「あそこで飛び出せるのは、この3人になってからの産物」(中村憲剛)。集結からの展開で生まれた同点弾と、推進力を生かした逆転弾。2試合連続でボランチが決定機に顔を出し始めたのは、しかるべき理由がある。(リーグ第21節・清水エスパルス戦:2-1)
IAIスタジアム日本平での清水エルパルス戦は2-1で勝利。
開始早々にミスから失点を喫したものの、逆転勝ちとなりました。
失点しても慌てなかったこと、そして清水が予想通りの守り方をしてきたことで、フロンターレとしても落ち着いて試合を進めることができました。事前の狙い通りに「中と外の使い分け」でブロック崩しを徹底していきましたね。
基本的には、清水が中央を閉めてくるので、そこでパスの出し入れをしながら相手を中に集結させる。外が空いてきたら、登里享平とエウシーニョの両サイドバックが幅を使って、相手の陣形をワイドに広げる。それで陣形が横に広がってきたら、また中に戻す。そうなると、今度は〔4-4〕の2ラインの間で受ける選手に縦パスが入りやすくなります。
クサビを受けた家長昭博や中村憲剛が前を向けば、サイドバックが前に出てくるので、その背中を狙えば、フィニッシュワークのスペースは確保できます。清水守備陣のブロックをノックし続けるように、前半から丁寧にやり続けました。
そして後半に生まれた大島僚太の逆転弾。「3人目の動き」の見本のような崩し方で、イメージの共有ができていて、シンクロした崩しでしたね。
「阿部ちゃんが前を向いた時点で、ユウからリョウタという形は自分にも見えていた・・・・自分は蚊帳の外だったけどね(笑)
試合後の中村憲剛は自虐的にそう笑っていましたが、チームとしての崩しの手応えも口にしています。
「マリノス戦に続いて、自分達で自信を持って崩す。そういう形が増えてきた。あとはそれをもっと増やしていきたいね」
そして大島僚太にとっては、地元・清水での嬉しい初得点となりました。大島と日本平といえば、新人で入った2011年(第17節 vs.清水エスパルス)を思い出します。
彼にとってはプロになって初めての日本平の試合でした。ベンチ入りしており、後半途中に呼ばれ、ユニフォームを着て交代の準備もしていたんですが、スタンバイしている時間帯に、主将の井川祐輔が退場となってしまう事態に・・・ディフェンスの選手が必要になり、交代選手も大島僚太から横山知伸に変更。アクシデントにより、出場が見送られてしまったんですね。
試合は小林悠のヒールシュートで、鬼門だった日本平で劇的な初勝利をおさめたのですが、大島僚太にとっては、さぞかし悔しかったと思います。あれから7年・・・ようやく、ここでの初ゴールとなりましたね。
・・・と、長々と語ってしまいましたが、逆転劇が起きた背景については、レビューで解説しております。
1.「すぐに切り替えて、点を取りに行く。それをみんなでやれた」(谷口彰悟)、「連続して失点しないこと。それは阿部ちゃんも全体に言っていた」(登里享平)。出鼻をくじかれた失点にも、慌てなかった選手達と、ドウグラスの突破力に苦慮した車屋紳太郎。
2.「そこは相手を見てやっていましたね。ミッチェル・デューク選手がどう守備をしているのか。その逆を取るのは常に意識していた」(谷口彰悟)。右サイドエリアでゲームメークし続けたCB・谷口彰悟。その巧みな判断と技術を読み解く。
3.「相手が使われたくないところを使えるか。今日はその一点だった」(中村憲剛)、「エウソンが高い位置を取るので、僕が中に入るし、逆のパターンもあった」(家長昭博)。相手を集結させて、逆サイドに展開して生まれた、狙い通りの同点弾。そして家長昭博が語る、右サイドにおけるエウシーニョとの関係性。
4.「落ち着いて決めることができました」(大島僚太)、「あそこで飛び出せるのは、この3人になってからの産物。モリタ(守田英正)とリョウタ(大島僚太)が交互に出ていくところがあった」(中村憲剛)。逆転弾は、大島僚太の凱旋ゴール。2試合連続でダブルボランチがゴール前の決定機に顔を出し始めたのは、しかるべき理由がある。
5.「あれ以上、失点はしたくない気持ちが強かったので、割り切ってやらしてもらった」(谷口彰悟)、「でも、その分、ボールを走らせています。相手を走らせていければいいので」(家長昭博)。鬼神のようにクロスを弾き返し続けたショウゴと、時計の針を効果的に進めたアキ。守備陣と攻撃陣の中心選手が見せた、リードしてからの割り切り方。
以上、5つのポイントで冒頭部分も含めて、全部で9000文字のボリュームです。いつものように、どこよりも読み応えたっぷり。よろしくどうぞ。
なお、プレビューはこちらです。答え合わせにもどうぞ。
では、レビュースタート!
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