【感想】 『地面師たち』
『地面師たち』Netflixで2024年7月25日に配信がスタートした日本の配信ドラマ。この作品は、新庄耕の小説を原作に、不動産詐欺を行う「地面師」と呼ばれる詐欺師たちの犯罪を描く。
地面師とは、他人の土地の所有者になりすまして、その土地を売ると偽り、多額の代金をだまし取る詐欺師のこと。
このドラマは、2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにしており、約55億円の被害を出した詐欺事件をもとに緊迫感あふれる物語が展開される。
久しぶりに一気観したNetflixのドラマ。やはり、予算の掛け方が違うためかクオリティーが高い。1話につき1億円の予算らしい。
ドラマの冒頭3分でこのドラマのテーマを表現しきっているのがわかる。
本ドラマの主要キャラ、ハリソン山中が白人たちと一緒に広大な土地(おそらくアメリカ)で馬に跨りながら、ハンティングしているところから始める。ハリソン山中は、せせこましい日本では狩なんて楽しめないんだよと愚痴をこぼし、自分は「地面師」という仕事をしていると語る。そして、突如現れた獰猛な熊を全く怯むことなくライフルで撃ち殺す。
象徴的に原住民をライフルで撃ち殺し、土地を奪った歴史ある場所からこの物語が始まる。そして、その狭い日本の土地を求めて群がる人間をターゲットに詐欺を働き、大金を騙し取るという狩を楽しんでいるのがハリソン山中をリーダーとする「地面師たち」だ。
ドラマ内で「人類の歴史は早い話、土地の奪い合いの歴史です」と言うセリフがある。白人たちと一緒に狩を楽しんでいる日本人、ハリソン山中にこのセリフを言わせているところが面白い。山ばかりでほとんど土地がない狭い日本で、この土地の奪い合いの戦争物語を見ることができるのがこのドラマだと思う。
正直、21世紀はもう物理的な土地を奪い合うような争いは終わっていたと思っていた。しかし、現実問題、今も戦争が世界各地で起きている。案外、平和な国とされる日本でも、土地を奪い合うと言う戦争は形を変えて続いているのだなと気付かされる。事実、北海道の土地は海外の人間に買い漁られている話はよく聞く。
さすがというか、このドラマの原作者、新庄耕は2024年7月、続編『地面師たち ファイナル・ベッツ』が集英社から刊行されており、海外に逃亡したハリソン山中が、シンガポールで新しい地面師詐欺チームを結成し、北海道・釧路での200億円不動産詐欺に挑む話を書いている。
ぜひともこの続編の映像化をしていただきたい。