小鬼の秘密

 最近奴は融の部屋に籠っている。私のお古のPCに入れた教材のツールでゲーム作成を試みている。存在を融に気付かれていないのをいいことに結構やりたい放題で、自分のアカウントも持っているのだ。
 融が生まれた時嬉しかった。ずっと、家族の中で奴が見えるのは私だけだった。私の子供なら奴が見えるのではないか、そう期待した。思いは奴も同じだったようで、融が物心つく前から色々いたずらを仕掛けていたが、努力空しく視界に入れられないまま今に至る。その過程で人の子向けのコンテンツの威力を思い知ったらしい。ランドセルの中身を入れ替える等の古典的ないたずらをやめて、自分をキャラ化したゲーム作りに着手した。だが進捗は芳しくない。本を介して移動する特殊な能力を持った奴でも、IT技術には馴染み難いのだ。今のところ融の方が先を行っている。
 私が融のPC利用を遠隔で管理するついでに、奴のアカウントを覗けることに奴は気付いていない。パスワードがまんま名前なのだが、私が奴の名前を知っていることも知らないだろう。昔話の頃から変わらずセキュリティが甘い奴だ。

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