見出し画像

〜LAUNCHPAD的プレゼンの創り方〜

こんにちは。Headline Asia(旧Infinity Ventures)の西島(@IsamuNishijia)です。
3月19日のIVS2021 LAUNCHPADはたくさんの人に支えて頂きながら、無事開催することができました。アーカイブ動画もYouTubeにUPしていますので、まだ見ていない人は是非見てください!将来のIPOがここからたくさん生まれるはずです🚀

今回は12月のLAUNCHPAD SaaSと3月のIVS2021 LAUNCPADの予選選考会に参加して、IVメンバーから挑戦者へ共通して多かったプレゼンの指摘や応募者にメールで送っているプレゼンのポイントを参考に”LAUNCHPAD的プレゼンの創り方”を書いていきたいと思います!LAUNCHPADに応募される方、他のピッチコンテストへの出場を目指す方へ少しでも参考になれれば幸いです。

(自分だけでは説得力が薄めなので経験豊富なHeadline AsiaのVPであるTatsuyaさん(@Kawatatsu0920)とプリンシパルのToshiさん(@toshi_ivs)にもレビューしていただき、若干の加筆を行っています。)


LAUNCHPADについて

まず初めに少しだけLAUNCHPADについて説明させてください。LAUNCHPADは今年で17年目を迎える経営者カンファレンス”IVS”の中で行われる6分間のデモを中心としたピッチコンテストです。毎回14社前後の有望なスタートアップが登壇し、過去登壇者の中から今まで30社がIPO、33社がM&AによるExitを果たすなどスタートアップの発射台としての役割を果たしてきました。

IVS LAUNCHPAD 過去登壇企業の実績

また、LAUNCHPAD登壇者や惜しくも登壇とはならなかったものの選考の段階で高い評価を得たスタートアップに対しシード投資を行うLAUNCPAD FUNDを昨年設立し、スタートアップの「初速を、変えよう。」というミッションのもと、よりスタートアップの力になれるように活動をしています。

LAUNCHPAD的プレゼンのコツ

それでは本題に入って行きましょう。

ここに書いてあることが全て予選の段階でできるスタートアップは今までもほとんどいないということなので安心してください。しかし、だからこそ、LAUNCHPADの選考に参加したり、VCの方などに壁打ちして改善したいくことが大切になってきます。

プレゼンの構成

LAUNCHPADはプロダクトのデモにフォーカスした少し長めのエレベーターピッチです。過去のプレゼン動画を見ると、デモ利用シーンのムービーを中心としていることがわかると思います。

なので、まず最初にデモの作成からスタートし、その後に前後のスライドを考えると言った、デモ中心の作り方をオススメしています。

具体的には最初のイントロは1分程度までにしてデモで3~4分、最後にKPIやビジネスモデル(可能な限りプライシングは載せてください。)などの数字、将来展望という流れが定番となっています。(もちろん会社によって多少の違いは生まれます。)

よくある悪い例としては、製品のコンセプトや市場性などをダラダラ5分ほど話してデモが30秒程度しかないというケースがあります。デモに入るまではなるべく簡潔にして、デモ中心のピッチをすることをLAUNCHPADではおすすめしています。

また、資本金や会社の所在地などのWebサイトを見ればわかる情報はプレゼンでは一切不要で、チーム紹介も余程ユニークな点がない限りはプレゼンには入れないで欲しいとも伝えています。

デモのつくり方

プロダクトを文字で説明するプレゼンも多いですが、LAUNCHPADでは実際にプロダクトのデモをしながら説明を行うことを必須にしています。

デモはライブで操作するタイプと予め動画を撮影しておく方法がありま
すが、どちらでも構いません。

なお、デモはストーリー仕立てで示すことが好ましいです。具体的には、典型的なユーザーの利用をストーリー仕立てで説明したり、どのような状況のユーザーなのかコンテキストの説明、サービスの登録、利用、決済などエンドユーザー側のUI/UXについて全て語った後、情報の受け取り手(運営や販売元)などのUI/UXについて語るなどがあります。

さらに、デモ以外のスライドで定性的な説明を文字で行っているスタートアップも多いですが、デモで補足説明とともにコンセプトや市場性・競争優位性も説明しましょう。

ムービーを用いたプレゼンテーションの例 / SmartHR

理由は大きく2つあり、1つは6分間という短い中でこれらの情報をデモと分けて説明切ると時間が足りなくなってしまうこと。もう1つは文字で優位性などを説明されるよりも実際のデモを見せながら説明をする方が聞き手に理解されやすいことがあります。

また、デモ営業用のムービーを使ったり、事前の画面録画に音声も録音して、プレゼン中にその動画だけを流して自分は黙ってしまう方もいますが、できるだけ避けることをお勧めします。(難しい場合もあると思いますが、プレゼンターが長い時間、壇上で無言になるのは避けた方が良いです。)

理由を言語化するのが少し難しいのですが、プレゼンターの表情や声質、身振りなどもオーディエンスには情報として伝わるので、それがないとなんとなく気まずい時間になってしまうからだと思います。

