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荒野の探偵

 その男は寂れたバーの扉を押し開けて現れた。
「水をくれないか」
 男はイギリスなまりで言う。それが癇に障ったのだろう。今、イギリス人は荒くれガンマンと向かいあっている。決闘だ。
 両者の間に乾いた風が吹き抜ける。バーの店主が思わず唾を飲む。そして緊張が張り詰め、張り詰め……弾けた瞬間、両者はほぼ当時に銃を抜き、銃声が三度鳴り響く。
 ガンマンは目を見開き、地面に銃が二丁落ちる。
「てめえ、なんで」
「両利きかわかったって?」
 イギリス人が微笑む。
「肘さ。始まりは両肘が赤ばんでいたことだ」
 イギリス人は語り始める。自身の考えを堂々と披露する様はまるで探偵のようであり、「初歩的な推理さ」としめくくるとガンマンは、
「ハハ、ハハハ!」
 愉快そうに去っていった。
 店主がイギリス人の元へ歩み寄る。
「ははあ旦那、見事な腕前ですな。名はなんと」
「ホームズ」
 イギリス人は帽子をとる。
「シャーロック・ホームズ。探偵……いや賞金稼ぎさ」

【つづく】

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