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不易流行|時代のせいにするなかれ|2022.1.22

 やがて100億人に届こうかという人類がこの地球で暮らし続けていくためには、「経済圏」「社会圏」「生物圏」のバランスが欠かせない。ポツダム気候影響研究所所長ヨハン・ロックストローム博士のこの考え方はSDGsウェディングケーキと呼ばれ、世界中で支持されている。特に昨夏、国連気候変動政府間パネルが「気候危機は、産業革命以来の人類の活動が原因である」と各国の200名以上の学者たちが科学的根拠に基づく検証をし発表したことで世界は一気に動き始めている。しかしながら、そのバランスをうまくとって生業を維持している個人や地域や企業は、この地球上に滅多に存在しない。現代社会は複雑に絡み合い、神経細胞を連結させているからだ。

 成人の日の朝、高校生や大学生が脱石炭など温暖化対策を求めて英グラスゴーのCOP26に参加している姿がLEDモニタに映しだされた。グレタ・トゥーンベリさん(18歳)や世界の若者たちは、「わたしたち若者は、深刻な異常気象の被害を受けていて1.5℃に気温上昇を抑えなければ自分たちの未来はない!」と叫ぶ。現地で一緒に活動をしていた日本のZ世代女子学生三人もヨハン博士やメアリー・ロビンソンさん(元アイルランド大統領)と地球存続に関するアドバイスをもらう。そして、日本に帰ったらできることはなんなのか?行動を模索する。すぐに、首相の前で叫ぶ、政治家に相談に行く、毎週金曜日に学校に行かない運動をする。刺さらない。美辞麗句を重ねる大人たちの行動を変えることが全くできない。彼女たちの心がどんどん傷ついていく様子が画面から伝わってくる。全共闘時代や原発やダムの反対運動と全く同じように見えた。わかってはいる。わかってはいるが生活のために変えられない人と、環境が優先されないと地球が継続しないと考える人との、果てしなく続く噛み合わない議論。泣けてきた。わたしたち資本主義謳歌世代が、社会課題を解決する術を見つけきれていないことに泣けた。そしてその大きなツケを確かな受信レーダーでキャッチし、すわ動き出そうとしている若者に課し、傷つけているのだ。

 SDGsの認知率は54・2%となった。さて、行動変容率はソーシャルインパクトはいかほどか。若者は伝え方を少し修正するべきかもしれない。大人が、即行動を変えられるように。ダライラマ14世が今世紀初頭に「20世紀は物質の発明の世紀でした。21世紀は対話の発明の世紀にしなくてはなりません」と告げたのを思い出す。ここが一番難しい。人類がまだ見つけていないメソッドなのだ。
 詩人でミリマリストであった茨木のり子さんが「自分の感受性くらい」という詩を遺している。

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ


【参考資料】
気候危機を食い止めたい! 若者たちが挑むCOP26 - NHK.JP
AR6 Climate Change 2021: The Physical Science Basis
電通、第4回「SDGsに関する生活者調査」を実施
茨木のり子『永遠の詩02』

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