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[前編]地元の布でつくる、心地よい服-香川県/ツムギ-

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この「使い手による ブランド紹介」では、日本諸国テキスタイル物産店の広報紙「民ノ布」に登場した「ツムギ」のデザイナー平川めぐみさんへのインタビューを前編・後編にわけてお届けします。
高松で江戸時代から織られ続けている伝統織物「保多織(ぼたおり)」をいまの暮らしになじむデザインで身にまとえるようにと、生まれたブランドが平川さんの手がけるツムギです。
保多織のもつ生地の心地よさをいかした服たちはどのように生まれているのでしょうか?前編では、平川さんが保多織に出会ったきっかけやブランド立ち上げのエピソードをうかがいました。

地元・香川の保多織と出会う

民さん(以下/民)
このインタビューでは
「ツムギ」のデザイナー 平川さんに
お話を伺っていきます。

平川めぐみさん(以下/平川)
どうぞよろしくお願いします。
わたしは香川県で生まれ育ち 
いまも香川県高松市を拠点に
服をデザインしています。

「ツムギ」は2017年に立ち上げて
今年で4年目。
保多織の生地でつくる服を
デザインして製造・販売しています。

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「つくりのいいもの、愛のあるものを伝えたい。」がモットーの「ツムギ」の服。



香川出身ということは
保多織のことは昔から
ご存知だったんでしょうか?

平川
はい。存在は知っていましたし、
高松の岩部保多織本舗さんへ
生地を見に行ったりしていました。

服に関する仕事がしたくて
かつては東京で服のデザイナーとして
企業に属していたんですが
そのときは心が折れてしまって。

それで服の仕事は一旦あきらめて
香川に戻り、事務職などをしてました。
でも、やっぱり仕事をしながらも
「なんか違う」と葛藤していて…。

そんなとき、催事出店されていた
岩部保多織本舗さんと
偶然出会って岩部社長と
お話することができたんです。

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「岩部保多織本舗」四代目の岩部卓雄さん(右)と、平川さん(左)。



びっくりする偶然ですね。
平川さんはお客さんとして
その催事に行かれてたんですか?

平川
いえ、同じイベントに
わたしは服とは関係ない出店で
スタッフとして行っていました。
ほんと、偶然で。それで、
「以前から保多織のことが
気になっていたんです」と
岩部社長にお話ししたところ
「見学に来たらいい」と
おっしゃっていただけて。

そのとき実店舗にお邪魔したのが
きっかけとなって、その後
岩部保多織本舗のスタッフとして
働くことになったんですよ。


すごい!

平川
4年ほど、別の仕事もしながら
岩部保多織本舗で働かせていただいて
伝統的な織物がつくられていく
現場を間近で見せていただきました。

老舗メーカーゆえの企画の難しさ



岩部保多織本舗で平川さんは
どんなお仕事をされていたんですか?

平川
主に商品企画の仕事を
させていただいていました。

岩部保多織本舗が大切にしてきた
保多織のあり方をベースに
企画していくお仕事は
刺激的な面と難しい面がありました。
伝統工芸の業界では
よくある話だとは思いますけど。


守るべき伝統と、革新的なものと
老舗の企業では特に
バランスをうまくとるのが難しい
というエピソードを目にする気がします。

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「江戸時代から伝わる保多織を、今の暮らしになじませ、朝な夕なに身にまとってうれしいものを」という想いをもって「ツムギ」の服はつくられている。


平川
企画の仕事をしながら
「保多織のよいところをいかす方法は
もっともっと、いろいろあるはず」
という
想いはどんどんつのっていきました。

実際、仕事をさせていただきながら
いろいろな保多織にふれていると
江戸時代から続く機能的な生地の
本当のよさというものが
よくわかりましたし、保多織が
ますます好きになっていったんですよね。

ただ、いまでこそ保多織を使った服は
当たり前に存在していますけど
わたしが企画で入っていた当時は
わたしと世代の近い方に向けたデザインの
保多織の服がないのは知っていました。

それで、岩部社長に了承を得てから
保多織100%の服を個人的に
作るようになったのが4年前。
「ツムギ」ブランドの始まりです。


「地元の布」でできた服



「ツムギ」ブランドができた当初は
どんなアイテムをつくっていましたか?

平川
レディースの服や小物がメインでしたね。
エプロンや生活雑貨も作ってました。
それで、地元で開催されていた
小さなマルシェに出店して
最初のコレクションを販売したところ
「保多織の服がずっとほしくて、
こんなブランドが登場するのを待ってた!」
とおっしゃってくださる方もいたりして
とてもうれしかったですね。

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「ツムギ」の最初のコレクション、2017年春夏コレクションより。



それはよかったですね!
地元の方が喜んでくださると
特に励みになりますもんね。

平川
そうですね。やっぱり
生地のクオリティがどれだけよくても
どうやって使ったらいいの?となったら
生地の“その先”へは
なかなか展開していかないですよね。

服として仕立てたときにこそ伝わる
保多織のよさを「ツムギ」では
大切にしていますし、それをお客様に
実際に喜んでいただけたことで
手応えを感じることができました。

お客様の「地元愛」とでも言うのか、
地元の布でできた服への
愛情もあるのかもしれませんね。


「ツムギ」のコレクションの反響を
岩部社長にお伝えしたときは
いかがでしたか?

平川
お客様からのフィードバックを
岩部社長へお伝えするときは
やっぱり緊張しましたね。
それこそ岩部社長は保多織への愛を
人一倍、強くお持ちですから。

「ツムギ」の服を通して得たものは
保多織って気持ちいい生地だよね、
というお客様の声ですので
その「生地のよさ」が伝わったことは
わたし自身も純粋にうれしかった
ですし
それを岩部社長にお伝えできたことは
喜んでいただけたんじゃないかな、と。


使い手によるブランド紹介〈前編〉


江戸時代から続く老舗の「岩部保多織本舗」で
ひょんなことから働くことになった平川さん。
そこから、保多織のよさに惚れ込み、
ご自身でブランドを立ち上げるまでの
エピソードを聞かせていただきました。

保多織の特徴が実感できる服の提供を通して
「気持ちイイ布」のファンを増やす
一助にもなっている「ツムギ」の服。
そのものづくりのモチベーションの一つに
平川さんご自身の地元・高松でうまれた生地に
関われることのうれしさがあるのでは、と
お話を伺いながら感じました。

〈後編〉では、岩部保多織本舗とともに
新たに取り組み始めたことや
保多織のよさを伝え続けていくために
いま考えていることなどを伺っていきます。

後編につづきます)

取材日:2021年5月28日
取材・執筆:杉谷紗香(piknik/民ノ布編集室)
撮影:岩崎恵子(民ノ布編集室)

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