ナブパクを活かそう!『J-AXEL試験』

長いこと出荷調整がかかり自由に使えなかったナブパクリタキセル(通称:ナブパク)ですが、先日2022年6月に出荷調整が解除されたニュースが発表されました。昨年夏ごろからナブパクが自由に使えなくなってから、進行非小細胞肺癌の治療戦略に頭を悩ませた先生方は多いのではないかと思います。個人的にもナブパクを頻用していたため、病院の在庫や入手できる薬剤の数をよく相談し、ナブパクを活用している他の診療科の先生方と1例1例すり合わせながら効率よく薬剤を処方していたことが思い出されます。 

昨年のJ Thorac Oncol誌に既治療の進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する2次治療以降でナブパクとドセタキセル単剤治療を比較した第3相試験『J-AXEL試験』が報告(J Thorac Oncol 2021;16:1523)されましたので、改めて紹介したいと思います[1]。 

一言で言いますと、「2次治療以降の進行NSCLCに対するナブパクはドセタキセルと同等」ということです。

実臨床の現場では以前から活用されているのでは、と推測されるこのナブパク単剤治療ですが、2022年7月の現時点において、まだ現行の『肺癌診療ガイドライン』には取り上げられておりません。 

従来、進行NSCLCに対して1次治療のプラチナ併用化学療法や免疫治療+化学療法(通称ケモコンボ)を使用した後は、ドセタキセル単剤療法が長いこと肺癌診療で一般的に行われてきました。今回、このドセタキセル単剤とナブパク単剤を比較した『J-AXEL試験』では、殺細胞性抗癌剤の治療歴のある503例の進行NSCLC症例が登録されました。3週毎のドセタキセル60mg/m2(day1)群と、ナブパク100mg/m2群(day1,8,15)に分けられて検証されました。

主要評価項目は全生存期間OSで、DTX群 13.6カ月、nab-PTX群 16.2カ月(HR 0.85, 95%CI:0.68-1.07)と非劣性の結果が報告されました。また副次評価項目として設定された無増悪生存期間PFSは3.4カ月 vs 4.2カ月(HR 0.76, 95%CI:0.63-0.92)と有意にナブパク群が良好な結果となりました。奏効率ORRはall comerで15.4% vs 29.9%でナブパクの切れ味が光った結果でしたが、扁平上皮癌(Sq)ではDTX群の10.4%と比較してnab-PTX群の30.4%とSqにおいてナブパクの効果が見込める結果が報告されました。 

安全性に関しては、発熱性好中球減少がDTX群で22.1%と4-5人に1人程度と高率でしたが、nab-PTX群では2.0%と有意に減少していました。逆にナブパクの弱点ともいえる末梢神経障害に関しては全グレードで20.1% vs 55.5%、グレード3以上に限定しても0.8% vs 9.8%とやはり頻度が高いことが分かりました。

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