『CFO ポリシー』(柳 良平著)

noteには久しぶりの投稿になる。以前の投稿を確認したところ、主に3年前の入社直前から直後に掛けて投稿しており、読み返していると自身が成しえていないことが浮き彫りになるようで、斯様に日記をつけることの有用性を改めて感じた。

さて暫く更新出来ていなかったが、これから読んだ本の感想などを粛々とアップデートしていくことを再開し、学びを深化させることに致したい。

今回読んだ「CFOポリシー」は伊藤レポート、コーポレートガバナンスコード、スチュアードシップ・コードなど所謂資本市場の昨今の改革に委員として参加し、研究者でありながら、エーザイのCFOでもある柳氏によって書かれている。所謂コーポレートガバナンスについて論じた本は無数にあるが、本書が追随を許さないのは①大企業のCFOあるいは研究者として、仕事をする中で培った投資家とのコネクションを活かしたデータに基づいた議論、②自身のROESGモデルの構築とその実証の二点だと思われる。今回は夫々について、特に印象的であった箇所を取り上げたい。

<データに基づいたコーポレートガバナンス論>

伊藤レポート以降、日本企業のコーポレートガバナンスが欧米対比遅れている旨を説く本が多く出版されている。本書も類書と同じく、メッセージは下記の通りである。

・多くの企業において、利益水準が資本コストを下回っている。(ROE<CoE)そしてROEの低さはレバレッジの低さによるものではなく、主にマージンの低さ、資本効率の悪さによるものである。

・ROEの低さの要因の一つとして、投資に際して、そのリターンを適切にスクリーニング出来ていないことが挙げられる。本来的には設定されるハードルレートなどが一律で良いはずはなく、リスクに見合ったリターンを取ることを意識すべきである。

・日本企業は事業に結びつかない換金性の高い証券を含め現金を持ちすぎである。時価総額から換算すると、日本企業が保有する現金は1円が1円以下に評価されており、つまり適切な投資/還元をしないと看做されていることに他ならない。

・配当についても、横並びで配当性向30%などとしてはいけない。アメリカの平均的な配当性向は30%程度であるが、企業のステージによってばらつきがあり、最もその割合が多いのは無配当である。つまり保有する現金を配当するよりも高い水準で回すことを期待しているベンチャー企業などでは無配当、逆に成熟企業は100%を超える配当すらなされることがあり、配当戦略もその企業に応じた最適な割合が取られるべきである。

上記を全て投資家に対するアンケートを回帰分析することで、その相関性を見ている点が興味深い。特に日本企業が保有する現金100円をいくらで評価しているか(平均で50円強)などはデータを元にしているが故に説得力を持って感じられた。

<ROESG論>

企業価値はまず本来的にPBR以上であるべきであり、それを超える部分が人的資本、知的資本、社会関係資本、自然資本、製造資本の五つにより生み出された価値である。

その中でもESGにMSCIによるESG格付けと資本コストの負の相関関係に関する分析が興味深い。つまりMSCIの格付けが高ければ高いほど、資本コストが下がっているため、ESG関連投資は単なる金食い虫ではなく、企業価値に貢献しているという議論である。これは資本コストが低い優良企業→ESG投資をする余裕あり→高格付けという逆因果の方が確からしいものの、非常に興味深いデータである。

コーポレートガバナンス等は往々にして、観念的な議論に終始することが多いが、斯様なデータがより蓄積されれば、より多くの経営者が自社のふがいなさを実感する契機になり、日本経済の発展に繋がると考えている。

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