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マイノリティに属する3人が生み出す、 スポーツファッションの新しい可能性 - Part.2

【Collaboration】
I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD ×
ANACHRONORM / Haruhito jeans 

【Interview】
田主智基_ANACHRONORMディレクター × 
小西健太郎_Haruhito jeansディレクター×
YASU_I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLDディレクター


「I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD(以下、I SWIM)」ローンチ第一弾プロダクトをともに制作した、「ANACHRONORM」ディレクターの田主智基氏と、「Haruhito jeans」ディレクターの小西健太郎氏。大雨のため岡山市に大幅に到着するのが遅れてしまった「I SWIM」取材陣でしたが、田主氏が経営するショップ「balance Okayama」に到着すると、田主氏と小西氏は、和気あいあいとバイクの話で盛り上がっておられました。その空気感は、まるでソウルブラザー。デニムひとつにしても、打ち出し方は異なれ、向かう方向は同じ。「I SWIM」のYASUは、彼らが作るプロダクトに感銘し、そして人柄に信頼を置き、依頼をしたそうだ。Part.1に続く、Part.2インタビューをご覧ください。


―田主さんは、何かスポーツはやられていますか?

田主智基(以下、T):僕はモータースポーツをやっていてレースに出たりはしていますが、どちらかというと草レースなので、高校の体育以降はほぼスポーツをしていないというのが現実です。なので、YASUさんの話を聞けば聞くほど、その舞台にたった人にしか感じることのできない経験をしているんだなと感じます。しかも、日本チームの一員として世界に出ていくと、日本では経験しないいろいろな場面に出くわしたり、トップアスリートの人たちに出会うと思うんです。そこで感じたカルチャーの差、中でも日本の体育と、世界が捉えるスポーツとの差は、YASUさんだからこそ感じることができるのかなと。ちょうど今年、日本では「体育の日」から「スポーツの日」に名称が変わりましたが、スポーツというのはカルチャーで、体育というのはあくまでも授業の一貫というか、その先にある部活みたいな感じなんだと思うんですね。カルチャーとは何かと自分なりに考えたときに、なんだかんだ自分は30年くらいファッション業界でやってきていますが、日本でもようやくファッションがカルチャーになったのかな感じています。かつてパリやイタリアの展示会に出店していたときは、向こうのファッション・カルチャーに圧倒されていましたけど、日本のファッションは他の国と比べてガラパゴス的にどんどん成熟して、そこからオリジナルなものが出てきて、今は世界に影響を与えるまでになってきている。ここ最近はピラミッドの頂点にいる人たちだけでなく、その下にいる若い人たちもボトムアップされ始めている感じがしていて、YASUさんも若い世代の1人だと思いますし、「次世代のスポーツ選手がオリンピックへ行ったときに、リクルートスーツを着てパーティーへ行くのではなく、粋なお洒落をしてパーティーへ行けるようになったらカルチャーが前進した感じになりますよね。

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―ファッションに対する意識の底上げは、世代を超えて積極的に誰かがやらないとですよね。それと近年は、スポーツウエアもどんどんファッション化されていると思います。

T:今は、スポーツの中にファッションが食い込んでいますよね。ランニングがそうだと思うんですけど、ランニングをした後に、そのままカフェに入れるようなウエアをデザインするくらいスポーツメーカーもどんどんファッションを意識している。その中で我々のようなインディペンデントなブランドも、スポーツを意識して提案してみてもいいだろうし、ただ実際に僕らが提案すると、「どれくらいスポーツやってるの?」ってことになってしまうので、それはYASUくんのようなオリンピアンと一緒に、今後やっていくことに意味があるのではないかなと思います。

小西健太郎(以下、K):僕らがスポーツを掲げてしまうと、どうしても胡散臭くなってしまう気がするんです。ファッションビジネスベースのスポーツテイストであって、リアルではないんでしょうって。その点、YASUさん自身がアスリートなので、スポーツを打ち出すのはとてもオーガニックで、カルチャーをとってつけたようなインスタントな表現ではなくめっちゃリアルな表現じゃないですか。その点「I SWIM」は、なんてストレート表現を持ったブランドなんだろうと思います。

―YASUさん1日どれくらい泳いでいたんでしたっけ?

