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攻守両面で威圧感を与え続けた完勝劇。チームとして積み重ねている勝負所での「経験値」と、鬼木監督が植え付けている「勝負強さ」。(リーグ第25節・横浜F・マリノス戦:3-0)

 等々力競技場で行われた横浜F・マリノス戦は3-0で勝利。

 ポイントは、やはり先制点でした。
ここまで5試合連続無失点中だったマリノス守備陣攻略のキーワードに、僕は「意外性」をあげていました。去年の柏レイソルの5試合連続無失点記録を破ったときのように、こういう相手には「意外性」が鍵となるからです。なので今回もエドゥアルド・ネットのミドルシュートじゃないかと予想していましたが、決めたのは、ネットではなくその相棒の大島僚太のほうでした。

「セットプレーでもなんでも良いので1点取りたいですね。90分を通して勝てれば良いし、どんな形でも一点を取ってこっちが失点ゼロだと勝てるので」

 試合前、大島僚太はそんな風に話していました。


「なんでもいい」という気持ちが、あのねじ込み弾につながった・・・かどうかはわかりませんが、今季無得点だった大島の初ゴールがこの試合で生まれるというのは、やっぱり「意外性」でした(・・と、こじつけます・笑)。相手のクリアボールをダイレクトで合わせたシュートで、見事な軌道で吸い込まれていきました。

「うまく合わせることができてよかった。得点のことはまわりからも言われていたが、自分が取らなくても優勝できればいいので、そんなにこだわりすぎず。ただゴールをとったら嬉しいですね」(大島僚太)

 得点自体は、相手のクリアボールを決めたものですから、再現性のあるシチュエーションではないと言えるかもしれません。失点したマリノス側からすると、ミスで起きた「事故」のようなものと言えるかもしれません。

 ただ中村憲剛は、あそこに大島僚太がいることが大事だと言います。なぜなら、それだけ相手を敵陣に押し込んでいるからであり、攻撃に人数をかけているからという結果でもあるからです。

「1点目は綺麗な形ではない。阿部ちゃんのクロスをユウが落として、そのこぼれ球だった。ただ、そこに人数をかけて入っていくと、相手も下がらざるを得ない。あそこでミドルシュートを打てたという状況が大きい」(中村憲剛)

 ボールを持って人数をかけて攻め込んだことで「事故」が起きりそうなシチュエーションを作り出していた、というわけです。そしてこの1点が試合の流れを作りました。阿部浩之も先制点が大きかったと振り返ります。

「1点目が全てかな。リョウタのスーパーゴールで楽になった。あれがなかったらズルズルといっていたかもしれないし、前回と同じ展開になっていたかもしれない。スーパーなゴールかもしれないけど、1点先に取れたのは大きかった」

 試合前は拮抗したゲームが予想されていましたが、終わってみれば、思わぬ大差のついたスコアとなりました。負ければ優勝争いから脱落する可能性もあった大事な試合でしたが、勝因はどこにあったのか。

 ゲームレビューで、そのへんをたっぷりと語っています。今回のラインナップはこちらです。

1.マリノスのカウンター力を半減させるべく、フロンターレが徹底していた「ボールの失い方」とは?

2.まさに「スーパー大島さん」。攻守で抜群の存在感を放ち、ゲームをコントロールしていた背番号10。

3.「追加点も狙いたいけど、一番大事なのは勝つことだとハーフタイムに言いました」(小林悠)。勝負を決める2点目を奪うまでに行っていた、ピッチ上のゲームコントロールを読み解く。

4.絶妙なボール奪取から決定的な3点目をお膳立てした中村憲剛。「だから、3点目も絶対に食えると思っていた。あれはずっと狙っていた」。前半から狙いを定めていたという、扇原貴宏がボールを持つ時の癖とは?

5.「今年はいろんな山場があったが、そこで勝てていることが自信になっている」(小林悠)、「そういう意味でも、こういう試合を毎試合取っていくことが大事になる」(車屋紳太郎)。完勝劇を呼び込んだ、勝負所での経験値の差。鬼木監督がチームに植え付けているのは、まさにこの「勝負強さ」にある。

(※9月11日追記)
6.なぜ小林悠は縦パスを引き出さなかったのか。「マリノス用の戦い方ですね。ボールにはあまり触れないが、チームが勝つための戦い方でした」。攻撃であえて中央を使わなかった理由。

以上、9月11日に追記した6つのポイントで、冒頭部分も含めると全部で約9500文字です。読み応えは十分です。ぜひ読んで神奈川ダービーの勝利を噛み締めてもらえたらと思います。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第25節・横浜F・マリノス戦)

では、スタート!

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