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ラブレター

たった三秒で終わった出来事でも
それがもし永遠に記憶に残るほどのものなら
それは永遠より長い

ー「20代で得た知見」より抜粋ー

たった80年。私たち人間が生きていけるだいたいの命の長さ。残念ながら永遠はない。あなたも私もいつか必ずこの世からなくなり、きっと最後はこの地球もなくなります。もう一度言います。永遠はない。けれど永遠であればいい、と思える幸せな瞬間はある。

生き甲斐よりも、死に甲斐のある人生がいい。この人に看取られたい、とそう思える人と一緒に生きるのをお勧めします。この人のいない世界なら生きていたくない。死の間際、この人に愛していると言われたい。そんな人と出会ってください。永遠であればいいと、そう思える瞬間を与えてくれる人と生き、そして永遠であればいいと感じた瞬間をなんどでも語り尽くす。それはもうほとんど永遠に近い。

もちろん、そんな人と出会えたらの話し。さらにはそんな人と愛し合う事ができたらの話し。そんな人と愛し合う人生のために、すべての時間を使うべきだと思う。嫌な事は嫌だと言えばいい。嫌な事に時間を使うほど人生は長くない。

あなたを好きで、好きで、大好きで仕方ない私を、ここにそっと、残しておくよ。いつか同じ家で、笑ってこれを読むふたりになれますように。2人の最後がハッピーエンドでありますように。これはただの、あなたへの愛の殴り書き。永遠に続くあなたへのラブレター。


東京の専門学校。ひとつ年上のあなた。とにかく最初は見た目が大好きだった。日本人離れした顔立ち。目頭からスッと伸びる高い鼻筋。目力、しっかりした輪郭。一目惚れ。異性を見た目で好きだな、なんて、そんなのは人生初めての経験。けれどこんなチンチクリンは相手にされないだろうし、見て楽しむだけ。

なんとなく、しゃべるチャンスがきて、連絡をした。2人で話すあなたはどんな人なんだろう、ってワクワクしていた。最初のメールは随分と壁を感じて、やっぱり相手にされないか、そりゃそうか。当たり障りのない返事で、でも文面から伝わってくる優しい言葉選びがいいなと思ったことだけは覚えている。

2008年4月24日、初めての2人きり。
原宿でご飯を食べて、手をつないだ。手おっきいね、って手のひらを合わせる、よくあるシーン。そのまま繋いだ手。自分の心臓の音があなたに聞こえてしまう気がした。明確にこの人が好きだなと感じた日。話す速さも、内容も、相槌も、初めての2人きりなのに、違和感を感じない人。

終電を逃して漫画喫茶。ゲームでお腹抱えて笑った。クールなあなたと、無邪気なあなたを知って、ああ、どうしよう、めちゃくちゃ好き。あなたの顔と匂いに、抗えず自分からキス。こんなに恥ずかしくて、照れ臭くて、嬉しいキスは初めて。好きが溢れるってこういう事か。あの日があなたを愛したすべてのはじまり。

長い髪の隙間からみえる高い鼻
照れたように少し伏し目で笑う仕草
嬉しいときは少しあごをあげる癖
隣に立つと見上げないといけなくて、キスが遠い
わたしと同じ柔らかい肌、柔らかいくちびる
少し猫背、長い指、目の下のホクロ
半分ずつのイヤフォン
SNSの匂わせ日記、足跡のつけあい
穏やかで落ち着いたしゃべりかた
別れ際のキス キス キス
心臓にひびく低い声
あなたがくれたRADWIMPSの心臓
月が綺麗だね、と言ってくれる優しさ
あいしてるよ、と言ってくれた20代のあなた
あなたが呼ぶ名前はいつも特別に響く

多摩川沿いを2人で歩く。歩幅はあなたのほうが大きいのに、あなたは私の少し後ろで嬉しそうに私が歩くのを見ていた。川沿いのレストランでパスタ、ラーメン屋のにんにく。ジャックダニエルとタバコ。教室で隠れてするキスと隠さないキスマーク。借りたリング。

ダーツをする姿が大好きだった。こんなにずっと見ていたくなる人は初めてだった。横顔が綺麗。異性にも芸能人でも、そういった感情が湧いたことがない。良くも悪くも、みんな普通。

