「いただきます」と「ごちそうさま」は魔法の言葉 / BUSINESS INSIDER 11月26日 (筆者 吉田和充)

 海外では当たり前の常識として社会に浸透している「菜食主義」というものをご存知だろうか。海外といっても欧米などの西側諸国に多いライフスタイルなのだが、簡単に言うと肉や魚介類を食べない食生活をする人々のことだ。

 菜食主義にも色々なものがあり、一番厳格な「ヴィーガン」という菜食主義は、一切の動物性たんぱくを摂取しない。ミルクやハチミツもだめで、革製品や動物実験が行われている化粧品なども使用しない。そこまで厳格でなくても、肉と魚介類は一切食べないという菜食主義者には、欧米に行けば簡単に会うことができるだろう。海外に友人がいる人であれば、菜食主義の友人がいるかもしれない。日本では馴染みの薄い菜食主義だが、古くはお寺で出される精進料理がヴィーガンフードに当たると思われる。

 先日のアマゾンの森林火災でも問題提起されたように、現在畜産と環境の関係は地球上でも最重要課題ともいえる問題だ。古くから環境問題に関心の高い人であれば、菜食主義を実践している人は多いだろう。菜食主義や環境というと難しく感じるかもしれないが、基本はシンプルなことだ。

「人間が食べる肉のために育てられる家畜による被害が、地球環境に及ぼす影響が大きいために肉を食べない」

 これが一番シンプルな環境と菜食主義の関係性ではないかと思う。ほかにも例をあげるとするならば

「家畜を育てる餌の量があれば、飢餓に苦しむ人々を救うことができる」

「海洋汚染プラスチックの原因の多くが、漁業に使う網によるものだから」

 などというように、基本的な考えには生命や環境に対する尊厳がある。もっとシンプルなものでいえば

「動物が大好きでかわいいから」

 びっくりするかもしれないが、ボクシングの元世界ヘビー級チャンピオンであるマイク・タイソンがヴィーガンになった理由として「動物が好きで可愛いから」という記事を読んだことがあるほど菜食主義の理由は様々だが、一貫してそこには「欲望よりも生命」という確固たる信念がある。今日の夕飯の唐揚げを一つ少なくするといったことや、1ヶ月に1回菜食の日を設けるといった簡単なことから始めてみてもいいだろう。

「ちょっと待って、日本にはいただきます・ごちそうさまと言って、残さず食べることが生命に対する礼儀だという文化があるんだ」

 なるほど、筆者だって子供のころからそうやって教えられてきた。でも極端な話をすると、文化が生命よりも大切ならば、戦争が文化となっているアメリカみたいな国もあるのだが、戦争も「文化だから仕方がない」と言えるのだろうか?

「いただきます・ごちそうさまと言い、感謝して残さず食べるからといって、生き物を殺していいのだろうか?」という疑問を自分に投げかけてみて欲しい。

 異文化の国で、もし自分のペットが「いただきます・ごちそうさまと言われ、感謝して残さず食べられても平気だろうか?
 今はもう存在しないかもしれないが、食人文化が残る部族に、自分の愛する人を「いただきます・ごちそうさま」と言われ感謝して残さず食べられても平気だろうか?

 何も難しく考えることはないし、厳格な菜食主義になるのも難しいだろう。でもほんの少しでもいいから、環境問題に興味があるなら菜食主義に関して考えてみてはどうだろう?

「動物がかわいくて好きだから」

そんな簡単でシンプルな心と、自分の「おいしいから」という欲望を天秤にかけてみて欲しい。おいしければ大丈夫なら、肉や魚を食べなくても充分おいしいものはある。それがヴィーガンフードやベジタリアンフードにたくさんあるということを知って欲しい。

 まずは少しだけでいいから減らすこと。世界中の肉や魚を食べている人間がそれをやれば、いったいどれだけ効果があるだろう。そんな想像も膨らまして、地球上で生きている生命で繋がり合い生きて行けば、今よりは少しずつ良くなっていく未来が手に入るのではないだろうか。

記事
アムステルダムでは「絶対菜食ラーメン」が超人気。環境先進都市での「ヴィーガン」の存在感

30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!