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【Review】Sunday/RAIN RAIN “無い道をつくる 黄金の開拓者 ”

【Review】Sunday/RAIN RAIN “無い道をつくる 黄金の開拓者 ”

フッド長野からタフなサウンドを全国に響かせてきたKINGPINZ、水脈から連鎖し生まれた麒麟示&ARTMCの2MCユニット【RAIN RAIN】のNew Single「Sunday」が3月7日にリリースされた。篠突く雨のように鋭く濃密な1st album『THE RAIN RAIN』から2年半を経て、遂に放たれる待望の楽曲をプロデュースしたのは国内外で活躍する手練DJ SCRATCH NICE。

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【Review】HEY M!KEE THE ALBUM 2/M!KEE - 地で行くあの日の“たられば”

【Review】HEY M!KEE THE ALBUM 2/M!KEE - 地で行くあの日の“たられば”

音楽配信サービスが普及する以前の2010年代初頭。USのHIP HOPシーンを牽引したフリーミックステープ・ムーブメントの勢いは日本へも波及し、AKLOやSALUなど多くのラッパーが頭角を現した。当時mikE maTida(マイクマチダ)名義で活動していた大分県出身のラッパーのM!KEEもその最前線で活躍した一人だ。

その後もAmebreakやSEEDA&DJ ISSOのCONCRETE GRE

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【Review】BEACON/KEMUI  -  上げろ、復活の狼煙

【Review】BEACON/KEMUI - 上げろ、復活の狼煙

生息地はアンダーグラウンド。だがいつだってサグでもギャングでもない、市井の目線から無二の言葉を紡いできたMC・KEMUIが遂に現行HIP HOPシーンに帰還する。1996年より朧車(OBORO)としてキャリアをスタートし、漢やRUMIといったハードコアなMCsの中で鎬を削りながら牙を磨き続けてきたKEMUI。その武器はワンワードに何層もの意味を含ませる筆力と、そのヘヴィな世界観を軽快に聴かせてくれ

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【Review】MAD MIKRIS Soundtrack/MIKRIS "MADSKILLを持つのは誰だ!?"

【Review】MAD MIKRIS Soundtrack/MIKRIS "MADSKILLを持つのは誰だ!?"

厭世主義が蔓延る狂った世の中で正気を保つためには、『時計じかけのオレンジ』よろしく逆説的に自身が狂わなければいけないのかと思うことがある。そんな時、耳元から唯一無二のMADな世界へ誘い、行き場のない鬱積を晴らしてくれるのが完全無欠の”MADSKILL”を持つ千葉のMC・MIKRISだ。

90年代前半にヒップホップと出会い、15歳からリリックを拵え続けたMIKRISが2003年にデビューEP「Wh

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【Review】Golden Ratio/Kowree × chop the onion "らしさと意外性 黄金比"

【Review】Golden Ratio/Kowree × chop the onion "らしさと意外性 黄金比"

 時は未曾有の緊急事態、コロナ禍と同時期に製作が始まった、島根を背負うMC・Kowreeのアルバムが奇しくもその終焉と共にリリースされた。タイトルは「Golden Ratio」。即ち黄金比、人間が最も美しいと感じる比率のこと。そのシンボルはジャケットの中心に配置され、中にはこの作品を構成する物々や記憶、盟友の姿が刻まれている。その全ては黄金比なるバランスで作られたという強い自信を伺わせるビジュアル

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ZIPCLOCK "ONE HALF AMAZING" - D.D.S THE SUKE 〈Review〉

ZIPCLOCK "ONE HALF AMAZING" - D.D.S THE SUKE 〈Review〉

これは逆境の中でも表現することを諦めず、挑み続けた或るラッパーの記録である。

未曾有のパンデミックで全人類にとって苦難の年となった2020年。それまでライブ活動やスタジオ製作を生業としてきた多くのアーティストは表現の場を失い、かつてない岐路に立たされた。
そんな適者生存の時代に産声をあげたプロジェクト、それがラッパーD.D.Sが考案した【ZIP CLOCK】だ。

D.D.Sが様々なゲストを招き

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2020年 My Favorite 国産Hip Hop Songs 15選

2020年 My Favorite 国産Hip Hop Songs 15選

久々のnote更新です。
毎年恒例、特に好きだった国産Hip Hop音源15曲について書いていきます。

・ハイボール - RICCHO 
Prod by 符和 沖縄のHip Hopを牽引する2MC、RITTOとCHOUJIによるラップデュオRICCHO。島根松江のDJである符和とタッグを組みリリースされた7inchシングルがこの曲''ハイボール''。唄われるのは友情といつかの再会を願う乾杯。

