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【第6回】 学校教育の方向転換

東京都を含め、1都3県ではまだ緊急事態宣言(3月3日現在)が継続しているものの、子供たちにとっては、受験、卒業、入学など、とても大切な時期を迎えている。コロナ禍を経験した学校教育は、これからどのような方向転換を迫られるのか。日本の未来を担う人材を効率的に生み出すため、また現在の教育分野における様々な問題を解決するため、この機に抜本的な改革を行う必要がある。

給食ビジネスの改革は食糧対策につながる

 コロナ禍によって「学校教育のスタイル」が大きな転換点を迎えていることは、就学中の子どもがいる家庭ではもちろん、一般的にも周知されています。文部科学省の発表によると、新型コロナウイルスの感染経路は、昨年6月から11月までの間、「家庭内感染」が小学生73%、中学生64%、高校生32%、それに比べて「学校内感染」は同6%、10%、24%と抑えられているものの、同省は「学校の新しい生活様式」というマニュアルのなかで徹底した感染症対策を規定し、指導しています。
 そして、いずれコロナ禍が沈静化しても、学校教育の現場は元通りにならない、いや、してはならないと私は考えます。前回も述べたように、今こそこの「災い」を「福」に転じ、学校教育が抱える諸問題を改善し、合理化するいい機会だからです。
 たとえば、リモート教室が普及することで大きな影響を受ける事業に「学校給食」があります。児童・生徒が学校へ行かない分、給食事業者の仕事が減るのは当然です。かといって、在宅の子どものために親に毎日食事を用意させたり、その費用を家庭に負担させたりするわけにはいきません。ではどうするか。給食の行き先を幼稚園や介護施設などに拡大し(保育園はすでに義務化されている)、登校しない子どもの分はコンビニやスーパーで受け渡すシステムを構築すればいいのです。費用はすべて国の負担とします。
 さらに、飲食店の減少などで余った国産の食糧を使えば、生産者や食品流通業者への支援につながります。日本の食品廃棄物等は年間2550万トン、そのうち食べられるのに捨てられる食品の量は612万トン(2017年/農林水産省、環境省)と推計されています。つまり人口1人当たり、年間48kgの「食品ロス」が生まれていることになり、コロナ禍によって、昨年来その量も増えているはずです。給食の使い方や流通の仕組みを変革することで、大きな社会問題となっている「食品ロス」も減っていくと予想します。


天才を数多く生み出す教育現場への転換

 リモート教室の発達に伴い、カリキュラムの改革も進めていくべきでしょう。従来型の学校教育を完全に否定するわけではありませんが、子どもの特性を伸ばすためには現状の「悪平等」体制を撤廃して、授業課目の選択肢を広げたほうがいい。小中学生は国数英や理社(小学生低学年は生活)の基礎のみを必修として、あとは好きな課目を自由に選ばせればいいのです。そうすれば、理科が得意な子は自分で先生を選び、「物理」や「化学」を数コマ追加する……など、カリキュラムをカスタマイズできます。児童・生徒が一斉に教室に集まって授業を受ける必要がない「リモート」の機能を生かした教育です。
 教育の機会均等は、発想としては美しいのですが、日本は特定の才能を伸ばすことを怠ってきたため、飛びぬけた俊才が生まれにくい環境になっています。賞を獲るために勉強するのは本末転倒ですが、先進国のなかで、人口の割にノーベル賞やフィールズ賞の受賞者が少ないのも結果的にはそのせいでしょう。「栴檀(センダン)は双葉より芳し」とも言います。ならば、天賦の才を磨く教育は早くから施し、日本と世界の未来を明るく照らす人材をひとりでも多く生み出していくべきです。
 いっぽう、中教審(中央教育審議会)が定めた学習指導要領は、以下の3つの評価軸を定めています。①知識・技能 ②思考力・表現力・判断力 ③主体的に学習に取り組む態度――①②はともかくとして、③に関しては教員一人ひとりの「見る目」が求められます。しかし、リモート授業が主体となればそれは不可能となります。ですから、この点については「勉強は子どもの生活の一部」と考え、家庭内で親が判断して評価してあげるしかありません。

教師を「ブラック部活」から解放する

 美術(小学校は図画工作)や音楽といった芸術系に加え、技術・家庭科などの授業を全児童・生徒に均一に課すのは不要だと私は考えています。これらは選択課目にするか、もしくは全廃するべきでしょう。なぜなら、スキルによって差が出る課目を学校教育に入れ込み、成績をつける意味はないからです。そもそも、リモート授業が困難な課目だけに、これらは学びたい子(保護者が学ばせたい場合も含む)だけが自由に参加できるようにして、教室を開放すればいいと思います。
 体育に関しては、野球やバスケットボール、陸上など種目を分けて選択させ、参加させる。もちろん、運動能力で評価をつけることには反対です。カリキュラムとしてではなく、週何回か校庭に集まって、みんなでカラダを動かすなど、やり方はいろいろあるでしょう。そこは大人がきちんと考えてあげればいいことです。
 部活動については、全面的に改善する必要があります。2017年にスポーツ庁が発表した『運動部活動等に関する実態調査』よると、「全員入部制」を実施している公立中学校が32.5%もあるようです。部活は基本的に生徒の自主的な活動(のはず)ですから、強制する必要などありません。やりたい子だけがやればいいのです。もし、場所が足りないなら、使っていない施設を有料で自治体が提供すればいいし、本格的に打ち込みたいなら、民間のスポーツクラブに所属すれば済む話です。
 部活動によって最も過酷な目にあうのは、顧問を任された教師たちです。行き過ぎた活動によって土日もなく面倒を見させられている「ブラック部活」が全国に多々あるようですし、この際、部活を制限して教育の労働現場を見直してはどうかと考えます。そのためにも、指導者は教師ではなく、OBなど民間に委託して部員の家庭から指導料を徴収すればいいのです。

幼稚園や保育園は今後もなくならない

 さて、幼稚園や保育園は社会活動のリモート化によって変わっていくでしょうか。実は、そうでもありません。親が自宅で仕事をする時間が増えると、子どもの相手をしている暇もなくなります。つまり、幼児は預けないと効率よくリモートワークできないのです。また、仕事はしていなくても主婦(主夫)は家事に追われる日々であることは変わりありません。
 つまり、子どもが幼稚園や保育園に行っている時間も、親にとってはとても大切なのです。親子が一緒にいる時間が長くなれば、仕事をしていても家事の最中でも、イライラを子どもにぶつける機会が多くなります。それが過ぎれば、虐待につながるケースも出てくるのではないでしょうか。家族間のコミュニケーションを円滑にするためにも、これらの施設は不可欠なのです。
 ですから、幼稚園、保育園事業は今後もなくなることはありません。さらには冒頭でも触れたように、すべての幼稚園において給食を無償で提供するとともに、条件によって支払いが免除されている保育園の給食費も、いっそ全面的に無償化するべきです。リモートワークがどんどん普及して常態化するなら、このような施策を講じるのは当然と言えるでしょう。


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石川和男:「政策アナリスト/政策家」として、社会保障関連産業政策論、エネルギー政策論、公的金融論、安全網論、行政改革論などに関する政策研究・提言を行う。マクロ経済・社会保障からリテール金融まで様々な分野について研究・提言対象としている。