見出し画像

#NEWNORMALで聞いた、世界最高峰のプロスイマーが考える新提案

【Report / Interview】
YASU_I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLDディレクター × 塩浦慎理_競泳選手

【Title / Date】
#NEWNORMAL - 2020/12/25 at Grand Prince Hotel Shin Takanawa


「『たった1%でも』未来が変わる瞬間をこの空間から」というメッセージを抱え、サステナブルを意識した空間設計の中で、昨年12月に開催されたイベント「#NEWNORMAL 」。新しいことにトライをする人々が集まったこのイベントに「I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD」が参加し、開催期間中にサステナブルをテーマにトークショーが行われた。ブランドディレクターのYASUとともに対談で登場したのは、競泳選手の塩浦慎理さん。YASUとは10代半ばからの水泳仲間であり、2016年リオデジャネイロオリンピックではともに日本代表として出場。さらにファッションやカルチャー好きという共通項もあり、世界を股にかけ活躍をするスイマー2人の新しい価値観を知る対談となった。


YASU:私は2020年12月1日に、ライフスタイルブランド「I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD」(以下、ISWIM)という、世界中にいる泳ぐことをライフスタイルに持った人たちに向けたブランドを立ち上げたのですが、そのブランドではサステナビリティに取り組んでいることもあり、この度「#NEWNORMAL 」に参加させていただきました。そして今、自分の隣には競泳の塩浦慎理選手がいますが、僕と慎理が初めて一緒に水泳の練習したのは、僕が高校一年生で、慎理が中学校3年生のときです。ナショナル合宿という、世代別の日本のトップ水泳選手が集まる合宿で出会ったんですけど、その後にUNDER18の世界ジュニア選手権で遠征をともにしたこともあります。

SHINRI:2016年のリオデジャネイロオリンピックでは僕は、400メートルのリレーと、50メートルの自由形で出場したので20秒くらいで終わってしまったんですけど、YASUくんは10キロのオープンウォーターだったので一番長く2時間泳いでましよね。

YASU:僕と慎理は、水泳では真逆のことをやっているんですけど(笑)、慎理とは水泳以外でも共通するものがいくつかあって、音楽やカルチャー、ファッションが本当に好きなんです。高校生の頃は、お小遣い握りしめて原宿に一緒にTシャツ買いに行ったりしていて、水泳界で唯一ファッショやカルチャーの話ができるのが慎理だけで。今日はサステナビリティ以外に水泳界のファッション事情みたいなものも話そうと思っています。

画像1

「自分が作る服も、オリンピック選手みたいなスペックにしたかった」(YASU)

YASU:私が何故このブランドをはじめたのかを説明しますと、僕も慎理も4年に一度のオリンピックに向けて競技生活を過ごしていると、だいたい年に200日くらいは海外や国内で合宿をしているんですね。今も僕はオーストラリアのシドニーに住んでいるんですけど、慎理も昔からゴールドコーストに合宿に来ているよね。

SHINRI:オーストラリアは大好きですね。今はコロナで行けないんですけれど、それまでは毎年行っていました。

YASU:僕たちは2人とも世界の大陸にはほとんど行っているんですけど、世界を転々として気が付いたのが、山系のブランドにはライフスタイルのカテゴリーがありますけど、泳ぎを軸にしたブランドで、街で着れるようなファッションを展開しているところがどこにもないということだったんです。同時に、僕たちのようなプロフェッショナルだけでなく、世界中にたくさん水泳愛好者がいるということにも気付きまして。さらには、僕は世界中行った先でセレクトショップへ立ち寄るようにしているんですけど、ロスだったら「UNION LA」とか、パリであればなくなってしまいましたが「colette」だとか。そこに行ったときに、日本のブランドが多く置いてあることにも気付いたんですね。

SHINRI:ほぼすべての確率でと言っていいくらい、どの店にも日本のブランドが置いてありますよね。

YASU:そういうのを目の当たりにすると、日本人として誇らしいというか。なので、自分がやっている「ISWIM」では、例えば私や慎理が着ているデニムのセットアップは岡山で制作しているんですけど、それと水を弾くことは泳ぐ人たちにとって永遠のテーマでもあるので、ブランドのプロダクトにはすべて撥水を施しているんです。水泳を本格的にしている人はわかると思うけど、プールに入って水から出たときに、肌に着いた水のはじき具合でその日の調子がわかるんだよね。

SHINRI:そうそう。プールに入ったときに水滴がどれくらい自分の肌に纏わりつくかで、そのときの体調じゃないけど、調子がわかりますね。

YASU:それを日常で自分たちが着ている服で表現できたらいいなと思ったときに、僕はすべてのものに撥水加工を施したんです。これまで世界の最高峰で戦ってきた者として、自分が作る服も、オリンピック選手みたいなスペックにしたかったというか。今は普通に着ているデニムなんですが、水をかけると分かりますが撥く。旅している人だとこのスペックは必要だということがわかると思うんですけど、例えばアムステルダムやロンドンなどでは、雨がすごく降るんですね。だけど日本のように気軽にコンビニでビニール傘を売っているわけでもなく、そんなときにこのスペックがあれば、雨をしのげる。あとサステナヴィリティというところで岡山のデニムを使用していますが、私も慎理もすごくデニムが好きなんですよね。今、デニムはどれくらい持っている?