YASU(以下、Y):多いときは20キロメートル。朝10キロ泳いで、午後10キロ、一週間で90キロ。

―そのときは、1日に5000カロリーとらないといけないそうで(笑)。

Y:この間、小西さんとランチしたときに、僕は握りとプラスで鉄火丼も食べましたもんね。

K:僕より3倍の量を食べているのに、僕よりも食べるのが早いですから(笑)。

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「スポーツに特化したフロントマンがいれば、それが1番の正解になる」(小西健太郎)


―一般的に言われているスポーツファッションと比べると、「I SWIM」はその感じともまた全然違うんですよね。もっとリアリティというか確固たる説得力があるというか……。

T:アスリートであるYASUさんがやっているということが、1番大きいのではないでしょうか。そこにリアリティがある。そうでなければスポーツとなったときに、たいていは機能性ありきのデザインだったりするので。

K:「GORE-TEX」に近い高機能なポテンシャルを持っていて、さらにストレッチ性もあってっていう、機能性を前面に押し出したプロダクトのスーツのセットアップとか着心地も品質もめちゃいいのも分かりますし、パーティーやお酒がある場所へのTPOも考慮されたプロダクトは、今の世の中に多数存在していると思いますが、僕は何故か最終的にそれにはピンとこなくて、購入までのワンクリッックがいかない。それって何故なんだろう、と考えたことがあるんですけど、僕が思うに発信源に圧倒的な説得力を持った、背中でコンセプトを語れるアイコン的な存在がいないのが理由なのかなと。

―機能性はあっても、その服をどこへどう着ていくのかがぼやけているのかもしれませんね。バーへ行くならスポーツ的な機能性などなくてもいいですし。

K:誰に届けたいのか、どんなライフスタイルを持った人に着てもらいたいのか、これがぼやけていると、その服の思いというか存在意義がきっと伝わらないと思うんです。これからYASUさんは「I SWIM」で機能性のある素材も取り入れていくと思うんですが、1stプロダクトで機能性的な素材をほぼ使用しなかったことが、僕は逆によかったと思うんです。セットアップにデニムというテキスタイルを選んだことも、YASUさんならではの目線ですし。普通デニムなんか「動きにくいでしょ」って話になると思うんですよ。だけどスポーツがリアルにライフスタイルにあるフロントマンがいて、かつその人が実際に着たいと思った服であればそこには高機能なテキスタイルを使用していなくても、正解に変えてしまう力があると思うんです。

Y:水泳でいろいろな国を回って買ったもので、今も自分の手元に残っているプロダクトって、わかりやすく言えばクラフトマンシップを感じるものがほとんどなんです。今回、このキャップで「GORE-TEX」の素材を使うこともできたかもしれないんですけど、そうではなくて、自分が代官山の店で気に入ってキャップを買って、それを作っている人はデニムの産地の岡山にいて、自分のブランドで依頼するとしたらキャップに撥水加工をしたくてって、それを頼みに岡山へ行ってと、それって愛があるストーリーじゃないですか。僕が初めてお店に行ったときに、田主さんはしっかり自分の話を聞いてくださったんです。小西さんも同じくそうで、今は毎日連絡を取り合っているくらい作るものに関して話をしています。それが自分はすごく嬉しいし、そういう人間同士の「つぶつぶ感」も僕は大切にしたいなと思っているんです。

T:「つぶつぶ感」っていうの(笑)?

Y:はい、そういう細かい感覚を僕は「つぶつぶ感」と思っているんです。例えば、僕が田主さんや小西さんに会ったときの波長を、僕は「つぶつぶ感」と言っているんですけど、どんなにGoogleが発達して、インターネットが発達しても、人との対話というか、その「つぶつぶ感」を大切にしたいんです。

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「岡山の中で、僕が作るデニムは少し他とは違かったんです」(田主智基)

―ところで岡山の人たちにとって、デニムはどのような存在なのですか?

