おばんざい きょん
和服に割烹着の若い女将がひとりで切り盛りするカウンター数席だけの小さなお店。
ここに来る常連さんは、みんな純粋に女将に岡惚れしてるといった雰囲気で、割とクールビューティ、というか結構あたりがキツそうなまなじりの彼女の言うことを、素直にうんうんと聞いている。
飲み仲間の、割とお役所でもハイクラスな役職にある方々がこのお店のカウンターに付くと、みんな揃ってお行儀良くしてるので、それを見てるのが楽しい。
泥酔したりもしないし、酒をこぼしたり、皿やお猪口をひっくり返すような粗相はしない、みんな背筋をピンと伸ばして座っている。
普段の酔っ払った姿とのギャップを感じてクスクス笑ってると、何笑ってるんですか?と女将が綺麗な眉を上げてこっちを見てるので、しゅんとして「いえ、なんでもありません」と小さな声で答える。
多分、この女将は例え酔っ払って粗相をしたとしても、キツく叱られつつも、結局は優しく面倒見てくれそうな、そんなアンビバレンツな魅力があるのだと予感。ま、怖くて試してはいないが。
などと思っていたら、絶妙なタイミングで、ツレの飲み友である某役所の総務部長が、酔っ払ってそば米汁をカウンターで豪快にひっくり返すという惨事に。
これは流石に修羅場かなぁ、と思ってたら、やはり女将は優しく、もう、しょうがないわねえ、火傷してない?などと子供を相手するような苦笑いで後始末してくれていた。
凄いなあ、これはマジ惚れるわ。
カウンター上に並ぶ大皿のおばんざいと、女将の若い割には渋い日本酒のチョイス。
これを心ゆくまで味わうお店。
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