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なぜ、あえて森重真人と丸山祐市の間を突破しようと思ったのか。前半30分の独走ドリブルでの駆け引きについて、登里享平に聞いてみた。(リーグ第4節・FC東京戦:0-3)


 味の素スタジアムでのFC東京戦は、0-3で敗戦。

ACLから続いた7連戦の最後で、鬼木フロンターレは初黒星を喫しました。

「あの失点がすべてだったと思います」と、最初の失点を悔やんでいたのは谷口彰悟。その言葉通り、均衡が崩れるまでは一進一退の攻防だったと思いますが、終盤に3失点。失点前後から選手の足が止まり始め、気力を振り絞ったものの、さすがに及びませんでした。

 鬼木監督も采配が難しかったと思います。
送り込んだのは、ハイネル、長谷川竜也、三好康児の3選手ですが、自分が気になったのはそこではありません。「下げた選手」の顔ぶれです。

その3選手を見てみると、阿部浩之、エドゥアルド・ネット、登里享平。いずれも中国での広州恒大戦でフルタイム出場をしている選手だったことがわかります。

 さかのぼってみると、広州恒大戦では板倉滉を戦術的な理由で下げ、負傷で井川祐輔を下げ、さらに途中交代で入った森本貴幸も下げています。この3人はいずれも現時点でレギュラーではない選手でしたし、この采配により土壇場でPKをもぎ取っています。

 何を言いたいのかというと、あの広州恒大戦では、結果的に主力選手がほぼ90分間、ピッチでプレーし続けていたということです。その影響は明らかで、FC東京戦での70分からは多くの選手の足がガクンと止まっていました。となれば、鬼木監督も疲労を優先した采配をせざるを得ません。

 この展開でしわ寄せを受けた選手が田坂祐介でしょう。

「今日に関しては、自分が試合を壊したと思っている。反省しないといけない。ああいう風に横パスをひっかけられると、相手に勢いを与えてしまう」

 試合後のミックスゾーンで彼に話を聞くと、2失点の要因になった自分のミスを猛省していました。ただ試合前日には合流していたとはいえ、鬼木監督としても田坂のフルタイム出場は避けたかったはずで、実際、彼を下げたときのシステムを試合前日に試していました。おそらくリードして逃げ切るときはこの形を採用していたことでしょう(この形については本文で触れています)。

 にもかかわらず、万全ではない田坂よりも、消耗が激しい登里をベンチに下げざるを得なかったわけで、そこはACLの連戦による苦しい選手事情を示していたとも言えます。

 試合後の小林悠は、ACLを含めた7連戦の疲労について「そこは言い訳にはしたくないです」と言いましたが、やはりコンディションに差がある状態では、ちょっとしたところでこれだけスコアの差もついてしまうということなのかもしれません。

では、今回のレビューです。ラインナップはこちら。

1.「前半途中からリョウタ(大島僚太)には、『中と外の使い分けをもっと意識してやってくれ』と言っていた」(田坂祐介)。狙い過ぎた中央からの攻撃と、ゼロトップシステムが精彩を欠いた理由。

2.なぜ、あえて森重真人と丸山祐市の間を突破しようと思ったのか。前半30分の独走ドリブルでの駆け引きについて、登里享平に聞いてみた。

3.前半だけで5つのオフサイドを取った奈良竜樹の強気なラインコントロール。「柏戦よりはペース配分を考えていたし、全部が全部という感じではなかったが、前半はうまくボールを回収できていた。カウンターはあったが、体を張って守れていた」(奈良竜樹)。そして試合前日に試していた、田坂祐介を下げたときのオプションとは?


4.ファウルで止めてテンポを狂わす。FC東京が実行してきた対策と、勝負所で微笑んでくれなかった飯田淳平主審のジャッジ。

5.「覚悟を持ってやらないと」(登里享平)。「強く責任を感じなくてはならないし、まだまだ力不足だと思います」(奈良竜樹)。自分たちから絞り出すようにして「悔しい」と述べていた複数の選手たちから感じたもの。

以上、5つのポイントで冒頭部分も含めて全部で約8500文字です。負けた試合のレビューですが、「なぜうまくいかなかったのか」を中心に分析しています。負けて得るものあるわけで、そういう視点で読んでもらえれば幸いです。

なおプレビューはこちらです。→「自分たちがやるかやらないか」。中村憲剛が掴んだ、ある確信とは?そして大久保嘉人を沈黙させるために押さえておきたい3つの秘策。/ 試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第4節・FC東京戦)

では、スタート!

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