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ヒガンバナ


奈良県・明日香村の橘寺門前にて。

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9月下旬のお彼岸の時期(9月20日ごろ)、田んぼのあぜ道は特徴的な赤い花で彩られる。

ヒバンバナだ。日本全国いろんな場所で、稲刈り間近の田んぼのあぜ道に咲き誇っている。幼いころから僕は、この派手な花に興味を持っていたけれど、なんとなく怖い感じも持っていた。じいちゃんから、ヒガンバナには触ってはいけない、持って帰って飾ったりしてはいけない、みたいなことを言われて育ったからである。なのでちょっと怖いものという印象だ。

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ヒガンバナは日当たりの良い場所を好む。うちの家の田んぼにはごくごく小さなお墓があって、そこにもヒガンバナが咲いていた。田んぼの真ん中だからとにかく日当たりが良い場所で、秋とはいえまだまだ元気な太陽に照らされて怖いくらいどぎつい赤のヒガンバナ。このように僕のこころに強い印象を与えたのである。


三倍体と呼ばれる突然変異に由来する遺伝子を持っているため、繁殖可能な種子をつけることができない。なのでみんな、意識してか無意識かは別として、誰かによって運ばれ植えられるようになったもの。
ヒガンバナの葉っぱと花が別々なのが印象に残っている。葉っぱはひたすら光合成するだけで枯れてしまうが、そのエネルギーは地下茎にたくわえられ、秋に花を咲かせるのである。花は植物の繁殖器官なのに、ヒガンバナに繁殖能力がないというのはなんとも皮肉である。ちなみにソメイヨシノの花にも繁殖能力がない。なのに、あんなに必死に美しい花を咲かせて僕らのこころをざわつかせる。


ヒガンバナには毒があるとのこと。でも水にさらせば毒を抜くことができるので、どうにも食べ物がなくなったら、飢え死にするよりましなくらいの意味合いで食べることもあっただろう。そして、とても強い植物なので基本的に世話いらず。世話どころか、あぜ道の草刈りで刈られまくるのにしぜんに伸びてきてはびこるほどのパワーを持っているのである。こうして、秋のあぜ道はヒガンバナが咲き連なってできる赤いふち取りになる。黄金色の稲穂とヒガンバナの赤が幼少期の原風景というのは僕だけじゃないだろう。

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