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55 夢は大変

空を飛ぶことが小さい頃の夢だったんだけど、いざ高いところに昇ってみたら足がすくみました。ただ昇るだけですくむのだから、空を飛ぶというのはどんなに恐ろしいことか。

人生をかけて作品作りをしている人や、お金をたくさんかけて事業を成功させようとしている人が僕の周りにはいる。「かける」という文字は、本来は「懸ける」と書くのかもしれないけど、僕が見るに、その人達の場合「賭ける」だ。ほとんど狂気のような姿勢に、みんなが自然と惹きつけられる。

実際、賭けている人は強く生き残り、安全な場所を離れられなかった人は、同じことを繰り返しているか、いつの間にか姿が見えなくなる。そんな印象が確かにある。

前に、高さが50メートルくらいある空中ブランコのアトラクションに乗ったことがあって、僕は割とそういう類のものは平気だと思っていたし、むしろ進んで乗ってみたいと思っていた。だけど、いざ座席に座って、ゆっくり乗り物が上昇していくと、あっという間に恐怖の念に襲われて、ああ、ダメだ、僕これダメだあ、と震えた情けない声が出た。

そのあと数分間、空中ブランコに振り回されながら、精神との闘いを経て(はじめはわーわー騒いでいたが、最後は、青い顔で、それはそれは静かなものだった)、ゲッソリとして地面に降り着いた。地に足がついているのについていないような、内臓を全部上空に置いてきてしまったような、はらはらふわふわした気持ちのまましばらくその後を過ごした。

夢というのは、異常を正常にしてしまうことだ。ありえないことを普通にしてしまうことだ。そこには恐怖がある。真っ暗闇を全速力で走るような。空中ブランコで空を周回するような。

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