夜の公園。ブランコに乗りながら友達を待つ間もすぐにキスをしてくる。結婚しよう、とよく言ってくれた。私といるときのあなたはいつもいつも嬉しそうな表情で、あなたに見られてるわたしはなんだかとても可愛い生き物のように思えた。

朝に帰る電車。分け合うイヤフォンは恋の代名詞だ。何を聞いていたのかは、もう覚えてない。全部覚えていられたらよかったのに。私があなたのリングをつけたり外したりしていると「持っていく?」と言ってきた。そんなに嬉しそうな顔をしていたのかな。借りたリングはとても大きい。1日中眺めていたよ。いや、たぶん3日ぐらいは借りていたから3日中眺めていた。さよならの時、あなたは必ずキスをする。電車の中でもキスをしてから降りていった。電車に残された私の恥ずかしさなんかおかまいなし。そういう所も大好きだった。

みんなで友達の家に向かう道。嫌な内容の電話で、私が落ち込んでいたら、あなたはすぐに気づいてくれた。どうしたの、大丈夫?といつも本当に私をよく見てる。好きが増すたびに、不安が増した。こんな素敵な人は、きっと沢山の人にその言葉をあげてきたんだろうし、沢山の人に愛されてきたんだろう。私の愛し方はあなたに合っているのかな。私は沢山の女の子の1人にすぎないんだろうってものすごい嫉妬を抱えた。この嫉妬をぶちまけたら、きっと困らせてしまう。重いって思われる。そしたらこんなに好きでいてくれなくなるかもしれない。

体調が悪くて学校を早退する私を雨の中追いかけてきてくれた。心配なんてメールで済むのに、嬉しくて、それが苦しい。他の人にもこんなに優しいのかな。今までの人にも優しかったのかな。あなたの優しさに甘えるのが悔しくて「大丈夫だから、戻っていいよ」と突き放した。あの少し上り坂の道は卒業するまでその場面を何度も、繰り返し私に思い出させた。

だんだんと、好きで幸せ、よりも嫉妬で不安が多くなり、答えを出さなきゃいけない気がした。さよならの電話。よくわからない理由を並べて。好きなのに、さよならをした。

いつか嫌われるのが、怖くて
好きでいてもらう、自信がなくて
勝手に嫉妬でイライラして、苦しくて
ぼんやりと続けていけるほど器用でもなくて
切り離せない、いろんなものがあって
私が選んだのは、ただの慣れだった

振り解いた手、顔を見てしまうと流されてしまう気がして向き合えなかった。あなたの少し近くを選んだ一人暮らしのアパート。どこかに可能性を残そうとするずるい自分。大好きな顔、笑い方、優しい言い方、名前の呼び方、ぜんぶぜんぶ大好きなのに。


あなたにもすぐに別の人ができて、その時にぷちん、と小さく弾けてしまった。苦しい、つらい。私だけのあなたでないのなら、忘れよう。

ほら、私じゃなくてもいいんだ。
誰にでも、優しいんだ。
あなたなら誰とでも、幸せになれるよ。
かっこよくて、愛情深くて、まっすぐな人。
あなたに幸せにしてもらえる人が羨ましい。

電話で彼女の話しをするあなたに、腹が立った。そんな資格がないのはわかってる。私のほうがいいんだよ、とあなたは言った。それならなんで付き合ったの。自分の感情をどこへやるのが正解なのかわからない。

私は、私だけのあなたでなければ、嫌なの。
初めて本気で好きになった人だった。
あなたが本当の、初恋だった。


最後の電話で優しく傷つけ合った。私以外に優しくするあなたなんて大嫌い。私以外と付き合っているあなたが大嫌い。大好きだから、大嫌い。卒業後の何度目かのあなたの電話に、私は不機嫌を貫いた。

「普通に電話することももうできない?」
「別にもう好きとかじゃないよ」
「元気かなって気になって電話しただけ」
「そんなに嫌ならもうかけない」

不機嫌な私にあなたは怒っていた。あの日電話を切ったあとに、下北沢駅のホームで泣いていたのは私です。「本当は、大好きなんだよ」「ずっと私だけを好きでいて」「私以外、好きにならないで」って、なんども口からこぼれそうになった。あなたの声が聞こえる間、呪文のように頭の中を駆け巡る。けれどまたあの不安や嫉妬で押し潰されたくなくて逃げた。そのほうが楽だった。あなたの事をなんとも思っていなければ、普通の友達になれたかもしれない。私が不機嫌なのはあなたを大好きだったから。

