと」は、ここに入れるのが良い。

なお、追伸の前に一度文章は終了させておくこと。

コラム4
メールは下から書く

テクニック5の応用で、追伸をまず書き、次に冒頭の3行でポジティブな挨拶文と要件を書く。最後に必ず相手がメールを開いてくれそうな件名をつける。

なお、不特定多数への情報発信なら、少しアヤシゲなタイトルの方が良い。

終わり

(追伸)
使えるテクニックが満載すぎて、びっくり。紹介文章が最長になったのも、無理はない……。

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