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「土砂降り。君、笑顔。」 (リーグ第10節・アビスパ福岡戦:3-1)

「ノボリーザト ノボリーザト ゲットゴール・・・ノボリ!!」

 サポーターの耳にも慣れ親しんでいる、登里享平のこのチャント。

 原曲は50TAのPerfect Loveだ。
50TAと言われても「誰?」となる人が多いかもしれない。これはお笑いタレント・狩野英孝がアーティストとして活動する時の名前で、バラエティ番組「ロンドンハーツ」から生まれた企画だ。楽曲があまりにもウケたので、CDもリリースされたほど人気だった。

 50TAは2009年に放送された企画。
この年がルーキーイヤーだったノボリが狩野英孝に少し似ていたからとかの理由で「Perfect Love」を原曲にしたチャントが、翌年2010年から採用された。

 歌詞に「ゲットゴール」と得点の期待をこめたフレーズが入っているのは、当時のポジションがFWだったことの名残である。

 局面の対人守備とクレバーさを備えるサイドバックになった今のプレースタイルからは想像できないかもしれないが、入った当初はスピードを生かした突貫小僧的なウィンガー&アタッカーだったのだ。現在のフロンターレで例えるなら、新人の名願斗哉や2年目の永長鷹虎が、数年後にクレバーなサイドバックとして開花しているような姿だと思ってくれるとわかりやすいかもしれない。

 リーグでは2017年5月以来のゴール。この時は14年以来、3年ぶりのゴールだったのだが、「あんまり喜び方がわからなかった」と笑っていたほどだった。

 今回は6年ぶり・・・その倍だ。

「(脇坂)泰斗がいいボールをくれたので、しっかりとミートして枠に入れることだけを意識して蹴りました。なかなか(ゴールが)取れてなかったですし、子供が生まれてからゴールしてなかったので、絶対取りたいなと思ってずっと過ごしてました。取れてよかったです」

  試合後のDAZNフラッシュインタビューでは、2017年10月と19年1月に生まれた子供にゴールを見せられて良かったと話している。最近サポーターになった方もノボリがゴールするところは初めて見たかもしれない。

 そんな6年越しに決めたゴールは、チームを蘇らせるには十分なものだった。

 周りを輝かせるために常に全力を尽くし続けた選手が、土砂降りの試合でスポットライトを浴びる。こういう日があってもいいはずだ。

 実はこの福岡に向けて少し深く話を聞いた選手の1人がノボリだった。

 2009年から在籍し、同期の安藤駿介と並んでクラブ在籍15年目。現役選手では最古参の選手となり、ピッチ外でも重要な役割を果たす存在だ。

チームの雰囲気を作っている選手の1人であり、ゲームに向かう姿勢を示す選手でもある。だからこそ、どういう姿勢で次の試合(福岡戦)に向かっていくのか。チームの現状も含めて、それを聞きたかったのだ。

登里享平のスタンスは明確だった。

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