後にも先にも、あなたのような人とは出会えなかった。私の話をちゃんと聞いて、私をちゃんと見てくれる人。ありがとうと、ごめんねを言える人。言葉を雑に扱わない人。私を愛する才能のある人。あなたとさよならをした後にあなたの顔によく似た芸能人を好きになった。好きな顔のタイプは?って聞かれていつもその芸能人を言っていたけれど、もとを辿ればあなたに似ていたから好きになったんだろうなって。それは誰にも言えなかった。

人生のどん底でも、あなたのその温かさが私をなんども救ってくれた。誰かに大切にされなくても、誰にもわかってもらえなくても、怒りを暴力的にぶつけられても、頑張る事に疲れても、何のために頑張っているんだろうって全てを投げ出したくなっても。いつも、大丈夫?と私を気にかけてくれる人がいたこと、私をまっすぐ愛してくれてた人がいたことは、私の最後の砦だった。それと同時になんども思った事。あの夜、あの手を振り解かなかったら。あの電話で本当は好きだよと、言えていたら。

もう少しだけ、長くあなたの側にいたかった。信じてあげられなくてごめんなさい。素直になれなくてごめんなさい。もっと気持ちをぶつけていたら、きっとあなたは受け止めてくれたはずなのに。逃げてごめんなさい。あなたの幸せをずっと願っているけれど、私はそれを絶対に見れない。見たくない。出会ったときから、ずっと片想いをしてる。

それから何年もの間、辛い事があるとあなたを思い出して、あなたの夢をみて、なんども連絡をしようとして、何度もやめた。まだ好きだった。その気持ちは墓場まで持っていくつもりでいた。

あなたとさよならをして、10年以上がたった日。墓場に持っていくはずだったそれを、占い師のおばさんが言い当ててきた。

1番好きな人がいる事。その特徴も、血液型も、どれくらい前の人かも。いい当てた。そんなのはもしかしたら当てずっぽで、だいたいの女性には忘れられない人がいるだけかもしれない。けれど細かい特徴を言われるとまんまと信じてしまった。「これはね、放っておくと後悔するよ」はっきりと言われた。あなたは先祖に護られてる、大丈夫と。私は一体、これ以上なにを後悔するんだろう。

その占い師の言葉はずっと残ったまま、しばらくしてふとあることを聞きたくなって、思い立ってすぐにあなたにメールを入れた。15年ぶりに。なにかを期待したわけでもなく、本当にシンプルに、今なら連絡できる気がすると思った。覚えていない可能性もある。返事がなくても、きっと傷つかないくらいに思えた。そして返事が来たのは奇しくも15年前、最初のキスをした日と同じ4月24日だった。



私は死ぬ前にたった1人で好いから
他(ひと)を信用して死にたいと思っている
あなたはそのたった1人になれますか
なってくれますか
あなたは腹の底から真面目ですか

ー「こころ」より抜粋ー


夏目漱石のこころ、にそんな事が書かれている。なんて傲慢で他人任せな言葉だろう。けれどとても人間らしいと私は思う。あなたを信用しているよ、という無償の愛とはかけ離れている。どうか信用させてくれ、と願うのは当然のような気がする。

変わらないでいてほしい、嘘をつかないでほしい、傷つけないでほしい、裏切らないでほしい、嫌いにならないでほしい、離れていかないでほしい。
そんな当たり前のことを願うのは傲慢ですか。


あなたから返ってきた15年ぶりのメール。最初の頃と同じ、当たり障りのない返事。けれど最初のその一通で、ああ、変わってない。そう思った。

もう時効だと思っていたあなたへの思い。
「変わらないね」とあなたが書いたそのメール。
なんだ私まだこの人の事全然好きだ。自然と顔が緩んだ。変わらないのはあなただよ。優しい言葉選びも、気遣いも、数通のメールで伝わってくる。一体どんな表情でそのメールを書いているんだろう。

