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ゴールネットを揺らした3度の場面は、いずれも「空」を使った崩し。今季の攻撃は「中と外の使い分け」だけではなく、「上と下」の揺さぶりも使い分ける。(ゼロックス・浦和レッズ戦:1-0)

埼玉スタジアム2002での富士ゼロックススーパーカップ・浦和レッズ戦は1-0で勝利。カップ戦では初のタイトル獲得となりました。

 実はこのゼロックススーパーカップという大会は、得点が多く入ることで知られています。

 この大会枠の交代枠は5人。そのため、試合終盤は両チームの選手が半分近く入れ替わることになりますし、フレッシュな選手がそれだけピッチに増えれば、試合終盤になってもゲームは活性化します。シーズン最初のゲームということもあって、チームの連携面もそれほど構築されてない時期ですから、スコアも動きやすいのかもしれません。

過去25大会のスコアを見たら、0-0のスコアレスドローはありませんでした。1-0で終わった試合も、2013年のサンフレッチェ広島対柏レイソルだけでした。他の24回はいずれも複数得点が生まれています。そう考えると、1-0で手堅く勝ち切るというのは簡単ではなかったと思います。

その結果もそうでしたが、川崎フロンターレとしては、内容的にも収穫があったゲームにすることができました。

では、試合を振り返っていきたいと思います。ラインナップはこちらです。

1.「相手のシステムを考えると、サイドバックが空くかなと。紳太郎に出したら、誰が紳太郎につくのか。そこで斜めのパス、縦のパスをうまく使えるのかなと。そこを探りながらやっていました」(谷口彰悟)。前半は、なぜ組み立ての起点が左サイドになったのか。左サイドバックの車屋紳太郎が、あえて高い位置を取らなかった理由。

2.「自分たちが浦和に対して用意してきたことと、本来の自分たちがやるべきことが合致した。なので、いつも通りといえば、いつも通り」(中村憲剛)。外から揺さぶると見せかけて、中央から崩す。30分に起きた、谷口彰悟のレアンドロ・ダミアンへの縦パスから生まれた決定機。

3.「ブラジルでもあのような形で守備はしていました」(レアンドロ・ダミアン)、「楽でしたね。前からあれだけ行っててくれると。だいぶ制限してくれていた」(谷口彰悟)、「正直、あそこまでプレスをかけてくれるとは思わなかった」(奈良竜樹)。チェイシングと献身性、連続性を見せたレアンドロ・ダミアンの前線からの守備。浦和のビルドアップをハメた、守備の連動性を読み解く。

4.「自分たちが使いたいスペースを埋めてくる相手に対して、何が有効なのか。空なので」(中村憲剛)、「(去年と)変わったのはクロスぐらい」(家長昭博)、「向こうからすると『入れてこないだろう』というシーンでも、うちはそこもあると思わせることができる」(奈良竜樹)。ゴールネットを揺らした3度の場面は、いずれも「空」を使った崩し。今季の攻撃は「中と外」だけではなく、「上と下」の揺さぶりも使い分ける。

5.「率直に嬉しい。こういう一発勝負を勝つことが、この後のチームの力になっていく」(中村憲剛)、「この経験が、今シーズンの10ヶ月後か9ヶ月後にも生きてくると感じている」(谷口彰悟)。一発勝負での勝ち癖をつけていくために。フロンターレの歴史で初めて掴んだカップ戦の意味とは?

以上、5つのポイントで約10000文字のボリュームです。

シーズン最初の試合ということもあり、川崎フロンターレというチームスタイルの前提となるところも、丁寧に書いております。鬼木フロンターレの理解を、より深めてもらえると幸いです。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(ゼロックス・浦和レッズ戦)

では、スタート!

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