ISOのマネジメントシステム認証とPDCAの関係
電子書籍よりも実物の本を読むことが大好きなやまぐち@ISOプロ編集部です。今回はISOマネジメントシステム認証とPDCAの関係性について説明していきます。
ISOのマネジメントシステム認証は、該当のマネジメントシステムにおいてPDCAサイクルを構築するために様々な要求を行っています。例えば品質マネジメントシステムの規格であるISO9001では、顧客満足を最終目的として、品質の継続的な改善を行うマネジメントシステムを構築する枠組みです。
この「継続的改善」と「PDCA」は複数あるISOのマネジメントシステム規格の主要概念として取り入れられています。
そもそもPDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(確認)→Act(改善)という一連の流れを繰り返し行うことで、次の計画の精度を高め、モノゴトを継続的に改善していく手法または概念、枠組みのことです。
このPDCAという考え方はビジネスの分野に限らず様々なシチュエーションで応用が効く考え方です。例えばカレーライスを調理する場合でのPDCAサイクルを考えてみましょう。
Plan・・・必要な材料を洗い出し、段取りを決める
Do・・・計画を実行し、調理をする
Check・・・味や食感を確かめ、うまくいったかどうか確認する
Act・・・確認の結果得られた反省を活かして改善点を考える
ここで重要なのは、Act(改善)のあとにまたPlanに戻るということです。このようなことを繰り返してカレーライスを調理していれば、自然とおいしいカレーライスが出来上がることが想像できますよね? これはマネジメントシステムにおいても同じです。
マネジメントシステムにおけるPDCAサイクルとは
マネジメントシステムとは、ある目的を達成するために組織を運営していくための仕組みのことです。例えば品質マネジメントシステムの場合は、「顧客満足度の向上」というものを目的とした、組織運営の仕組みということになります。
では、この顧客満足度の向上を達成するためにはどのようなことが必要でしょうか? 例えば、PDCAサイクルに沿って考えれば以下のようなことが必要になることがわかります。
Plan・・・具体的な品質目標を定め、その目標を達成可能な計画を策定する
Do・・・品質目標達成のための行動を実行する
Check・・・実行した結果、実行前と何がどのように変わったかを分析する
Act・・・分析したデータをもとに、計画をチューニングする
上記はかなりザックリとしたものでありますが、これこそマネジメントシステムにおけるPDCAサイクルなのです。
ISOのマネジメントシステム規格の要求事項は、PDCAのために
ISOのマネジメントシステム規格の要求事項を読んだことがある方ならピンと来るかもしれません。ISOのマネジメントシステム規格が要求するもの――つまり「要求事項」は、全てこのPDCAサイクルを実行するために必要不可欠なものなのです。
例えばISO9001には、パフォーマンス評価に関わる要求事項があります。これは、PDCAのCの部分である「確認」を確実に行うために必要なことなのです。行ってきた業務に対する客観的証拠に基づいたものでなければ、そのデータは信用できないものとなってしまいますから、そのPDCAサイクルは合理的なものではありません。
ISO27001における「情報セキュリティ目的の策定」という要求事項に関しても、計画し、その計画を改善する時になくてはならないものなのです。具体的な目的がなければ、その計画がうまくいったかどうかということは評価することができませんし、また改善することもできないからです。
このように、ISOのマネジメントシステムの要求事項というのは、全てはマネジメントシステムにおけるPDCAサイクルを構築し、そのサイクルを維持するために必要なものばかりなのです。
ISOのマネジメントシステム規格は合理的な判断を行うためにある
このような視点でマネジメントシステム規格を見た時、ISOのマネジメントシステムは組織が合理的な判断を下すためのツールの一つであるという見方ができます。方針を定め、その方針に即した目標を決定し、その目標を達成するための計画を実行し、確かに信頼できるデータを収集し、そのデータをもとに目標や計画を改善する…こういった流れを構築することができれば、組織は常に合理的な判断を行うことができるようになります。
日本の企業は長年「経験と勘による経営」が横行してきました。もちろん、勘が当たり続ければその組織は成長し続けることができるでしょう。――しかし、情報がこれほどの価値を持つようになった現代においては、「データに基づいた合理的な決断」を行わなければ、生き残っていくことはできません。そして、勘を当て続けるよりも、信頼できるデータをもとに決定を下すほうが持続的に成長し続けることができる可能性が高いことは、誰が見ても明らかなのです。
これからISOのマネジメントシステムの認証を取得しようと考えている企業は、是非上記のような視点でもマネジメントシステムの導入を検討してみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?