あなたは覚えてくれていた。私にくれた心臓の歌も、多摩川沿いのレストランで食べたパスタも。たった2か月の思い出を私たちは語り尽くす。

長い間、願い、伝えたかったことがある。

私との思い出を忘れないでほしい。
だれよりも幸せになってほしい。
あの頃、大好きで仕方なかったんだよ。
傷つけてごめんなさい。
愛してくれてありがとう。

あなたの優しさが、あなたを傷つけませんようにとずっとずっと願っていた。

「来世では一緒になれるかな」
そんな寂しい事言わないで。だめだ、やっぱり私はこの人が大好きだ。ずっとずっと、好きだったんだ。あなたがいない間の私は、ずっと泣いてた。誰も彼もあなたほど好きになれなくて、全然上手くいかなくて。傷ついていつもボロボロだったの。けれど、たった2か月の思い出が、私を沢山沢山守ってくれていた事なんて知らなかったでしょう。あなたが私に与えてくれたものは、それほど温かいものだったんだよ。

久しぶりの電話。昔より少し声が低くなった気がした。けれど名前の呼び方も笑い方も変わっていない。大好きだった、その呼び方はあなただけのもの。

電話の最後の愛してるは、大人になった今のほうがやたらリアルで恥ずかしくなった。あの頃の私たちはなんて可愛いかったんだろう。

新宿での再会。心臓はなかなか鳴り止まない。このまま壊れてしまうんじゃないかってくらいに鳴っていた。思い出は美化されるといわれているから、ほんの少しだけ躊躇もした。あの頃、叶えられなかった気持ちがあるから今も好きだと思わせているのかもしれない。だってあんな素敵な人が、自分を好きでいる現実はどこか夢のようで。ただ夢を、みさせてくれているだけかもしれないと。より深くあなたを知ってしまったら、苦しくなるんじゃないか。私に慣れてしまったら、変わってしまうんじゃないか。私を支えてつづけていた思い出さえも、悲しいものになってしまうんじゃないか。そんな不安もあった。

見た目から好きになった恋だったけど、「あなたが1番」であり「あなただけ」がたくさんある。わたしはあなたの心がすきだった。わたしにはない強さをあなたは持っている。

なんどもなんども思った。ずっと会いたかった人が今、目の前にいる。手を伸ばせば届くところにいる。もう会う事はないと思っていた大好きな人。あの日振り払った手が、私の手の中にあった。

大人になったあなたは昔よりも色気があって、相変わらずの大好きな顔で、表情で、変わらない温かさがあった。私の心の中にはまたしても強烈な嫉妬心が芽生えた。無理かもしれないという諦めを抱えたくらいでないと、私は私でいられなくなる。やっぱり少し苦しい。

抱きしめたときのフィット感も、触れたところが痺れるような幸せも、愛したくて愛したくてたまらなくなるこの気持ちも、やっぱりあなただからだった。穏やかな優しい喋り方は私を優しく包んでくれる。あの頃と変わらない、大丈夫?も。すぐにごめんね、と謝る癖も。全て大好き。変わらないでいてくれてありがとう。私を好きでいてくれてありがとう。

人を愛するってこういう事だった。信じたいと、思わせてくれる人だ。裏切られてもかまわないと、思える人だ。ずっと見ていたくなる人だ。抱きしめると不安がなくなる人だ。しあわせにしたいと思う人だ。2人でいる空間はひたすらに優しくて、穏やかで、自分をやっと好きになれる気がした。

それでも、どうしても、大好きの隙間に不安がいる。嫉妬がいる。そんなときはほんの少しだけ、あなたを好きではなくなる。怖くなるの、相手が変わってしまうのをみるのが。それならいっそ自分から手放したくなるの。私は愛し方がものすごく極端で下手くそなんだろう。あなたみたいに、愛せたらいいのに。

ライブハウスから出てあなたを待っていると、颯爽と自転車で迎えに来てくれた。急いでくれたのか、少し息が上がっていて、その姿が愛おしかった。昔、雨の中追いかけてきてくれたあなたを思い出して、私はあなたを思い切り抱きしめた。


「生まれてはじめて」と
「最初で最後」の
「一生一代」がきみでした。

嫌われたくないと思うのも、嫉妬で苦しくなってしまうのも、愛情が目に見えて触れられるものだという事も、あなたから知ったよ。こんなに人を愛するのは、この先の人生にはない。あなたが望むのなら、わたしの残りの人生はあなたと共にありたい。