SHINRI:今は自分は15本くらいありますけど、18歳くらいのときに買ったものもまだぜんぜん残っていて未だに着ますし、なんならちょうどいい感じに色落ちとか、アタリとかヒゲとか出てきていて気に入っています。

画像2

YASU:「ISIWM」では、最高なデニム生地を使っているのでセットアップを5年とか10年とか着てもらいたいなと思っているんですけど、この撥水はクリーニングとかに出したりして時間が経つにつれて徐々に撥水効果が落ちてきてしまうんです。そこでブランドのECアカウントで購入してくださった方に向けて、撥水を掛け直すサービスもやろうと思っているんですが、そうすればデニムに味がでてきて、さらに撥水のスペックはいつもフレッシュでいられる。世の中に撥水の加工の服っていろいろあると思いますが、ここまで何故撥水にこだわっているかというのが、明確に言えるんです。というのも、私は生まれて6カ月くらいからお母さんとベビースイミングを始めて、慎理はいつから水泳を始めているっけ?

SHINRI:僕は2歳ですね。

「ISWIMがきっかけで、日本の水泳選手も着るものが変わっていったらいいなと思っている」(YASU)

YASU:昨年(2020年)の1月に私は競技選手を引退をして、3月に会社を起こしまして、現在会社では3つの事業を進めていますが、最初の事業として、このように世界中に泳ぎがある人に向けてライフスタイルブランドをやっていますが、サステヴィリティのところで言うとざっとそんな感じなんです。ところで僕たちがヨーロッパツアーなど海外へ行くと、試合が終わったあとにたいていオフィシャルでパーティがあるじゃないですか。

SHINRI:そうですね。試合後にはパーティや食事会があって、海外の選手なんかはドレスアップしてパーティへ来ますよね。

YASU:そのときに、日本代表はコーチも選手もたいていリクルートスーツみたいな形のシルエットのスーツでパーティへ出席することが多いんです。だけど、私や慎理は唯一日本の選手の中でもそういう場でドレスアップしたりしてたんですけど、この状況をどうにかできないかなと思っていて、日本のスイマーやコーチも「ISWIM」がきっかけで着るものが変わっていったらいいなと思っているんです。

SHINRI:単純に水泳をずっとやってきて、水泳以外に興味が持てなかったりとかもあると思うんですね。僕たちが水泳界では逆に特殊な感じもしたりしますけど、あとは遠征のときは荷物が多いから服を別に持って行くのが大変というのもありますよね。

YASU:遠征に行くとき、慎理はトランクはいくつ持って行くの?

SHINRI:僕はトランク2つにまるまる詰めてしまうんですけど、靴なんかは試合のときに履くもの、街で履きたいものとかに分けて3足は持って行くので、試合自体にはいらないものがどんどん増えていくというか。だけど遠征に行くときに、ほかから見られているという意識が少し足りないのかなと思ったことはありますね。僕たちは日本代表になってから、泳いでいるときだけでなく割と人に観られることが多いと思うんですが、そのときにどう見られるかっていう。自分のブランディングではないですけど、少し格好いい服着るとか、いい靴を履くとか、それもたぶんプロとしての意識だと思うんですが、そういうのが足りないのかなという感じはします。

画像3

YASU:自分は水泳界から離れてしまいましたけど、今の水泳界で思うファッショニスタは慎理くんだと思うし、慎理より下の世代の人が、「慎理さんは格好いい」となってどんどんファッションに対する意識が変わっていけばいいなと思うんですよ。本当にカルチャー好きな人が少ないので。

SHINRI:寂しいですけどね。だからこそ僕たちは中学生の頃に会って、一発で意気投合したんだと思います。

YASU:この間、「JAZZY SPORT」のマサヤ・ファンタジスタさんと話をしていたんですけど、「日本のスポーツって体育だよね」って。体育って、教育の背景が強いんですけど、日本の水泳選手はタトゥーが禁止なんですね。タトゥーを入れると日本の水泳連盟の規定違反になる。私は引退をしてから、ロサンゼルス在住のミスター・カートゥーンというビヨンセとか50セントとか、エミネムに彫った人に自分からコンタクトをして五輪のマークを入れてもらったんですけど、僕たちを含め、これからの若い世代の人たちには体育を「スポーツ」にしてもらいたいんです。日本は禁止事項が多いし、慎理の髪型も初期の頃は言われていたもんね(笑)。

SHINRI:そうですね。髪を染めるのも禁止だったりしますし、僕の髪型はギリギリどうにか、って感じでしたけど。

画像4

「人生が充実していると、競技も充実してくる、そんな気が僕はしています」(SHINRI)


YASU:だから「ISWIM」では、体育からスポーツのフェーズにしていきたいなと思うんです。慎理から見て、日本の水泳界と、世界の水泳界のファッションとかカルチャーとかをどう違うと感じている?

