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強気のオーバーラップから先制点をアシスト。「攻め残っているのは怖かったが、自分が前に出ればフリーになれるという確信もあった」。中島翔哉の攻め残りを逆手に取った田坂祐介の駆け引きとは? 多摩川クラシコを制してベスト4へ。/ 天皇杯準々決勝・FC東京戦:2-1


 天皇杯準々決勝・FC東京戦は2-1で勝利。

この試合のプレビューでは、ダブルボランチでボールをしっかり握ること、中島翔哉とマッチアップする田坂祐介がゲームのキーマンになること、そして前線に入る登里享平の役割などを大きなポイントに挙げていました。奇しくも、その展望通りの試合展開になったとも言えるわけですけど、嬉しい反面、逆にこのレビューで書くことがなくなって、ちょっとだけ困りました・笑。

 さて。試合開始前の不安要素と言えば、やはり一ヶ月ほど試合間隔が空いたことだと思います。両チームともに試合の入り方には気を使っていたはずで、その意味で、この試合での立ち上がりは注目でした。

 しかしフロンターレは、キックオフからポンポンとパスを回して、ゴール前まで攻め込んで行き、いきなり大久保嘉人がミドルシュート。開始わずか20秒の出来事です。上々な立ち上がりだったことで、チーム全体にもリズムが生まれます。

 序盤は「フロンターレらしいサッカー」をピッチで表現できていました。
フロンターレが攻撃がうまくいっているときのわかりやすい目安が、「中、外、中」のリズムが出来ているときです。

 まずは後ろから中央に縦パスがストンと入る。そこで前を向かせまいと、相手も寄せてくる。それを見て、相手を真ん中をギュッと締めさせてから開けさせたサイドを使って、今度はサイドから縦に突破を狙う。そこで相手の守備が横に広がったら、もう一度、中央に戻して攻めていく。

 これがいわゆる、「中、外、中」のリズムなわけですが、このリズムの何が大事なのかというと、相手の守備を動かし続けることで、のちのち相手の守備陣の足を止めることにつもながるわけです。その結果、今年は試合終盤に劇的な決勝弾が生まれていました。

 しかしリーグ戦終盤は、いろんな要因があり、相手の足を止めるボール回しができていませんでした。それが、この試合で久しぶりに復活したというわけです。中心にいたのはダブルボランチの中村憲剛とエドゥアルド・ネット。

 彼らは相手の出方を見ながら自在にポジションを変えながらビルドアップを担いました。相手は前からボールを奪おうにも人数が足りないので、守備が後手に回ります。すると後ろの選手が徐々にフリーで組み立てができるようになります。こうしてチーム全体でボールを動かしながら、テンポよく相手ゴールに迫っていきました。

 そこからどうやって鮮やかに2点を奪い、勝ち切ったのか。そこから先はレビューで詳しく掘り下げております。今回のラインナップは、こちらです。

1.中、外、中のリズムを生み出した、前半のパスワーク。この試合のメカニズムは、相手の足を止めたダブルボランチによる「ボールの握り」と、谷口彰悟と車屋紳太郎による左サイドでの「ボールの出し入れ」にあり。

2.強気のオーバーラップから先制点をアシスト。「攻め残っているのは怖かったが、自分が前に出ればフリーになれるという確信もあった」。中島翔哉の攻め残りを逆手に取っていた、田坂祐介の駆け引きとは?

3.理想的なカウンターから追加点もお膳立て。「ここぞというときに、みんなが同じ意図を持っていけた。そういう仕留めるところはよかった」(登里享平)。この試合での登里享平が、攻守両面で抜群の輝きを見せた理由とは?そして、相変わらずシュートがうまいエウシーニョ。

4.オープンな展開から、3点目を仕留め損ねた後半。そしてセットプレーでの悔やまれる失点。「タイトル取るチームは、最後を失点ゼロにしないといけない」(谷口彰悟)。

5.注目すべきは、失点後のファーストプレー。なぜネットは相手陣地に向かってロングボールを蹴り上げたのか。ガンバ戦の同じ轍を踏まないために行っていた、勝ち切るためのチームの意思統一。

6.「ここ数ヶ月の自分達の中では『これだな』、『こうやっていたな』と思い出しながら、やれたゲームでもあった」。中村憲剛が振り返る、チームとして取り戻した感触とは? (※12月27日追加)

 以上5つのポイントで、全部で約7500文字です。
個人的には、ポイント5を是非読んで欲しいとも思っています。「失点後のファーストプレー。なぜネットは相手陣地に向かってロングボールを蹴り上げたのか。ガンバ戦の同じ轍を踏まないために行っていた、勝ち切るためのチームの意思統一」です。細かい判断ですが、リーグ最終戦の反省点を生かした試合運びをしていたので。

(※12月27日に中村憲剛の談話を追加したポイント6.「ここ数ヶ月の自分達の中では『これだな』、『こうやっていたな』と思い出しながら、やれたゲームでもあった」。中村憲剛が振り返る、チームとして取り戻した感触とは?を追記しました。約2000文字なので、全部で9500文字です。購入した方々は、ぜひ読んでみてください)

そろそろ本題に行きましょうか。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(天皇杯準々決勝:FC東京戦)

では、スタート!

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