同じ本を読んで同じ映画をみたね。ずーっと手を繋いでいたね。美味しいもの沢山たべたね。2人であるく多摩川が大好き。あんなに優しい時間はきっともうない。満月の日にはわたしを思い出してね。疲れた日には、「たあくううううううん」って笑ってるわたしを思い出してね。RADWIMPSの心臓も、あいたいも、告白もラストバージンも、斉藤和義のウエディングソングも、清水翔太の花束の代わりにメロディをもわたしだけの歌にしてね。肌と肌が触れ合い溶け出してしまうような、あの感覚を忘れないでね。飛んでいった毛玉に大笑いした事も、抱きしめながらみた遠くの打ち上げ花火も、愛おしいが溢れる目線も、2人だとなんだかうまくいっちゃう小さな奇跡も。どうか忘れないでね。あなたと一緒でなければ、イチョウの新芽があれほどかわいい事を知らずにいたでしょう。カラスにゴミをもっていかれちゃうのも。2人でいるってそういう事なんだよね。


大好きな人に大好きだと言える事。大好きだと、思ってもらえる自分。抱きしめて、匂いをかいで、生まれてきてくれてありがとうと、思える事。綺麗なものを、綺麗だねと言える事。美味しいものを一緒に食べたいと思える事。あなたが隣にいるだけで、世界が優しく見える事。この人と、人生を終えたいと思う事。我儘に生きてみようよ。それが許されるくらいには、沢山頑張ってきたんだよ。

つらい時は思い出して。あなたが今これを読んでいるとき、この瞬間も私はあなたを大好きだよ。あなたは世界中でいちばん素敵な人だよ。あなたが自分でだめだと思う所すべて、愛おしいよ。すべて、笑って、だいすき!と伝えるよ。

きっとあなたとわたしなら、四六時中キスをし合って、あなたの背中を見れば抱きしめにいって、一緒に沢山の料理をつくってお腹まんまるになるくらい食べて、それでも夜中にお腹がすいて、コンビニに行って散歩しながらアイスを食べて、歌を歌って下手な踊りをしながらかえって、寝る前にマッサージをし合って、眠りにつく前に今日1日のありがとうを耳元でささやいて優しい気持ちで眠りにつくの。あなたが寝落ちしていたら、その顔をみながら何て素敵な日なんだろうって信じてもいない神様に感謝するの。そして朝起きたら愛おしい寝顔にまたキスをして、嫌な事があった日にはよしよししてあげて、かっこいいね、かわいいね、すごいね、えらいね、って褒めあって。たまにのデートは、わたしが行きたいところ食べたいもの沢山詰め込んで、あなたを連れ回して、迷子になって、日々の写真を沢山撮って、飾って。ちょっと喧嘩して私が「探さないでください」って出ていったのに、なぜかあなたのほうが多摩川にチャリで先回りして待ってたりして。相手の気持ちを思いやって、大切にし合って、あなたの代わりにわたしが怒って、私の代わりにあなたが怒ってくれる。お互い怒りすぎて「もういいよ〜大丈夫だよ〜」って笑い始めたりして。あなたのちょっとした事にわたしは笑い転げて、またキスをして。当たり前の日々が愛に満ちていて、なんでもないことが全部宝物になって、あの頃は大変だったねえってまた思い出話しを沢山して。世界中の誰よりもしあわせなんじゃないかって、「今日が1番しあわせ」を毎日更新していくような日々がふたりなら作り出せてしまう。そんな事を思えるくらいわたしたちはいつも一緒にいる時間がしあわせだったと思う。


あなたは、私が苦しむことが納得いかない、と怒ってくれる。俺の愛情で守られてるからね、と何度でも何度でも私の心を救い上げてくれる人。私を愛するために生まれてきたんだよって、そう言ってくれて、ありがとう。

来世は期待しないで。この人生は、あなたとわたしで出会える、たった一度の人生なんだから。どうかしあわせになる事をあきらめないで。あなたの心を無かったことにしないで。

月が綺麗だよと話したい人は、あなただけなの。綺麗な景色をみせてあげたいと思うのも、あなただけなの。美味しいものを食べた時、あなたにも食べて欲しいなと、そう思うの。

