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スラムダンクの新装再編版を語る〜第9巻:勝ち続ける帝王・牧紳一のメンタリティーを読み解く。そして幻で終わった赤木晴子の臨時マネージャー案。

新装再編版「スラムダンク」を語る。今回は第9巻のレビューです。

タイトルは「湘北VS.海南大付属2」
#116  ゴリ IS BACK から #133責任問題  までの18話収録です。

 海南大付属戦の後半開始から決着、そして花道の坊主頭までです。

まずは表紙の考察から。

 最初に見たときは「ん?」と思いました。
というのも、この9巻の表紙は、新装再編版が発表されたときの広告看板でもお馴染みだった桜木花道のイラストだったからです。

渋谷駅のハチ公前で撮影しました。要は、既視感があったんですね。

ただカバー全体を見ると、後ろには牧紳一がいます。

帯コメントは「神奈川NO.1を超えてやる!!!」

 なので、この花道のセリフの場面である、ダンクしに行って牧に吹き飛ばされたシーンかと思ったのですが、本編を確認すると、花道がパスを受けたとき、牧はすでに花道の前に回り込んでいるんですよね。なので正確にはそのシーンではないのかもしれませんが、あの場面を想像させるイラストと帯コメントにはなっていますね。
 

 では本編を。
海南戦後半といえば、なんといっても試合が進むについて本領を発揮していく神奈川ナンバーワンプレイヤー・牧紳一でしょう。

 湘北のエースガード・宮城リョータを圧倒し、大黒柱・赤木剛憲とのフィジカルコンタクトにも負けない強さで「3点プレー」を見せていく牧。全国の猛者としのぎ合いながら磨いてきた、勝利への貪欲さとメンタリティーが描かれ、牧紳一が帝王と呼ばれる所以が伝わってきます。

 ここで牧紳一というプレイヤーに関して掘り下げると、印象的なのは彼のプレースタイルよりも、メンタリティーの部分なんですね。「常勝」である海南の伝統を背負っているだけあって、勝つために徹するプレーを第一に遂行し続けて、そこに隙がないんですね。

 例えば赤木が怪我で離脱したら、弱点になるインサイド主体の攻め狙い、とまどう後輩(清田信長)には「甘ったれるな」と一喝する。陵南戦では、3ファウルになった大黒柱・魚住純に突っかけるように高砂一馬に指示して、見事にコートから締め出しています。

おそらく牧からすれば「良い試合内容だったかどうか」なんていうのは論ずるには値しないわけで、勝利こそ全て。それは勝たなくては見えない景色や、勝ち続けることでしか得られない経験があることを知っているからなのだと思います。そしてそれが受け継がれているからこそ、王者・海南は16年連続でインターハイに出場し続けている。

 牧紳一というキャラクターには、そういうものが凝縮されているような気がします。

 あと全然関係ないですけど、川崎フロンターレの家長昭博選手は、僕の中で牧紳一のイメージです・笑。風貌が似てるし、相手を弾き飛ばしてしまう、ブルドーザーのようなフィジカルの強さも同じですしね。


 話を戻します。
牧の突破を止めるための対応策として、安西監督は4人がかりで止めにいくことを指示するものの、海南はそれを逆手に取った攻撃を見せてきます。

 そうです。
牧が中を突破していき、それが無理なら引きつけてから、3ポイントシューター・神宗一郎が外から撃ち抜く。「中から牧、外から神」というリズムです。この牧と神のコンビはいかんとも止められず、安西監督もたまらずタイムアウト。

 そして勝負手を放ちます。
それは牧には4人を張り付け、神には花道がマンマークするという対策。当然のことながら、海南の他の3人はフリーになるわけですが、牧一人に対して「それだけの価値がある」と安西監督は言い切ります。

 安西監督の勝負手は、花道が神をブロックしたり、武藤がフリーのシュートを外してくれたりと、なんとか成功します。

 ちなみに花道がマンマークした3ポイントシューター・神宗一郎。
この作品では花道と絡んだ対戦相手は、変なあだ名をつけられたり(海南だと「じい」、「野猿」、「宇宙人」)、あるいは「センドー」のようにカタカナで呼ばれるのが常なのですが、花道も最後まで名前も呼ばず、会話でも絡みませんでした。神はギャグタッチにならない珍しいキャラクターでした。ちなみにいうと、「あれから10日後」でも、神のシーンだけはシリアスタッチでした。


 海南戦終盤は、手に汗握る展開が繰り広げられます。
なかでもリバウンドを取ったゴリが、「オレは間違ってはいなかった」と噛み締める場面は、個人的にも好きなシーンです。

 勝ち続けてきた牧紳一とは対照的に、3年間負け続けてきた赤木剛憲。でも彼にも、ずっと積み重ねてきたものがあった。それを証明するかのように、王者と対等に渡りあっている。そして自分が正しかったと自分に言い聞かせる。赤木の3年間をずっと見ていた妹の晴子は涙を流していました。ゴリ、男としてカッコ良すぎです。

 そしてもうひとつ。

昔、雑誌「BRUTUS」で井上雄彦特集があったのですが、その付録でスラムダンクのネームノートがついていたんです。そしてそこで公開されているのが、「#132 がけっぷち」の回のネームだったりします。

少し紹介すると、ボツになったアイディアも下書きされていて、例えば彩子さんが書いた「がけっぷち」の文字は、最初は「残り全勝」で、そこから「崖っぷち」になったとわかります。

あるいは「 ハルコが臨時マネージャーとして参加?
 ゴリのケガもあるし、大会中はちょっと忙しくて私一人じゃ
」と、晴子がマネージャーになる案も下書きされています。

あとはゴリに「元気がなーーい!」とかいって晴子さんがパンチするシーンもあったメモ書きがあります。ここは彩子さんが先輩たちに「声が小さい」とハリセンで叩くシーンに反映されてますね。

晴子さんがマネージャーになるのは、最終回に反映されてますが、そのアイディアはあったんですね。

ちなみに流川が、落ち込む花道と体育館で殴りあうシーンは、流川史上もっとも長くセリフを口にしたシーンとして有名ですね。

今回はいかがだったでしょうか。よければ、スキ!や「おすすめ」をしてくださいね。


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