T:小さな頃から触れているというか、店でも扱っているところが多いですし、しょっちゅう目にしてきましたよね。自分がブランドを立ち上げたのは1996年で20代だったんですけど、当時、岡山では周りの友達も服を売り始めたりして、どこの店舗も自分たちのオリジナル・デニムを作っていたんです。これは岡山ならではのことだと思うんですけど、各々がとか、革パッチの図柄を何で引っ張らせるのかとか、ケツのステッチをどうするかとか、かなりこだわって作っていたんですよ。

K:デニムは重さをオンスという表記で表すのですが、僕がこの業界に入った17年前くらいのときは、オンスが高ければ高いほど面白い的な風潮が一時期あった記憶があります。

T:置いたら立ちます、とかね。当時は皆さん、ヴィンテージ・デニムを作っていたんですけど、その中で僕が作るデニムは少し他とは違かったんです。

K:田主さんのデニム製品は、ぱっと見12~16オンスくらいに見えるんですけど、実際に使っているのは8~12.5オンスでしたよね。見た目の印象よりもとても軽くて、そのことに最初びっくりしました。僕は当時、名古屋から岡山という産地を見ていた人間だったので、「岡山のデニム製品って、全部ガチガチに硬いんでしょ」っていう印象を持っていました。今思うに、あの当時の「デニムは、ガチガチでなんぼ」みたいな風潮に対しての、田主さんなりのアンチテーゼだったのですか(笑)?

T:はい、アンチでしたね(笑)。当時、皆さんはヴィンテージそのものを作りたかったわけで、デットストックの生地を再現したいから生地屋さんに行って、縦糸や横色にこだわって、もちろん縫製にもこだわって再現していたんです。だけど僕は、当時あったヴィンテージものを再現したかったのではなく、あくまでもヴィンテージの持つストーリーをファッションとして作りたかった。

K:田主さんの作るデニム製品は、僕はある意味ネクストヴィンテージという枠を超えて、「ANACHRONORM」という唯一無二のオリジナルにまで間違いなく登りつめた印象を受けています。当時20歳くらいだった僕は、そんな方々に対極な表現で勝負するためにはどうすれば良いのか、ということを毎日のように自問自答していたのを覚えています。

T:うちのデニムと、小西くんのデニムを並べると対極なんですよね。だけどファッションの延長線上にあると考えると、この2つは対極にあるかもしれないですけど、別物でもない。それは並べるとわかります。

K:僕の中で田主さんのジーンズは37/501なんですよね。ようは、レプリカとして復刻されている「Levi’s®」の中で1番古いもの。ゴールドラッシュの時代のジーンズって普段着の上から穿くものだから、生地が分厚くないんですよ。それを当時日本でやっていた人は、田主さんだけなのではないかと思うんです。もちろんすべての工場がそうではないと思いますが、あの当時は、日本の縫製工場さんや岡山発のプロダクトが、分厚い生地で縫えるということを間違いなくセールスポイントにしていた時期もあったんです。少なくとも当時、東日本に住んでいた僕から見た岡山の印象はそんなイメージでした。そこであえて少数派に舵をきって、ファッション性を大切にした田主さんのやり方にグッときたんです。

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T:まさにそうです。まずはモノのストーリーが第一、それでファッションとして考える、その次にどういう技術を使って作るのか。そこでこういう表情にしたいから、こう縫っていきましょうと、ミシンをチューンナップしていくわけですよ。ですけれども、ヴィンテージがこうなので、こう縫っていきましょうとか、それがヴィンテージに近づけるための技術を追い求める合戦になってしまうと、どうなのかなという部分はありますね。

「自分で見つけ出したことが、人を惹きつけると思います」(YASU)