あなたはわたしがいなくなった世界で、誰にそれを伝えたいと思うんだろう。未来を思い描いたとき、あなたは誰に抱きしめて欲しいと思うんだろう。人生最後の日にあなたは誰の笑顔をみたいと願うんだろう。だれがあなたを、その細胞全てを、愛するのだろう。

いつもの、私が大切にしている言葉をあなたに送るので、忘れないでね。「大事なことは、たいていめんどくさい」私の人生のたったひとつの後悔は、「めんどくさい」から逃げて慣れや、楽な方を選んでしまったあの時の自分。人生最後の日に人は大なり小なり、少なからず後悔をするよ。それでも死の間際、たった1人の愛する人間に「愛しているよ」と言われたなら、その人生はとても素敵なものだったと言えると思う。その愛する人がわたしにはあなたです。



聞き分けのいいはちゃんの願いは、あなたが毎日しあわせだなあ、と思える未来になりますように。世界で1番しあわせになりますように。つらい時につらいと言えますように。眠りにつく前に明日が楽しみでありますように。朝起きた時に誰かを愛せていますように。そんなしあわせな人生であってほしい。あなたの優しさが、あなたを苦めることがありませんように。あなたに、しあわせになって欲しい。そこに私がいなくても大丈夫。


けど、わがままなはちゃんの願いは、もしわがままを言う権利があるのなら。もし願いが叶うなら。たった一度の人生、わたしはあなたと生きてみたい。そしてこの人生が終わるときは、あなたが隣にいてほしい。わたしが悲しいときに抱きしめてほしい。あなたが悲しいときに抱きしめてあげたい。大切にされなくて、誰も信用できなくて、嫌だと言うことも許されない、ゴミみたいだと思ったこの人生も、あなたがいると宝物のように思えた。本当は叫びたいよ、どうか私の人生から、いなくならないで。



どうしてみんな私なら大丈夫だと思うんだろう
どうして私なら傷つけてもいいと思うんだろう
どうして私が怒らないと思うんだろう
どうして私は頑張ろうとしてしまうんだろう

きっとこの結末はいつものようになるよ
それはなんとなく分かっている
それでも思ってしまっただけ
あなたの最後の人になりたかった
たったひとりに愛し愛される人生があると
そんな素敵な出来事が私にもあるような
そんな気がしてしまっただけ


たぶんわたしはこの世界に合わない、この世界にいらない、わたしの感性なんて、ただ心が弱いだけ、気にしすぎって言われつづけてきた、その通りだと思う。思い描いた愛はきっと存在しない。なのに思い出がしあわせすぎて、目を覚ますのもつらい。

あの本を読んだ時わたしの声があなたにだけには、届いたんじゃないかと思ってしまった。でも実際は大きな声や多数の声にかき消されてしまう。今までもずっとずっとそうだった。

ごめんなさい。つらい結末を知る力がわたしにはもうないです。乗り越えるなにかも、もうないです。本当にごめんなさい。あなたは、わたしじゃなくてもしあわせになれるらしい。あなたは、わたしがだれかとしあわせになってもいいらしい。キスもぎゅーも愛もわたしはあなたが最後の人であってほしい。


思い知らされるのは怖いの。やっぱり人の心は変わってしまうんだと。相手が怒らないからって言葉のサンドバッグにされることも、嘘をついていい相手だと思われることも、理解できない感情を存在しないものにされる事も。あったはずの心がなくなっていくのも。とてもかなしくて。

「もしも寝言だったら言ってね、またさみしくなるから」あの歌のように。離れてしまう可能性がほんのわずかでもあなたの中にあるのなら、嘘をつくという選択肢があなたの中にあるのなら、他の誰かと迷うくらいなら、いっそ私を忘れてほしい。最後がとてもさみしくなるから。

失う怖さから、逃げてしまうのはわたしの悪い癖だね。だからさよならしようか、なんて言葉が出てしまう。わたしじゃなくてもしあわせになれるのなら、わたしはとっとといなくなる。あなたが選びたい未来を選んでいいの。わたしは自分のためにあなたを縛りつけるほど強くはない。これは優しさなんかじゃなくて、選ばれる自信がないから。ただ、しあわせになってほしいの。しあわせになるべき人だから。

