butterfly_s あとがき

 カクヨムで公開している『butterfly_s』のあとがきです。
 ネタバレなしで書いていきます。

 一九六三年の架空の日本を舞台に、女子高生スパイが暴れまわる本作ですが、最初の構想は全然関係のないものでした。

 現代日本のマンモス学園を舞台に、たまたまそこに入学していた女子高生殺し屋たちがお互いに殺し合うという、まあ連作短編集みたいな感じを想定していました。元ネタは完全に高橋慶太郎『Ordinary±』ですね。俺は『Ordinary±』が大好きで、高校の修学旅行のときはみんなが部屋でスマブラをやっているのを尻目に一人孤独にこれを読んでいました。

 しかし、なんか知らんが設定に興が乗らず放置。しばらくしてから、冷戦期の東西に分断されたドイツっぽい架空国家を舞台にすることを思いつきました。両国融和のために東西の国境上に建てられた女子校を舞台に、それぞれの国家の女子高生スパイたちが暗躍するという話です。しかし、これもよくわかんなくなって放置。国境のど真ん中に建てられる女子校というリアリティがさっぱりわからず、なおかつ架空国家考えるのめんどくさすぎ、という激怠惰な理由でした。

 それからまあ色々調べてみたら、第二次世界大戦下のアメリカが日本占領のシミュレーションとして、日本を四つに分断してそれぞれを米英中ソで管理するという、めちゃくちゃな案を出していたことがわかりました。もちろんこれは早々に却下されたんですが、馬鹿らしいとかじゃなくて、単純にたいしてなにもしてないソ連に日本占領の利権を取られるの気に食わない、みたいなしょうもない理由なんですね。マジで核開発が間に合わなかったら、ありえたかもしれない未来(過去か?)なわけです。
 つうわけで、これをそのまま使うことにしました。日本分断計画が実行されたif日本、それが本作『butterfly_s』の舞台です。なので、日本に原爆は落ちていません。開発が間に合わなかったので。
 つうかまた戦争の話かよ、って感じはしますね。俺は冷戦期とか90年代とか失われた時代が好きなので、すぐに選んでしまいます。

 初めて女の子を主人公にして、しかも三人分くらい書いて、女の子の思考をトレースするのって難しいんだなあと思いました(夏休みの小学生の日記)。そもそも一人は思考が完全に男だったし。やはり自分の性質とはまったく違う人間を主人公に据えるというのは、かなり難しいんですね。特に俺は完全に思考が最悪の昭和の男なので。誰か書き方を教えてほしいです。そういえば小島秀夫のラジオで、伊藤計劃は女心がわかっている!と誰かが言ってましたが、あれがリアルなんでしょうか。劇場版ハーモニーに、動く挿絵のついた詩集みたいだなという印象を受けた俺にはわかんねえよ。
 なんの話だっけ。
 あと、細かい感情の話をやってみようとしたところはあります。その点に関しては、二章の時雨明編はうまくいったのではないかと思います。こっち路線で行くべきなのかとも思いましたが、これで長編書ける?無理じゃない?

 情景描写も細かくやろうと決めていました。あくまで、今までの自作に比べればですが。これを書くために読んだル・カレの影響ですね。しかし、あれを参考にすると、完全にweb小説どころかライトノベル向きではなくなるのでどうしようかなと思いました。資料不足だし。結論として、とりあえず書いてみっかとなって、書いてみたのが本作です。バカっぽいですね。

 正直、書き終わって、本作でなにが言いたかったのか自分でもよくわかりません。罪の話をしたかったのか、決断の話をしたかったのか、ただなにも考えていなかったのか。

 だけど、時代の顎に逆らった少女たちを最後まで描けたことに関しては、まあ悔いはありません。みんなよく頑張ったな。

 そして、もし本作を最後まで読んだ方がいらっしゃったら、お前もよく頑張ったな。こんなクソなげえ、ネットでは読みづらい小説を読んで、こんなところにあるあとがきまで読んで。きっと受験も就職活動も友達づきあいも恋愛も出世レースも競馬も今溜めてる家賃もきっとうまくいくぞ。

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