現在あるオタク・10 最前列のさぶさえてぃー三連星

 休憩が終わり、いよいよキャストが舞台に登場した。
 当日誰が来るかはメイン以外は明らかにされていないうえ、泊進ノ介@たけりょうこと竹内涼真氏は映画、テレビと超多忙。だがライトを浴びてつかつかとお出ましになったキャストを見て、客席は雄叫びと絶叫のるつぼと化した。
 なんとチェイス・狩野役の上遠野大洸君とブレン役の松島庄太くん以外のほぼ全キャストが揃って、満面の笑みと緊張したまなざしで手を振ってくれているのだ。
 九州の友人は感極まって泣き出してしまい、私と旦那が両側からよしよしとなだめる始末である。微笑ましい。観てますかー、キャストの皆様。感動して泣くほどのファンがいっぱい居ますのよー。
 ところがそんな心配をよそに、センターにハート様@蕨野友也氏と並んで立った詩島剛役の稲葉友君の目が私たちをえええ?とばかり目をむいて二度見していた。そして整列してもちらちらとこちらを見ていた。

 解説すると、私と友人、旦那まで3人そろって彼の推しブランド・サブサエティーで全身決めていたのだ。
 友人とは連絡とり合ったわけではないのだが、自然とお揃いになったし、旦那に至ってはショップのキャップまで被っている。
 つまり観客の最前列どセンターで、全身応援うちわに扮して拍手しているようなものなのだ。
 恐るべし50代。あ、友人はまだまだ40代だったね。

 一通りの挨拶の中でも、霧子ねーちゃん@だーりおこと内田理央ちゃんは素晴らしくど天然で愛されキャラだというのがわかるし、蕨野さんは大人の色気がダダ漏れ決壊状態だし、推しの稲葉くんとでっかいサモエドのような竹内涼真君はにこにこしている。
 馬場ふみかちゃんは、今すぐその美ボディを石膏で型とって美術館に置くべきレベルだし、狂女・西堀令子を演じたはねゆりさんは圧倒的な透明感でお姫さまっぽいのだが、すっぱりとショートにしており、またそれがはかなげで美しい。
 美しい人類がここにいる。今すぐこのステージ上をシェルターで覆ってあらゆる災厄から彼らを守るべきである。
 ありがとう△、ありがとう仮面ライダードライブ、推しが今日も幸せならば、世界と私は生きていける。そんな気分の品川であった。

 舞台挨拶が跳ね、みな幸せな気分を胸に帰るべく、ロビーに向かってドアを出ると、壁際に鋭い目をした屈強な男性が佇んでいた。
 私はじーっと見つめてしまった。男性もこちらに気付いたようで、誰か思い出してる風であった。
 私は思い出した。仮面ライダーマッハの脚本・長谷川圭一さんである。
 神奈川のミニシアターでの某作品上映&サイン会で、マッハグッズをごっそり持って行き
「マッハ好きなんですね、うわあ、嬉しいなあ」
 と笑顔を向けられ、サインと固い握手を交わしていただいたのだ。
 だがここは一般のファンも大勢いるところ。多分キャストへの楽屋訪問のため、向こうの支度が整うのを待っていらっしゃるのだろう。
 私が話しかけて、そのタイミングを失することがあってはならない。
 私は振りむきながら
「めっちゃめーーーっちゃよかったですよ。長谷川先生、ご自分の書きたい路線をこれからも突っ走ってください」
 と念を送った。

 誰もが泣いた、そしてミツルマツオカのボーカルが最高だったというVシネのラストシーンは、ディスクが届いてから存分に見た。
 もう貪るように、食い入るように見た。
 もう、息子に彼女が出来た気分である。
 応援するしかねえ、このカップルに幸あれ!
『eternity』の歌声を何度もリピートしながら、旦那と私、そして友人は骨の髄まで愛する作品に浸る喜びを全身で感じるのであった。

 好きなものを制限するのは悲しい、寂しい事である。
 オタクは愛だ。
 好きな対象を讃え、けして距離感を見誤らず、ファンとして、社会人としての節度を保ち、推しへの愛と課金を注ぎ続ける。
 それは何にも替えがたい喜びなのである。

 さあ、沼においで。特撮沼はあったかいよ。特撮俳優界は温泉だよ。
 恐くなんてないさ。考えるな、感じるんだ。

 貴方も貴女も、幸せなオタクライフを。

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