Y:今のお2人の話を自分の水泳に例えると、今まで日本だけでなくいろいろな場所で泳ぐことを体験して、それを経て、1番効率のいい身体とパワーが出せる泳ぎ方って、やっぱり自分で見つけないといけないし、海外の水泳が強いからといって、食生活から、ジムのトレーニングからと、そのまま真似をするだけでは強くなれない。身体の作りも違うし、自分の強さは何なのか、どう戦っていくのかを経験しているので、田主さんや、小西さんのように、デニムをファッションとして捉えて作ったデニムは、お2人にしか作ることができない。だから人を惹きつけるんだと思います。

―他とは違う方向へいったように見えて、そこには真意があるんですよね。

Y:僕も、田主さんも、小西さんも、きっとマイノリティに属していたいんですよ。僕は「I SWIM」を通じて、そういったコミュニティも提案できたらいいなと思っていますし、「I SWIM」を通じて「ANACHRONORM」や 「Haruhito jeans」を知ってもらって、反対にお2人のブランドを通じて「I SWIM」を知ってもらって、そこから泳いでみようと思ってもらえたら嬉しいですよね。そういう感じで、繋がっていけたら良いなと思います。

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【Profile】

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田主智基_Tomoki Tanushi
有限会社バランス代表取締役、ANACHRONORMディレクター。1970年生まれ、岡山県倉敷市出身。桑沢デザイン研究所ファッションデザイン科卒業。1996年11月、岡山市平和町に balanceokayamaを出店。同時にオリジナルブランドbalanceweardesignを設立し、2000年に東京中目黒にbalancetokyoをオープン。2003年、balanceweardesignからbalに改名。2004年、ANACHRONORMを設立し、地場産業である児島の繊維生産現場との取り組みによってヴィンテージ加工デニム TYPE αの1型よりスタートする。 2008年にイタリアのPitti Imagine Uomoに初出展するも、2011年の東日本大震災をきっかけに国内での展開を重視。 以降、現在に至るまで同ブランドとして新たなフェーズでのモノづくりを発信中。
www.anachronorm.jp

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小西健太郎_Kentaro Konishi
Haruhito jeansディレクター。1988年生まれ。中学卒業と同時に地元兵庫を離れ、名古屋で16歳よりアパレル販売員を7年務めた後、23歳のときに岡山に渡り縫製の修行を始める。24歳のときにオーダージーンズ事業「Haruhito jeans」を立ち上げ年間生産数200本を上限とし"会話を経て生まれるモノ作り"をコンセプトに東京・大阪・京都・兵庫・岡山を中心にポップアップストア形式でセールスを展開。2018年には岡山から地元兵庫へ戻り「Atelier Haruhito」を設立。2020年より「Haruhito Factory部門」を立ち上げ企業ユニフォームのデザイン・生産から国内外のプロダクトのディレクションサポートなども手掛ける。
www.haruhito.jp

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【Products】

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I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD × ANACHRONORMデニムキャップ
サイズ:フリーサイズ
カラー:ネイビー
価格:12,000円(税抜き)
12月18日より発売開始

ジャケット_黒_1

I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD × Haruhito jeansデニムジャケット
サイズ:S, M, L 
カラー:ネイビー, ブラック
価格:68,000円(税抜き)

パンツ_黒_2

I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD × Haruhito jeansデニムパンツ
サイズ:26, 28, 30, 32, 34
カラー:ネイビー, ブラック
価格:33,000円(税抜き)

【Info】
お問い合わせ先:アキレスアンドセンチュリオ株式会社 
TEL:090-6545-2024
EC URL:isatatw.com 
http://achillesandcenturio.com 


Photo:Mariko Yamamura
Text:Kana Yoshioka



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世界で活躍するオリンピックスイマーYASUが手がける、「泳ぐ人」たちへ向けたライフスタイルブランド「I SWIM AND TRAVEL AROUND THE WORLD」。その全貌を紹介する、WEBマガジンです。https://isatatw.com