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味処酒房なかむら

炎天下でも東京に比べれば格段に過ごしやすい、7月の札幌の街をてくてくと歩いていて、おや、こんなところにいつの間にかC◯ACHのショップが。

札幌もしばらくご無沙汰してるうちに随分お洒落になったもだと、ふらりと用も(縁も)ないのに思わず入り口に入ってしまった。

とたんに新型のレプリカントみたいな綺麗なお姉さんがこちらを足元から頭のてっぺんまで即座にスキャンして、身に着けているもののおおよその価格をバーコードスキャナーのように読み取った結果、どうやら彼女にプログラムされた判定では顧客としてハイレベルの対応する価値を認めなかったようで、脳内プルダウンメニューで10段階のうちかなり下の方の対応であろう選択をして、ニコリと「ごゆっくりご覧になって下さい」と微笑んでどっか行ってしまった。

最近のレプリカントはよくできてるなー!

と、感激しながら店を出て、札幌に来ると必ず立ち寄るお店へ向かう。


市電の通り沿い、晴れ晴れビルの狭い階段をのぼると、嬉しいことにほぼ年に一度来るか来ないかのワタシを女将さんが覚えていてくれた。
「去年は大きなスーツケース持っていらっしゃいましたよねぇ」と。

そうそう、前回はたしか泊まっていたホテルをチェックアウトして、古本屋の店主の友人宅を訪れる直前に寄ったのだった。

その友人、今年は「札幌に来ているのなら顔を出せ」「というか本を買いに来い」「俺は寿司が食いたい」などと先程からメールして来ているのは気づいていたが、あえて見ないふりをしていた。

いつもは角ハイのワタシには珍しくトリハイ。ススキノだとやはりニッカを呑むべきなのか。まあ気分ですね、気分。

まだ学生時代に、彼が下宿していたおんぼろアパートに夜バイクで遊びに行ってた頃を懐かしく思い出す。
まさに文字通りリアルな一刻館のような佇まいで、当時まだ昭和だったとはいえ、こんなボロいところに住むものずきな住人がいるんだ、と感心した記憶が。

管理人さんのいない(いや多分管理人さん自体はいるんだろうけど)一刻館に、一体どんな存在価値があるのか、ということについて朝まで語り合ったというか怒鳴りあったというか、一晩中呑んだくれて騒いだなあ。

不思議なことに本やらなにやらわけのわからないもので足の踏み場もないような四畳半に、それでもどっかの学校のサブカル女子大生みたいなのがいつも何人かはたむろしていた記憶が。

そんな学生時代の思い出話を、わりと話し好きの女将さんとしばらくおしゃべりする。


なかむらさんと言えば揚げ物の「若鶏の半身揚げ」とか「特製とんかつ」が何と言っても名物で絶品の品なのだけれど、とても一人で食べきれる量ではないので、この夜は泣く泣くパス。いつになるかはわからないがまた次回に。



カウンターの隅に置かれたデジタルフォトフレームで五月の連休に撮影したらしい犬の写真や店内の写真のスライドショーを眺めながらにごり梅酒をロックで。


やはり生まれ故郷はいいもんだ。

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