SHINRI:人生を楽しんでいるというか、水泳をしながら人生を楽しんでいるっていうことを海外の選手から感じることが多いですね。例えばパーティに行くのも、日本人だとわざわざ着替えないといけないとかネガティヴな気分で行くというか。だけど海外の選手はお気に入りのものを持っていったり、着ていったり楽しそうなんですよね。オフの日はリフレッシュしに買い物にでかけたりとか。なんか水泳を通じての旅を楽しんでいるというか。遠征ですけど旅をするように大会も出て、しっかりその街も観て空気を感じっていう。日本の選手は今日は休みの日だから、休まなきゃと言って出かけなかったりすることが多いんですけど、もっと両方とも楽しんでいけたらいいなとは思いますね。僕たちはやっぱり好きで泳いでいるし、その中で海外へ行ける機会も多いのであれば、せっかくなら現地の空気も感じた方がいいなと思うし、もっとポジティヴなイメージで考えていくと、結果的に競技もまたいい感じになっていくのかなとか。人生が充実していると、競技も充実してくる、そんな気が僕はしています。

YASU:海外へ遠征に行って、オフの日に回った店で知り合った人たちと交流を続けて、今仕事になったケースもあるんだけど、慎理も遠征行って、カルチャーが好きで交流している人とかはいる?

SHINRI:僕はコーヒーが好きなんで、現地でコーヒー屋をやっている人に会いに行ったり、有名なバリスタやロースターをやっている人には会いに行っていますね。コーヒーで繋がるのが楽しいし、やっぱり僕たちはオリンピック選手が肩書きにあるので、それが名刺代わりになっているのでだいたい話を聞いてくれるんです。それはもっと存分に使った方がいいのかなと思うことはありますね。

画像5

YASU:好きな街や都市はどこ?

SHINRI:僕はなんだかんだ水泳込みでゴールドコーストがすごく好きですね。とにかく気持ちがいいので毎年僕自身も合宿に行くんですけど、あとは行って楽しかったのはアントワープ。あそこはもう一度行ってみたいなと思う街ですね。

YASU:この間、テレビ収録で「ISWIM」のデニムのセットアップを着てくれたけど、慎理が15~16歳のときから知っている僕が作った服はどう?

SHINRI:すごく嬉しいですよね。YASUくんのことは昔から知っているから、もちろん服が好きなことは昔から知っていたし、会社を始めるというから正直何をするんだろうなって気になっていたんですけど、やっぱり洋服か! って。ブランドの背景に人生のストーリーがあって、旅をしている中でというのがすごい格好いいなと思いました。デニムも履き心地いいし、遠征とかにも着ていきたいですね。

YASU:何かこうして欲しいとかはある? こんなのを作って欲しいとか。

SHINRI:Tシャツとかもあるし、だけどTシャツは売り切れたって言っていたじゃないですか。あとはもう少し、より買いやすいトレーニングやジムに気軽に着ていけるよう格好いいウエアがあったら嬉しいですね。

YASU:街でも着られるスポーツウエア、それは考えている。あとやっぱり僕たちが共感できるのは、そういうジムのウエアに、例えば俺たちが好きなアーティストにグラフィティを描いてもらうとか。そういうのがあったらさらに上がるよね。最後に、今は日本選手権に向けてやっている感じ?

SHINRI:この状況だとまだなんとも言えないですけど、4月にまたオリンピックの選考会があるのでそれに向けてやっていきます。ようやく12月の頭に日本選手権があったので、そこが区切りで、今はハードなトレーニングに入っています。今日も100メートルを3回全力で泳ぐということを何回かやってきました。で、また全力でこの会場に来まして(笑)。今はすごく充実しています。

YASU:最高! 今日は来てくれてありがとう。会場の皆さんも聞いて頂きありがとうございました。

画像6

【Profile】
塩浦慎理_Shinri Shioura
競泳選手。イトマン東進所属。50m自由形アジア記録保持者であり、2016年リオデジャネイロオリンピック日本代表。2011年に50m自由形で自身初の日本記録を樹立し、2013年には世界水泳選手権400mメドレーリレーで銅メダルを獲得。2014年に50m自由形で日本人初の21秒台に突入し、2019年の世界水泳選手権にて50m自由形で決勝進出を果たす。現在東京オリンピックに向け、自由形短距離のエースとして長年トップを爆走中。
Instagram @Shinri_Shioura

Photo:Kohei Matsu, Kana Yoshioka
Text:Kana Yoshioka


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
2
世界で活躍するオリンピックスイマーYASUが手がける、「泳ぐ人」たちへ向けたライフスタイルブランド「I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD」。その全貌を紹介する、WEBマガジンです。https://isatatw.com