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57 紙の上の理解者

最近、考えごとが溢れてしまうのか、夜になると紙に歌詞を書き出すことが多くなった。

いつも近くに置いてあるB5のコピー用紙の束から、1枚白紙を取り出して、最初に思いついた言葉をボールペンで書き下ろす。1行、そこに、さっきまで頭の中にあった思いが活字となって現れる。

インクが乾くより早く、続けてまた次の言葉を書く。そして、そして、次々と、あっという間に4行ほどになって、そこで一息ついてはじめから読み返してみる。そうして最初に書いた1行目を読む時には、もう他人の書いた文章を読むような気持ちに、少しだけなっている。読んでは自分の心にあてがってみて、そうそうと頷きつつ次の行へ、そうそう、そうそう、そうそう。

そういう風に、僕の身体から離れた活字は、一旦離れてしまうと、どんどん別の生き物として独自に生き出す。それが、良い。鏡みたいに自分そっくりの姿を見るよりも、曖昧で、立体的な形を成していない、だけど、確かに僕の一部だったという愛着と、僕自身の情を映し出してくれる、その感じ。「自分を良く理解してくれる他者っぽさ」。

紙の上に書き起こすということを長年してきた。思えば、普段僕が孤独感を感じても、本当に孤独感に潰されてしまうことがなかったのは、その習慣のおかげだったのかもしれない。考えてみると、人は形様々に孤独を回避する術を持っているように思える。僕の場合は、自分の気持ちを紙に書くことと、そして、本を読むことだ。

孤独や寂しさを回避するといったら普通、誰かと話すとか、テレビをつけるとかなのかもしれないが、うちにはまずテレビがない。誰かと話そうにも、僕はそもそもそんなにお喋りな方ではないし、だれかれ構わず話掛けるタイプでもない。素直に話ができる相手は決まっているし、その数は決して多くない。

誰かと話すのと比べて、気持ちを紙に書いたり、本を読んだりする方は、自分のペースでできる所が良い。実際、気持ちを紙に書くのも、本を読むのも時間がかかる。そうして長い時間ひとりで紙の上に向かっている僕は、傍から見ると孤独なように見えるのかもしれないけれど、僕にとってはどっちも対話であって、むしろ孤独感は消えていく。

(つづく……?)

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ただずっと書いていたくて広げたノート。

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