静かに、じっくりと噛み締める「連覇」。そんな優勝の仕方があってもいい。(リーグ第32節・セレッソ大阪戦:1-2)
ヤンマースタジアム長居で行われたセレッソ大阪戦は1-2で敗戦。
負けて優勝が決まるというのは、こんな感覚なんですね。ドラマティック過ぎた初優勝の爆発的な歓喜とは真逆で、今回の連覇の瞬間は、静かに、じっくりと噛み締めるように味わう優勝となりました。
現地にいた者としては、正直、とまどいもありました。ただ、ときには、そんな優勝があってもいいんじゃないかなと、今は思っていますね。
思えば、これまで優勝が決まる可能性があったシーズンといえば、2008年と2009年、そして昨年2017年の最終節でした。どれも自力ではなく、自分たちが勝利した上で、他会場の結果待ちでした。
2008年は味の素スタジアムで東京ヴェルディ戦。2009年は日立台サッカー場で柏レイソル戦。去年は等々力陸上競技場で大宮アルディージャでした。そのすべての試合のピッチにいたのは中村憲剛だけです。
その過去3回のうち、朗報が届いたのは去年のホーム等々力だけ。
アウェイでは2008年も2009年も、どちらも試合終了後に中村憲剛が「ダメ?」とベンチに確認して、首を振られて、無念の表情を浮かべる光景だったのです。
そして今回のヤンマースタジアム長居。
「長居の悲劇」と呼ばれてもおかしくないほど劇的な敗戦でしたが、今回は過去のアウェイとは逆。「優勝?」とベンチに確認した中村憲剛には、朗報が伝わりました。
J1では史上5チーム目となるリーグ連覇を達成です。
ただこのとき、中村憲剛に涙はありません。手を叩いて喜んだだけです。試合後のフラッシュインタビューで、そのことについてこう話していました。
「去年は僕自身は15年分の、クラブとしては20何年の積み重ねや思いが等々力ですごく爆発した。今年は泣いてないということは、やっぱり自分たちがそれだけ成熟して、強くなってきたということ」
こういう経験も糧にしながら、きっとクラブも選手もまた前に進んで成長して行くのだと思います。
そして今年は平成で最後のシーズンとなったJリーグでもありました。そのJリーグの歴史に、連覇という形で優勝に名を刻むことができました。
「フロンターレ (Frontale)」とは、イタリア語で「正面の、前飾り」を意味する言葉です。
挑戦するフロンティアスピリッツで、また次の元号の時代も切り開いていく姿勢に期待したいですね。
では、今回のレビューになります。ラインナップはこちら。
1.「もっとテンポよくボールを回して、ワンタッチ、ツータッチぐらいで動かしながら、揺さぶって隙間を見つける作業をしていきたかった」(谷口彰悟)。「いつも通り」にはならず、攻めあぐねた前半を検証する。
2.「距離感的に人の配置は間違っていない。ただビルドアップのときに阿部ちゃんやアキくんにボールが入ったときに孤立する形が多かった」(守田英正)。登里享平に発生した、負傷交代のアクシデント。知念慶投入時に、選手たちが行っていた修正策とは?
3.「GKが出遅れている感じも間接視野で見えていた。(PKを)もらいにいくような触り方だったかもしれないけど、うまくファールをもらえた」(知念慶)。グループの素早い切り替えと、知念個人で粘りで獲得した、土壇場のPK。そしてキッカーが家長昭博だった理由。
4.静かに噛み締めた連覇。ときには、そんな優勝の仕方があってもいい。
5.「そこはみんなでやってきた成果。今日、勝てれば良かったが、それでもぶれずにみんなでやってきたということ」。フルタイム出場で最終ラインを支え続けた谷口彰悟が、シャーレを掲げた意味。
6.「今年の試合は優勝する試合でピッチに立つということを目標にしていた。それを達成できたのは良かったと思います」(知念慶)、「チームの本当の強さを示せたのではないかと思う」(阿部浩之)、「これで優勝できなかったら、自分のせいだと思っていました。逆に優勝できたら、まわりのおかげ」(守田英正)、「向こうのブラジルで、親戚、友達もスクリーンをつけて生で見ていてくれました。喜んでくれたと思います」(エウシーニョ)。優勝した後のミックスゾーン取材、あれこれ。
7.連覇達成。個人的後日談、あれこれ。
(※追記)8.「優勝」が日常になり、サッカーは続いていく。そして未来のフロンターレ。
以上、8つのポイントで、冒頭の部分も含めて全部で約16500文字です(11月16日にポイント8を追記しました)。野暮かもしれないと思いつつ、試合のこともそれなりに分析しつつ、残りはエッセイみたいなコラムみたいな内容にもなっています。よろしければ、読んでもらえると幸いです。
なお、試合のプレビューはこちらです。➡️試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第32節・セレッソ大阪戦)
では、スタート!
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