太陽と月 - 獅子座と蟹座の星(1/2)

※今回はちょっと前置きっぽいのが長くなりましたので、早く星座の話が読みたい!という皆様は、こちらをどうぞ

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「星占い」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは空にきらめく「星」、つまり、宇宙に浮かぶ小さな光の粒です。いかにもキラキラした、ロマンティックな「星占い」という言葉の中には、あのギラギラ輝く太陽や、お団子を盛って楽しむような円満なお月様のイメージは、ほとんど含まれていません。

ですが、実際の「星占い」の世界では、太陽と月は主役と言ってもいいほどの大立て者です。星占いは「地球から見た天空」をもって占うものであり、「見た目」は大変重要です。地球から見上げた全天で最も明るい天体である太陽と月は単に「ライツ」「ルミナリーズ」(両方「光」の意)と呼ばれることもあります。「光」そのものである両者は、星占いを語る上でいの一番に登場する天体です。
一般に「私は双子座の生まれです」という言い方をしますが、これは正確には「私が生まれたとき、太陽は空の双子座エリアにありました」ということになるのです。雑誌等に掲載される「12星座占い」の記事は、これも正確には「太陽星座占い」です。私たちはちらっと雑誌の星占いを読んだだけで、「太陽の星占い」をしていることになるわけです。

最近では「月星座占い」というものも、大変ポピュラーになりました。10年くらい前までは「裏星座」などと言う人もいました。月星座はとてもおもしろいのですが、占うのがなかなか難しい所があります。というのも、月は「誕生日」だけではその星座が分からないのです。月は毎年同じ日には同じ星座にある、というわけではありません。生まれた瞬間の月の星座を特定するには、出生年月日と生まれた時間、そして生まれた場所(国が違えば時差が出ますので)が必要(※)になります。月星座占いを掲載した雑誌には膨大な量の表が含まれています。これがないと「自分の月星座」を調べられないのです。ちょうど現在(2018/11/1)発売中の、こちらのMOOKに、月星座占いの記事を書いたところですが、この冊子にも膨大な表が載っています。

星占いの世界では、太陽はその人の意志や行動パターン、基本的な価値観、生きる姿勢などを扱う星です。「基本方針」のようなイメージです。同じ誕生日の人ならば、ほぼ同じ場所に太陽があるわけで、占いの記事を書くにはたいへん便利な星です。誰でもすぐに「自分の星座」を知ることができます(境目の人は、そうでもないのですが)。

一方の月は、太陽とは全く違い、「自分の月の星座」を発見するだけでも一苦労です(今はWebサイトなどで簡単に調べられますが!)。同じ誕生日の相手であっても月星座は違う可能性が高いですし、双子でも、出産に時間がかかれば、二人の月星座が別々になることだってあり得ます。ゆえに、月はより「パーソナルなもの」を扱います。個人差が大きいもの、より「自分」に密着したもの、偏った部分。すなわち、感情や体質、気分、クセ、幼い頃の状況などを司る、とされています。

更に言えば、太陽は父性的なイメージ、月は母性的なイメージを担っています。誰のホロスコープにも太陽と月が描かれるワケですが、私たちは自分がどんな性であろうと、自分の内側に「父なるもの・母なるもの」を持っている、ということになります。
これは、自分の親のイメージと、自分自身が親の立場に立ったときのイメージの両方を含みます。両者は完全一致はしませんが、不可分でもあるものなのでしょう。自分自身が親になったとき、何らかの形で自分が幼かったときのイメージを想起しない人はいないはずです。親と早い段階で別離した人であっても、自分自身の親はどんな人物だったろうか、ということを思うでしょうし、子としての自分なりに「父なるもの」「母なるもの」のイメージを描いたことがあるはずで、そのイメージが親となった自分とどこかで、リンクすることになります。反面教師のような形になることもあるでしょうし、負の連鎖を断ち切ることを自らの使命として、子を持つ人も少なくありません。
「父なるもの」「母なるもの」は、必ずしも人の性別に結びついたものとも言えません。誰もが両方を抱いている以上、たとえば「女性でなければ母なるものは実現できない」ということにはなりません。

