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金本位制をとる国々は無邪気に手を差しのべあった ゴールド94

金本位制の時代の最も劇的な危機の一つが1890年に起こったベアリング危機だった。

ベアリング危機が回避された後、世界はどのように変わったのだろうか?

※ベアリング・ブラザーズというロンドンの一流金融機関がアルゼンチンで無分別かつ不当な投資をしたことにより、イングランド銀行自体を破たんさせそうになった危機

ベアリング危機の回避

ベアリング危機は最も劇的な危機であったが、決して例外的な危機ではなかった。

そして、さまざま危機は金本位制をとる国々が互いに手を差しのべることで回避された。

イングランド銀行、フランス銀行、ドイツ帝国銀行、ロシア国営銀行、アムステルダム銀行、スウェーデン国立銀行、デンマーク国立銀行、ロスチャイルド家、ベアリング・ブラザーズ、これらが協力し合い、さまざまな危機を回避した。


一つの前提

こうした協力、援助はすべて、一つの前提に基づいていた。

その前提は、固定比率による金との交換を維持することが経済政策の基本原則であるということだった。

この前提は、他のあらゆることに優先されなければならなかった。

この前提が優先されるからこそ、金本位制をとる国々は互いに貸付金を提供し合うことができた。


無邪気な金本位制

今日、このような信頼性、協調性をそれほど断固として信じているのは無邪気なものたちだけであろう。

19世紀、金平価を維持するという協定は額面通りに無邪気に受け止められていた。

しかし、20世紀末、国家同士はいやいやながら協定に協力しているに過ぎない。

投機家は困難に陥った通貨を簡単に見捨て、見捨てられた通貨はさらなる窮地へと追い込まれているのが今日だ。


中央銀行は痛感した

信頼性、協調性をそれほど断固として信じていたが、1890年のベアリング危機により、全ての中央銀行は多くの金準備を保有する必要を痛感した。

金利政策の力が信頼を失ったわけではなかった。

しかし、金の退蔵を十分に増やし、それによって信頼性を築く必要性を痛感したのだった。

ベアリング危機の後、金準備を管理する上で金利の変更だけがあてにされることは少なくなった。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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