見出し画像

58 引いて守る

最近、スマホでサッカーゲームをよくしている。夜寝る前とか、朝の目覚まし代わりにとか(これがまあ良い目覚ましになる)。

スマホのあの小さな画面の中で、11対11の試合を繰り広げる訳だけれども、操作するのは基本的にボールの近くにいる選手1人で、ドリブルしたり、パスを出したり、シュートを打ったり、ボールを奪われたりしたら逆に奪い返しに行ったりする。(操作していない他の選手はコンピューターがやってくれる)

普段観ているリアルのサッカーでは、ボールに関わっている選手は忙しく動き回っているが、ボールから遠い選手、例えばゴールキーパーなんかは、数十メートル離れた場所からボールの行方を見守るだけで、特に機敏に動くということはないように見える。

これが、スマホゲームになると、ボールの近くにいる選手に自動でカーソルが切り替わるので、攻めも守りも、操作している僕の指は常に忙しい。攻めていたと思っていたら、ボールを奪われてすぐ守り。奪い返せば速攻カウンター。気が途切れることがない。

ところで、僕のやっているサッカーゲームというのは「ウイイレ」というやつで、昔からあるやつなんだけれども、今はオンラインで対人戦が出来る。世界のどこかでプレイしている、顔も名前も知らない誰かと試合をするのだ。

対人戦の場合には、コンピューターと戦うのと違って、人間同士の駆け引きがある。特に、こちらが守りの時、相手が突っ込んでくるのか、鋭いパスを出してくるのか、ゆっくりとパス回しをしてじんわり攻め込んでくるのか。

ゲームを始めたての頃は、操作も何も分からないから、とりあえずボールを奪われたら奪い返そうとすぐさま相手に駆け寄る。だけど、上手い人と当たるとそれではダメで、駆け寄った瞬間に裏をかかれて、あっという間に抜かれてしまう。

慌てて奪い返しに行くのではダメだと学んだ僕は、「引いて守る」ということを覚える。ボールを奪われても、慌てて奪い返しに行くのではなく、サッと守りに気持ちを切り替えて、選手を自陣に戻しつつ、守りの陣形を整える。そこへやってきた相手を待ち構える形でボールを奪う。

これが、引いて守るお手本の考え方なのだが、付け焼き刃で覚えた戦術をいきなり試してうまく行くはずもなく、その後の試合は、こちらが「下手に」引いたのを良いことに、相手にバカスカ点を取られる始末。いくらやっても、守りが堅牢になるどころか、引けば引くほど点を取られる。点を取られて弱気になり攻撃も調子が出ない。「0 - 3」「0 - 4」と敗戦続き。まったく良いとこなしで、いよいよスマホを放り投げる。

「引いて守って失点」の、なんとも虚しいこと。どうせ点を取られてしまうのなら、強気でいって取られたかったと思う僕であった。

気に入ってくださいましたら、ぜひお気持ちを!