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49 たった二日の間に

数日前、風邪をこじらせて丸二日寝込んでいた。なんの仕事もせず、味がはっきりとしない舌でご飯を食べることと、ベッドに寝転がってスマホゲームをいじったりすることと、眠気が訪れる度に眠ること、それだけを繰り返しながら過ごした。

熱は出なかったので、そういう辛さはなかったのだけど、肺のあたりというか、あばらのあたりというか、だいたいそのあたりに乾電池を舐めるみたいなピリピリとした変な違和感があって、ああ、これはダメだ寝ようと老爺のように腰を曲げてベッドに倒れ込んだのが始まり。

風邪はやっぱり油断するとひく。ここ最近油断することがなくて、風邪をひくことが少なかったように思っていたのだけど、その慢心がいけなかったのか、ある夜、上下ヒートテックだけを着て寝てしまったら、明け方寒くて起きて、案の定再び起きた時にはしっかり風邪をひいていた。ぐずりぐずりと鼻が詰まって、例のピリピリが訪れた。

風邪の時はご飯を買いに行く元気もなくて、「こんな時くらいは」と良い気になって出前を取る。と言っても出前は当然高いので、いろんなメニューを見て、決めたと思いきや合計金額を見てまたメニューに逃げ戻ってくるという情けなさ。

そんなこんなして結局、中野のちょっと有名なカレー屋さんのカレーを1500円以上もかけて頼んだ。しかしまあ、いざ食べてみると病人の舌にはうまいもまずいもないというか、そこまで言ったら大げさだけど、食べ終わる頃には「なんでも良かったかな」なんて思ってしまった。かなり高くついてしまってこれは明らかに失敗。

丸二日くたくたとして迎えた三日目の朝、鼻はまだ詰まるけれど割とスッキリとしていたので、ちょうど仕事もしなければいけないしと思って起き上がった。結局その日は朝9時から夜12時まで働いたのだけど、そんなことよりもその日の朝悲しいことがあった。

育てていた観葉植物のJがしなしなに萎れていたことだ。ああ、カーテンを閉め切ってずっと寝ていたからだとすぐに反省の念が押し寄せた。あんなに青々と艶めかしくしていた葉が、まるで僕みたいに、二日間の僕みたいに、ぐったり萎れている。水気もない、艶がない。とても悲しい気持ちになって、ごめんと思った。

植物を育てるのは難しいなあ。人間も生きていて、生き物はみな難しいなあ。生きていくこと、生きていることを維持すること、こんなに難しいんだと思い知らされた。生きてるだけでえらい事だ。生きているだけ偉いことだ。



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