表参道日記

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表参道日記-6: 表参道を歩く人

村越さんは、今は夕方のはやい時間にギャラリーに歩いてやってくる。
表参道はいつも、人で賑わっている。
そのなかには、雑誌やフリーペーパーや、中には卒論をまとめたりするために、たくさんの人がインタビュアーとして立ち、道行く人の声を集めようとしている。

「今は、家から12、3分でここまでこられるから、しょっちゅう表参道でインタビューされるの、写真を撮って、話を聞かせて下さい、って。取材なのね、いろい

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本当にありがとうございます。

表参道日記-5: インタビュー、その2

矢内原さん、宇佐見さんのこと。ギャラリーをはじめるきっかけとなったジャコメッティの作品をもっと知りたいと思い、村越さんはいろいろな集まりに足を運び、勉強した。
あるとき、銀座で画家・田淵安一の出版記念の会があって、そこに出席した。

「一人で行って、座っていたら、
隣に座った人が『貴方は何をなさっている人ですか』と聞いてきたので、
『画廊をしてます』と答えたら、『それは良い仕事です』と言われて

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表参道日記-4: インタビュー、その1

私がインタビューを苦手としている理由はおそらく、「聞きたいこと」を思いつかないからである。
よく、講義などでさっと手を挙げ、鋭い質問をして「おっ、今のはいい質問だねえ!」などと言われる人を見かけるが、本当に頭がいいのだろうなと思う。
私は、子供の頃から今に至るまで、授業でも面接でも、一切「いい質問」を思いついたことがない。
興味や関心がないのかというと、そんなことはないのである。
むしろ、その場の

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表参道日記-3: ギャラリーオーナー・村越さんと、同潤会アパートのこと。

ポスターを買ってから、何度か、ギャラリーを訪れる機会があった。
いつも応対してくれるのは渡部さんであったが、ある日、ギャラリーのオーナーである村越美津子さんにお会いすることができた。
村越さんと渡部さんと、もう一人、お客さんが丸いテーブルを囲んで話し合っているところに、私は行きあった。

奥の展示台に本が何冊か置いてある。
そこに「桃紅」というタイトルの、芥子色の本を見つけて手にとった。
書家で版

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表参道日記-2: みすずの本と、加藤さんのこと。

表参道ヒルズの坂の、一番高いところにある、古い建物。
この建物にエレベーターはない。
真ん中に階段が据えられ、各フロアの踊り場の両側にドアがあって、ギャラリーや雑貨屋、眼鏡屋などが営業している。
一番上の三階までのぼった左側のガラスのドアが、ジャコメッティのポスター展を開催している「ギャルリ・412」だった。

ここに入ろうとすると、一見して奇妙な事に気づく。
ドアの中に、もう一つドアが見えるので

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表参道日記-1: 芝生の壁と、表参道ヒルズのこと。

発端は、表参道である。
私は今では日がな一日部屋の中で仕事をしていて、ファッションや素敵グルメなどには全く縁がない。
「おしゃれ」の世界からはるか遠く、女の世界の外側で暮らしてきた。
だから、表参道をぶらつくような習慣はないのだが、実はこの表参道を始終、往復していた時期がある。

20代後半から30代前半にかけて、私は恵比寿のとある会社でアルバイトをしながら、星占いの記事を書く、という生活をしてい

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