そのときは、悲しむ必要も罪悪感を感じる必要もないよ。どうか何ひとつ残さず、綺麗に、わたしを忘れて。そしてどうかしあわせでいて。






さよならをして2日目に。あなたが電話してもいいですか、と送ってきたとき、とうとう首をきられるのかなと思ってしまった。さよならの決定打を言い渡されるのかなと。だから平気なふりで電話をつなげた。ああ、15年前は心で叫んでいたっけな。わたしだけをすきでいて、離れていかないで、と。わたしは何も変われなかった。そんな事を泣いてわめいても、あなたを困らせるだけなら、聞き分けのいいわたしでさよならしてしまいたい。

そんな覚悟をきめたのに、電話にでると先に泣いたのはあなただった。あなたはいつも私の想像を超えてくる。ご飯も喉を通らない2日を過ごしても、わたしはあなたに離れていかないでと言う事ができないというのに。あなたのまっすぐな愛にわたしはいつも救われてしまうの。

あなたのいない未来を、わたしは生きれる気がしなかった。わたしの人生のどこを探しても、あなたがいる今よりしあわせな瞬間は見つからない。

わたしとの未来を思い描いてくれたり。
わたしの大切なものも大切に思ってくれたり。
すごいね、ってほめてくれたり。
わたしに触れてないとそわそわしちゃったり。
そんな人が日頃はクールなお兄さんで、落ち着いていて、頭がよくて、真剣な顔も緊張している顔もぼーっとしている顔も、とけてる顔も大好き。あなた自身はきっと気づいていないような小さな小さな気づかいとか。あなたがもっている独特の時間の流れ方、すべてがあなただけにしかないもの。わたしと連絡ができないのはつらいって、泣いてしまうところだって大好き。ねえ、知ってる?あなたはいつでもなんでも「いいよ」って言ってくれるけど、唯一わたしと離れる事だけはちゃんと「嫌だ」と言えるんだよ。

あなたの大きな大きな愛情は、わたしの独特の感性にとても合うみたい。触れるところすべてが心地よくて、ぴったりで。外見はこんなにちがうのに、抱きしめるとひとつに溶けてしまいそうになる。離れてる時のほうが違和感を感じるくらいに。

まだぎこちない未来だよ。だけど間違いなく、人生でいちばんしあわせなの。愛おしい人に、愛される。同じ熱量で、同じ優しさで、同じくらいに。あなたといるとしあわせな未来を想像できるの。大丈夫、想像できる事は叶えられるものなんだよ。

わたしたちはあの頃のように、また少しだけ間違えてしまう。言えない言葉が沢山あった。全問正解はむりでも、答え合わせをしていこう。わたしたちにさよならは向いてないでしょう。愛し愛されるこの奇跡を前にして、何も感じない世界に戻る事はもう不可能なの。

一緒に沈んで、一緒に浮かんで、
そうやって一緒に生きてみませんか。

どうか、ふたりの関係がふたりにしかわからない理由で続くといい。

くだらない事を一緒にしたくなるのも、あなたの話しに息ができないくらい笑ってしまうのも、それはただ、愛があるからで。大事なのは綺麗な花火ではなく、その夜にあなたがいる事で。


何度も、何度も間違えそうになるけれど、わたしたちはお互いの心臓だよ。生きていくために必要な柔らかく、繊細で、当たり前すぎて見失いそうになることもあるけれど。手を当てればちゃんと聞こえるもの。

人生にたりなかったもの。愛する人に愛される世界は、こんなにも素敵な日々で。苦しい日も、むずかしい日も、つらい日も人生には必ずあるけれど、あなたがいるのと、いないのとでは世界が変わるらしい。


「ふつうの毎日に、いてほしい」
そう言ってくれたあなたの気持ちがよくわかる。

あなたがいるとしあわせ、は当たり前で。
でも、それ以上にね、
あなたがいないと、だめだったの。



外側は真逆で、内側は同じ。わたしたちはきっと、ずっとお互いを必要としていたんだろう。足りないものを補いあって、理解されないなにかを理解し合って。少し狂ったこの世界で、ひとりぼっちにさせないように。

素直に、勇気をだしてくれてありがとう。わたしはまた、あなたに美しく敗北したみたい。




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