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鹿島の「勝負強さ」に屈しないタフさを示した川崎の選手たちと、「連覇」を口にしていた阿部浩之が見せた覚悟。(リーグ第29節・鹿島アントラーズ戦:0-0)

 カシマスタジアムでの鹿島アントラーズ戦は0-0。

スコアレスドローには終わったものの、最後まで緊張感のあるゲームでした。

 去年、カシマスタジアムで勝ったリーグ戦(第12節:3-0)のミックスゾーンでのこと。あのときの中村憲剛は「必然的に燃えるよ。ここでは戦わないと勝てないから」と話していました。

 今回のカシマスタジアムでの死闘は、過去に比べても局面での激しい肉弾戦を繰り広げながら、お互いの一瞬の隙を狙い続ける展開になったと思います。いつものように「技術」で上回ることだけではなく、その球際で負けないことが勝敗を左右する。それが鹿島との試合だからです。

「今日に関して言えば、全員が戦いながら、最後まで受けに回ることなく、やれていた。そこで押し切れれば、こっちのチャンス。拾われれば、むこうにチャンスがいく。綺麗事じゃないというか。そういうタフな戦いで勝点1を持って帰れた」

 そして中村憲剛は自分の引き出しにある過去の激闘の記憶と共に、チームの成長を口にします。

「今までのフロンターレだったら、最後のセットプレーが続いたときに隙を見せてやられて、1-0で勝ち点3を持って行かれる。そういう歴史があった。そこのタフさはチームにあった。最後、声を掛け合っていたし、球際もそう。相手に勝ち点3を与えないで、こっちが勝ち点1を積み上げることができた」

 この試合での勝ち点1の重みをどう受け止めるか。それは、連勝で猛追を仕掛けていた3位・鹿島との勝ち点差を詰めさせなかったところにあったと言っていいでしょう。

 試合後の大島僚太は「相手に勝ち点3を取られることが一番嫌だった」と言います。

 実際、もし鹿島に負けていたら、残り5試合で勝ち点差は8になっていました。しかしこの引き分けにより、勝ち点差11のまま残り5試合。

鹿島からすれば、リーグの優勝争いからは、大きく後退したと言って良いはずで、フロンターレからすれば、2位・サンフレッチェ広島との一騎打ちに持ち込むことができました。鹿島に「何か」を起こさせないための、価値ある引き分けだったと言えます。

 では、今回のレビューです。たっぷりと書きました。ラインナップはこちらです。

1.「守備をやりつつ、カウンターも狙っていましたが、思うようにボールを運べなかった」(登里享平)。灼熱の気候と、走らなかったボールと、主導権を取れなかった左サイド攻撃。

2.「あれだけ中を閉めてくる感じだったので、外は空いている。いつ外に行くか。そこの判断ですね。ただ完全に押し込んで綺麗に崩すシーンがあまりなかった」(大島僚太)。レオ・シルバと三竿健斗によって完全封鎖された中央エリアと、狙い通りだった「大外からのエウソン」による右の崩し。

3.「決めていれば楽になったし、チームも楽になったので申し訳ない」(小林悠)、「入っているに越したことはないですが、それ以外のところで、僕たち自身で崩して点を取りたいという気持ちもあった。そこで落ち込むというよりも、もう一回頑張ろうという気持ちになった」(大島僚太)。痛恨のPK。後半に向けて、選手たちはどうやって気持ちの切り替えをしたのか。

4.「後半に苦しい時間帯もあったが、全員で意思統一して守るときは全員で守ることができていたし、隙があればゴールを狙った」(奈良竜樹)。入念すぎるほど準備していた鹿島対策。猛攻を受け続けていても、破綻しなかった理由とは?

5.「悠さん一人に背後を走ってもらうのはありでしたが、知念がいると、(走る選手が)もうひとりいる」(大島僚太)、「孤立しているのは感じていた。知念がいると、(前線が)二人になるし、近い距離でやれる」(小林悠)。知念慶投入で流れを引き戻るまでの時間帯をどう見るか。家長昭博の不在で苦しんだ、劣勢時の打開策と時間の作り方。

6.「阿部ちゃんのイエローのシーンも、自分を犠牲にしてチームのピンチを救ってくれた」(奈良竜樹)、「最後、阿部ちゃん(阿部浩之)が退場になってしまったが、あそこで止めてくれたことが本当に助かった」(大島僚太)。鹿島の「勝負強さ」に屈しないタフさを示した川崎の選手たちと、「連覇」を口にしていた阿部浩之が見せた覚悟。

以上、6つのポイントで冒頭部分も含めて全部で約11000文字です。大ボリュームです。よろしくどうぞ。

なお、プレビューはこちらです。➡️試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第29節・鹿島アントラーズ戦)

では、スタート!

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