「戦い続ける男達の詩」 (リーグ第15節・ガンバ大阪戦:1-3)
「率直な試合の感想を聞かせてください」
試合後、ミックスゾーンを通っていく橘田健人を呼び止めて、そう声をかけた。
いくつかのポイントがあった試合だったが、そこをピンポイントで聞くのではなく、最初は試合全体のざっくりとした感想を聞いて徐々に深掘りしていこうと思ったからだ。
ただ立ち止まった橘田健人から言葉が返ってこない。
難しいことは何も聞いていないはず。にもかかわらず、5秒・・・10秒と、その場の沈黙は続いた。こちらの質問を無視しているわけでもない。彼の頭の中で、いろんな思考や感情が渦巻いている時間だったように思えた。
なので、こちらも何か言葉を促すのではなく、あえて待つことにした。
じっと考え込んでいるようだった彼の沈黙は、結局、20秒ほど続いた。そして口を開く。
「自分たちの弱い部分が出てしまったと思います」
絞り出すような言葉だった。
「自分たちの弱い部分」とは逆転を許したことも含めた後半の試合運びを指しているのだろう。後半のガンバ大阪は、ビルドアップの中心にいたアンカー・橘田健人を徹底してボールを触らせないようにしてきた。
それに伴い、川崎フロンターレの後半のビルドアップは、橘田健人を経由するルートが遮断され、徐々にそのリズムが狂い始めた。
もともと、鬼木達監督はアンカーが消された場合の備えに右サイドバック・瀬川祐輔を起用していたのだろうと思う。事実、前半の瀬川は、偽サイドバックの役割でボランチをサポートする立ち回りをしていたからだ。だが、この試合の先制点も決めた彼は脳震盪の疑いで前半38分にピッチを去っている。後半のピッチにはいなかったのだ。
チームの攻撃が機能しにくくなり、ピッチでは次の一手を打てないまま、自陣で耐える時間帯が長くなる。結果的に、流れを自分たちに引き戻せないまま、チームはセットプレーで逆転を許している。
効果的な打開策を見出せずに逆転を許し、さらに追加点も奪われての敗戦。苦い表情を浮かべる橘田健人は、自分自身に言い聞かせるように言葉を絞り出している。
「相手が対策をしているのに自分たちは何も変えないと、こうなるのはわかっている。そこをチームとしてピッチの中でやっていかないといけないと思います」
前半と後半で波の激しい試合となった中での逆転負け。問題と原因はなんだったのか。じっくりと検証していきたいと思う。
(※追記)5月22日、麻生グラウンドでのトレーニングが公開されました。その練習後、メンバー外だった山本悠樹に話を聞きました。今年、川崎にやってきた彼にとってガンバ大阪は古巣です。それもパナソニックスタジアム吹田でのガンバ戦は、ずっと楽しみにしていたゲームだったと思ったからです。その試合に出ることが出来なかった。どんな思いで試合を見ていたのか・・・彼らしい言葉で振り返ってくれたので、追記として残しておきます。
■(※追記:5月22日)「行きたかったというのが本音ですけど」(山本悠樹)。ガンバ大阪戦をどう見ていたのか。オフ明けの練習で山本悠樹に聞いた古巣のこと。そして、オフ明けにフルコートサイズの紅白戦を実施した理由。
(※追記その2)5月22日の練習後、竹内弘明強化本部長の囲み取材が行われました。チームの現状に関する話を聞くもので、予告されていたものではなく、急遽設定されたものでした。備忘録として残しておきます。
■(※追記:5月23日)「練習の質の基準や要求の基準。今まで積み上げてきた基準から、新しいスタッフでさらにチームが少し変わっている中での新しい基準を作っています」。竹内弘明GMが語ったチームの現状と、これからに関すること。
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