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ひらひら

 あの方の気を引きたくて
これでもかってくらい
ヒップを揺らすんだけど

 あの方はあの人とイチャつくばかり。

 あたしの事なんて
たまにしか見てくれない。

 おまけにあの人が邪魔をするのよ?

 せっかくあの方が近くに来てくれたのに
これ見よがしに
あの方をハグして二人して消えるの。

 ああ、あたしだってハグしたいわ。
やだ、あの方のほうが大きいのに。
 
 あの柔らかそうな手で
あたしを撫でてくれないかしら。
 
 あのぷくっとした唇で
キスをしてくれないかしら。
 
 きっとあの方の髭が
あたしの頬をくすぐるわよね。

 ああ、想像するだけで
体が震えてきたわ。

 あ。
見てるわ。
あたしを見つめてる。
 
 ああ、
なんて素敵な瞳の色なのかしら。

 いいわ。
あなたの為にあたし
精一杯の踊りを魅せてあげる。

 見て!
 ほら!
 ひらひら!
 
 あなたに見つめられて
あたしの体中が熱くなるの。

 見て!
 ほら!
 ひらひら!
 あたしを!

「もう!何やってるのよ!」

 ああ
あの方は
このガラスの檻から
連れ出してくれた!

 ああ
あの方の唇が迫ってきたわ!
待ち望んでいた
熱いキス……。

 遠くから
あの人の悲鳴が聞こえるわね。

 ふふふ。
そんなに……悔しいの……かしら?

 これで
あたしは
あの方とずっと一緒よね?




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