少し脱線しましたが、言わば太陽と月は、その人の内側にあるカップルのようなもの、と言えるかもしれません。
私たちの中には様々な「自分」がいます。ここまで語ってきた水星から土星までの全てのキャラクターが、すべての人の中に存在している、というのが星占いの思想です。
たとえば「性格占い」を読むとき、私たちは自分のページを開いて、そこに書いてある1つの「性格」を読み、自分に当てはまるかどうか考えます。ですが、実際に私たちが生きる「自分の性格」は、矛盾のない1つの傾向として読み取れるような単純なものではないはずなのです。実は、「星占い」は、そうした矛盾や複雑さまでをどうにかして読み取ろうとする道具なのです。

今でこそ、私たちが普段目にするカレンダーでは特に記載されていない限り、月の情報は見つけられません。でも、たとえば江戸時代なら、日付を言っただけで月齢が分かったものです。たとえば「二十五日の晩に」といえば、月のない夜だな、闇夜だな、ということがわかります。旧暦は月の一日が新月、15日頃が満月なのです。これと太陽の位置、即ち二十四節気の組み合わせでカレンダーが創られていたわけです。今のカレンダーは太陽の刻む目盛りだけをもとにできていますが、海外では、今も月を基準に含む陰暦を使っている国があります。太陽と月の2つの天体の動きは、地球上の「時間」そのものなのです。

と、前置きが長くなりました。
太陽と月は、星占いにおける存在感が大きすぎて、なんだか書けば書くほど書かなければならないことが浮かんで、始末が悪いのです。

星占いの世界では、太陽は獅子座、月は蟹座を支配しています。
この「星座を支配する」というのは、何か天文学的なリクツがあるわけではありません。星座に星(惑星)を割り当てるという考え方は非常に古くからあるのですが、割り当ての「理由」については、わずかに残る断片的な資料から漠然と推測されている、という程度です。「世界の始まり」のホロスコープでそのような配置になっていた、とする説がよく紹介されるようですが、そもそも、この「世界の始まり」自体が神話的な概念です。

ともあれ、星占いの世界では、蟹座と獅子座がそれぞれ、月と太陽の星座、ということになっています。これは、蟹座に太陽が入るタイミング、即ち夏至が、北半球では最も昼間が長い日であり、そこから真夏、つまり「1年で最も熱と光に溢れる日々」となるからです。さんさんと光のあふれる季節に、最も明るい「光」の天体を割り当てた、ということです。つまり蟹座と獅子座は「光の星座」ということになります。

では、他の星同様、キーワードで2つのルミナリーズを見てみましょう。

まず、獅子座の支配星・太陽のキーワードはこんな具合です。

意識、権威、王権、主観、心、知、かたち、動き、魂、火、全てを見通すもの、髪に関すること、意志、判定、自意識、アイデンティティ、行動、他者へのリーダーシップ、父なるもの、夫、主人、友情、著名なもの、支配者、頭、右目、心臓、黄金、麦、大麦、昼、レモンイエロー、苦み、etc.,

次に、蟹座の支配星である月は、こんな具合になります。

肉体、身体、感情、クセ、幼少時の体験、容姿、女性性、女神、同居、婚姻、懐胎、保護、合法的な結婚、ナース、兄弟姉妹、母なるもの、妻、家事、女主人、所有財産、市街地、人の住む場所、人を集めること、入手、利益、支出、家、船、左目、胃、胸、呼吸、脾臓、髄、銀、ガラス、夜、ライトグリーン、塩味、etc.,

夫-妻、魂-肉体、昼-夜など、太陽と月で「対」になっている概念がたくさんあります。太陽と月は様々な地域の神話で、夫婦として描かれることが多いようですが、星占いの世界でも、両者は「カップル」的な位置づけになっています。

と、あまりにも長くなってしまったので、太陽-獅子座と月-蟹座、それぞれの突っ込んだお話は、次回にいたします、すみません!

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