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「俺か、俺以外か。」 (リーグ第19節・名古屋グランパス戦:0-2)

 豊田スタジアムでの名古屋グランパス戦は0-2で敗戦。

負けなしだった6月の勢いを継続すべく臨んだ一戦でしたが、7月は黒星スタートとなりました。

 スコアが動いた前半41分までの構図を見る限り、お互いが望んでいた試合展開だったようにも見えました。前回の対戦と同様に、「攻めるフロンターレと守る名古屋」という構図で進んでいたからです。

 その構図を制したのは守った名古屋グランパスでした。川崎フロンターレは、オウンゴールの1点に終わった前節の浦和レッズ戦同様、この試合でも相手の堅守を攻略することができませんでした。

 試合後のミックスゾーン。

川崎の選手は、わりと一斉に出てきました。アウェイということで川崎側のメディアが少なかったので、人海戦術が取れません。話を聞かせてもらえた選手は少なめでした。

 コメントを取る選手を厳選せねばいけない中、話を聞かないといけないと感じたのがFW宮代大聖とGK上福元直人です。

前者の宮代大聖には、ゴールを奪うために足りないものを。

後者の上福元直人には、あの失点場面で何が起きていたのかを。

 課題を克服しながら勝っていくためには、チームとして解決すべき領域と、個人として向き合うべき領域があります。それをよくわかっているからでしょう。2人から返ってきたのは、チームの内容以上に、自分の責任に矢印を向けた答えでした。

「自分に厳しい目を向けてやっていきたいし、試合の結果に直結するようなプレーをしている場合ではない」

 上福元直人は反省の言葉をそう口にしています。

誠実に対応してくれる彼の姿勢に感謝しつつも、あのファンブルによる失点場面についてもやはり聞かなくてはいけません。ただデリケートな部分でもあります。どういうタイプの質問を投げかけるかが難しかったのですが、こういう場面では意図や原因を聞くのではなく、シンプルに現象を尋ねてみることにしました。

「失点場面は何が起こったんでしょうか?」

すると彼は逃げることなく、あの局面での自身の判断をこう振り返ってくれました。

※7月4日に後日取材しました。試合後のミックスゾーンで、聞きたかったけど聞きそびれた選手が山田新と佐々木旭です。途中交代で入ったこの若者2人は、チームを「なんとかしたい」という思いをピッチで表現していました。ギラギラしたそのプレーぶりは、観ている側に伝わってくるものがあったと思います。

 オフ明けの練習後にあの時の思いを聞くことができました。あと一歩だった山田新のループシュートや、球際のバトルからドリブルでアクセントをつけた佐々木旭の仕掛けなど、見ている側にも感じるものがあったのではないでしょうか。その背景も含めて追記として書き残しておきたいと思います。

→「あんなに(GKが)出てきているとは思いませんでした」(山田新)、「シンが最前線で頑張っていたんで。後ろから、もっと自分たちもやらないという思いで試合に入りました」(佐々木旭)。チームを「なんとかしたい」ともがき続けた2人の若武者が、内に秘めていた情熱。

※7月6日にさらに追記です。かねてから報道があった小塚和季の水原三星ブルーウィングス(大韓民国)への移籍が発表されました。急なタイミングで決まった移籍だったようで、結果的にあの退場した浦和戦が川崎フロンターレでのラストゲームになるとは思いもよらなかったのではないでしょうか。そんな彼について約3000文字で語っております。

→■水原三星に移籍した小塚和季の思い出。「あの意外性のあるプレーは、試合中のどういう瞬間に浮かぶんですか」と尋ねたときに彼が答えてくれたこと。

■「そういう『間』でプレーしてしまったのは自分の責任です」(上福元直人)。問われるメリットとデメリットの天秤。

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