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「それは、フロンターレというチームがそういう力を持っているということ」(チョン・ソンリョン)。諦めの悪さで3度追いつき、クラブ史上初のPK戦勝利でベスト8へ。 / 天皇杯4回戦・浦和レッズ戦:3-3(PK4-1)

 天皇杯4回戦浦和レッズ戦は3-3(PK4-1)で勝利。

 年間1位の浦和レッズと年間2位の川崎フロンターレによる120分間の死闘は、浦和が3度リードする展開になりながら、川崎が3度追いつくという大熱戦でした。

浦和側からすると、「なんて諦めが悪くて、しぶといんだ・・・・フロンターレ!」と思ったに違いありません。そして最後は諦めの悪いフロンターレが、PK戦の末にベスト8に勝ち進みました。


 これだけ心に熱が残る試合もなかなかありません。
本当に素晴らしいゲームを見せてもらったと思っています。PK戦で勝利の立役者になったGKチョン・ソンリョンが言います。

「3度、追いついたのはすごいことだと思っています。それは、フロンターレというチームがそういう力を持っているということ。でも重要なのは、最後まであきらめないでやったことだと思っています」

 フロンターレは、リーグ最終節のガンバ大阪戦で2点のリードを守り切れず逆転負けを喫しました。そして年間1位の座を逃しています。あの試合後、谷口彰悟は失点後に下を向いてしまったことを反省していました。それだけに、この浦和戦では「あきらめなかった」ことに胸を張っていました。

「下を向きそうになっていたところで、みんなで声を出してあきらめなかった。それがよかったと思う。最後まであきらめない気持ちが形になった」

 もちろん、気持ちだけでは試合に勝てません。点を取るためには冷静な作業が必要だからです。でも前線の選手たちに聞くと、負けていても驚くほど冷静だったんですよね。

「先行されたので、逆に割り切っていました。追いつく、追い越すしかなかったので。点を取りに行くプレーだけを考えていました」(三好康児)

「フロンターレは点が取れるので、負けていても絶対にチャンスが来ると思っていました。(ゴールの場面は)GKが前に出ていたのと、良いボールが来たので、しっかりと決めることができてよかった」(森本貴幸)

 とりわけ、森本貴幸の「ザ・ストライカー」ぶりには、相変わらず驚かされます。攻撃の組み立てにはあまり顔を出さないため、傍目には「試合から消えているような・・・」、「流れに入っていけていないのでは?」ようにも見えるのですが、それでも大事な局面ではチャンスを仕留めるのだから、恐れ入りました。

 風間監督は「ストライカーというのはマグロ漁船に乗った漁師のようなもの。毎日小さな仕事をするよりも、最後に大物を釣ればいいんだよ」と言っていたんですが、本当に最後に大物を釣り上げる仕事をしてしまうタイプですね。たいしたものです。

 では試合の分析のレビューをしていこうと思います。
普段、このレビューを書く際は、2回ほど試合映像を見直してから執筆するんですけど、今回は延長120分+PK戦分なので時間がかかる上に、書きたいことが多すぎて、思うようにまとまりません・笑。だって、みんな素晴らしかったですから。

今回のラインナップはこちらです。

1.「相手に(ボールを)出させない守備はできていた」(車屋紳太郎)、「相手にボールを回させている感覚でやれていた」(谷口彰悟)。狙い通りだった守備組織と、浦和のリズムを狂わせていた長谷川竜也の献身的なチェイシング。

2.絶対的な両ウィングバックを交代させた風間監督と、交代できなかったペトロヴィッチ監督。終盤に「違い」を生んだ両サイドの攻防とは?


3.「コウがあそこにいることで、高さも任せられるし、足元も落ち着いていた。頼もしかった」。川崎のブスケス・板倉滉の存在感をレビュー。

4.いかに強みを出して、いかに弱みを隠すか。田坂祐介と宇賀神友弥に見る、コンバートされたCBの対処術に迫る。

5「自分が入ることでそういうことができる。空中戦では負けたくないと思っていた」(板倉滉)。浦和戦前日練習で試していた「板倉シフト」とは?


6.「PK戦になる想定はしていましたし、予習もしていました」(チョン・ソンリョン)。「監督から『じゃあ5番手な』と言われて、『きたー!俺の見せ場!』と思いましたね」(谷口彰悟)。クラブ史上初のPK戦勝利にまつわる舞台裏のあれこれ。

以上、6つのポイントで、延長120分+PK戦だったのでボリュームは、なななななんと10000文字を超えてます・笑。腱鞘炎になりそうでした。これだけのボリュームのレビューはないと思うので、ぜひ読んで見てくださいね。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(天皇杯4回戦:浦和レッズ戦)

では、スタート!

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