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映画『WAVES/ウェイブス』プレイリスト解説(ネタバレ)  前編

映画『WAVES/ウェイブス』プレイリスト解説(ネタバレ)  前編

『WAVES/ウェイブス』 2020年7月10日公開
監督:トレイ・エドワード・シュルツ
キャスト:ケルヴィン・ハリソン・ジュニア
     テイラー・ラッセル

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

悲劇を軸に対称的に描かれる兄妹の人生、それは泡沫のように淡く儚い。泡沫は寄せては返す波にのまれ、いとも容易く壊れてしまう。
テーマとなるのは人と人の繋がり、その破滅と再生を描く、ある種ありふ

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2020/THA BLUE HERB - 激動の今を切り取る言葉と音

2020/THA BLUE HERB - 激動の今を切り取る言葉と音

野音でライブする彼らを見た時、この人たちの最盛期は今だと思った。
5th album『THA BLUE HERB』を聴きそのライブを見た時、今こそがこの人たちの最盛期だと思った。
先日の札幌での配信ライブ『CAN YOU SEE THE FUTURE?』を見て、本EPを聴いて、THA BLUE HERBの全盛期は今、そしてこらからなのだと思った。

彼らの視点から見た動乱の''現在''を切り取るこ

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Sweeter/Leon Bridges 和訳 - グラミー受賞歌手が故George Floydに捧げた歌

Sweeter/Leon Bridges 和訳 - グラミー受賞歌手が故George Floydに捧げた歌

2019年にグラミー賞を受賞し、今や名実共に現代ソウルを代表するシンガーの一人であるLeon Bridges(レオン・ブリッジズ)がTerrace Martin(テラス・マーティン)を客演に迎え、新曲「Sweeter」をリリースした。

これは''黒人男性が息を引き取り、魂が身体から離れていくのを感じる''という視点から書かれた曲で、本来次作のアルバムの為に作られていた曲だがGeorge Floy

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今週の絶対聴いて欲しいお勧めソングス -6/23

今週の絶対聴いて欲しいお勧めソングス -6/23

これから(出来る限り)毎週、その週に聴いて最高だなって思った曲を 5〜10曲ほど紹介していきます。
自分の聴く音楽はかなり偏ってるけど、他の音楽サイトでは中々知れないような色んなジャンルの世界中のアーティストをたくさんシェア出来ればと思いまして。

ストリーミングのリンク、あればMVのリンク、そして軽い紹介コメントという流れで、主に新譜とたまーに滅茶苦茶紹介したいものがあれば旧譜もピックアップ。

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メンフィス - アメリカ音楽 生誕の地

メンフィス - アメリカ音楽 生誕の地

音楽の歴史を語る上で、その存在を欠かす事が出来ない街がある。
それがメンフィス、テネシー州最西部に位置する同州の最大都市である。

この街の音楽史を紐解こうとすると果てしないボリュームの記事になりそうなのでここでは控えるが、ブルース・ソウル・ロックンロール発祥の地と言えばその凄さが分かるだろう。
今聴いている音楽の礎がこの地で築かれたと言っても過言ではないのだ。
"キング・オブ・ロックンロール"

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i'll / BUPPON - 名盤紹介

i'll / BUPPON - 名盤紹介

その言葉を聴くだけで映像が瞼に浮かぶ、そんなラッパーが好きだ。
とりわけこのBUPPONというラッパーは、情景を切り取って言葉に落とし込むのが上手い。その点においては日本一だと個人的には思う。
パーソナルな抒情詩は決して多勢に向けた言葉ではないはずだが、リアリズムかつドラマチックで詩情豊かな描写の巧さは多くの人の胸に突き刺さる。自分がその一人だ。
勿論その経験に裏打ちされたラップスキルも確かなもの

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2019年 好きだった国産HIP HOP 15曲

2019年 好きだった国産HIP HOP 15曲

毎年言っている気もするが、今年の日本語ラップは豊作だったと思う。
かつてのヒーロー達の再興と、大好きな中堅のリリース、そしてイカした若手の台頭、その全てが集約された年で追いかけていて本当に楽しかった。
色々と聴いた中で個人的に特に好きだったものを15曲選んだので以下に紹介していこうと思う。
自信を持ってお勧めできる曲達なので、是非購入なりサブスクなりで聴いてみて欲しい。
そして俺の好きなラッパー達

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