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異次元レンタル店

 カラン、コロン。入店を告げるジングル。
 入り口に目を向けると、そこには背丈1mにも満たない客人。
 ゴブリンやノームの類?ともあれ、第一声は決まってる。

「いらっしゃいませ。ようこそ、異次元レンタル店へ」

「いじげ、え――?」

 戸惑った様子の客人を他所に、珈琲を入れる私。
 さて、商談のはじまりはじまり。

◇●◇

 あるところに、次元の狭間スポットがありました。
 多くの世界と繋がっていたそこは、色んな人が出入りします。
 鎧を着た騎士様、地底人、猫、ぬいぐるみ姿の紳士さん。
 彼らは自分の世界には秘密で、
 互いの便利な道具を交換しました。

 さてさて、ある日誰かが言いました。
 ここの利用者が増えると、いつか大事な道具が散逸してしまうのでは?
 皆が不安に包まれる中、誰かが言います。
 ならば私が管理して、ここに貸し借りできる場所を作りますと。

 というわけで、ここに異次元レンタル店が誕生したのでした。

◇●◇

「貴方が迷い込んだのはそういう場所です。お解りいただけましたか?」

「はぁ……」

 呑みこめていない様子。まあ、大抵の人は多次元世界を理解できない。

「前置きはここまで。貴方の悩みを聞かせて」

 我に返った様子で客人が語り始める。

「近頃私の村で、他所からやってきた四人の純人が悪さをするんです。
壺を割ったり、泥棒を働いたり、暴行されたことも」

 複数種族が共存する世界ではよくある話だ。
 この場合、取り得る選択肢は幾つかある。

 暴力案、破壊剣ザイラ。
 憎い相手を浮かべて振ると、メテオが降って種族ごと根絶やしにする。

 平和案。転送くんMk-II。
 空間内ならどこでもワープできる。箱、人、それこそ大陸サイズまで。

 ここは異次元レンタル店。
 悩みに合ったアイテムをレンタルできる素敵な場所。

 ――ただし、貸しだす道具は私が決める。
 役に立つかどうかは、すべて私の匙加減。
 さて、どんな道具をお貸ししようかな?

【続く】


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