ちなみにオンラインではそういったノンバーバルな情報が伝わりにくいですが、IVSではできるだけプレゼンターが大きく映る画角をつくることでそれをカバーしています。

画像2

IVS2021 LAUNCHPAD Spring (207株式会社)の画角

また、今回参考にしたclunchbaseの記事では「so many uncomfortable times await. 」と書かれています。

プレゼンのコツ

ここからはスライドの構成など少し細かい箇所も含みますが、プレゼンのコツとなります。

スライドの文字は少なく、シンプルに。(Too short is better than too long)

LAUNCHPADでは、出来るだけスライドの文字を減らしてシンプルワンスライドワンセンテンスがベスト)ことを推奨しています。
文字が多すぎると聞き手が文字を読むことに集中してしまい、プレゼンターの話が頭に入ってこなくなってしまいます。さらに、スライドを読んでいる途中で次のスライドに進んでしまうと、内容を完全に理解できずにプレゼンが終わってしまいます。

話していることに関係のない情報は一切載せず"本当に伝えたいこと"だけをスライドには載せましょう。

また、イメージ写真など画像を使うケースが多いですがLAUNCHPAD本番は画質の良し悪しが印象を大きく左右します。さらに文字のフォントにも気をつかうと、なお良しです。

以下はclunchbaseの記事「31 Pitch Deck Slide Examples: The Good, The Bad, The Ugly」から引用したスライドの良い例と悪い例です。

画像7

Moz文字が多い悪い例(記事では「1981年にお母さんが会社を設立したことも、借金があったことも、ドメイン名を買ったことも、言わなくていいです。」とディスられています。笑)

画像8

Nutanix:このスライドも文字が多く、構造が複雑だとディスられています。

また、コロナ禍においてオンラインでのピッチが多くなり、LAUNCHPADでも選考はZoomで開催したり、本番もオンラインで行うことが多くなっています。その際に、文字が多かったり小さかったりすると、文字が潰れてしまい読むことすらできなくなってしまいます。

画像11

Standard Treasury文字が小さくおそらくZoomプレゼンでは聞き手は何も理解できません。また、もし見えたとしても記事にあるように
“So what are these crazy little numbers?”
“What costs are you not accounting for here?”
“What do you mean?” (no, not quoting Justin Bieber)
“What are you trying to say? What’s the point of this?”
無数の疑問が浮かび、混乱してしまいます。プレゼンターが伝えたかったこと以外の方向へ聞き手の思考が傾いてしまう可能性が高くなるでしょう。

画像10

Airbnb:良い例として有名なエアビーのスライドがあげられています。複雑でなくシンプルかつ、説得力のある数字が使われています。

成長率はグラフで表す。

トラクションやKPIの成長率は聞き手にインパクトを与えることのできる要因の一つです。LAUNCHPADで良く審査員をして頂いているZ Vententure Capital代表の堀さんのnoteにも書いてある通り、急激な成長率やKPIの異常値は投資家を唸らせるポイントの一つです。

LAUNCHPADはアーリーステージのスタートアップが多いためトラクションがまだあまり出ていない場合も多いですが、もしある場合はプレゼンに入れましょう。その際に、時系列のグラフで表した方が成長率が可視化され印象強くなります。

画像22

例えば、スピークバディ(IVS2021 LAUNCHPAD  Spring 出場)は有料ユーザー数を文字だけでなくグラフを使って表しています。グラフがないと以下のようなイメージになります。

画像23

これでも悪くはないと思いますが、グラフがある方が急激な伸びがより直感的に伝わってきます。

またclunchbaseの記事でも文脈は若干違いますが以下の2枚のスライドが高く評価されています。

画像5

Carta明確かつ説得力のある見出しに加えてそれを裏付けるグラフが示されています。

画像6

Front App:売上だけでなくチャーンレートなどもグラフを使うとより直感的にわかります。

オーディエンスが誰かを考慮する。

何を話すかを考えるにあたって、誰が聞き手にいるのかを考えましょう。それによって何を説明すべきか、説明すべきでないかが変わってきます。

LAUNCHPADの場合はオーディエンスにはインターネット系経営者が多くインターネットネイティブな人が多いです。そのため、スタートアップにいる人なら共感しやすい課題(ペイン)を詳しく説明する必要はありません。

以下、説明する必要があったプレゼンとなかったプレゼンを”LAUNCHPAD SaaS”に出場した「STANDS」「カミナシ」を例に紹介します。

STANDSが提供する「Onboarding」はその名の通り、ソフトウェアの初期の使いにくさを、ガイドを作成できるツールを提供することで、オンボーディングを行いユーザーを助けるサービスです。プレゼンの冒頭に初めて触るサービスが「なぜ使いにくいのか」「どう使いにくいのか」を説明していません。使用しているスライドはこの一枚だけです。

画像3

これはオーディエンスの多くが既に体験したことがある課題である可能性が高く、あらためて説明する必要がないと考えられるからです。

LAUNCHPAD SaaS / STANDS

これに対して、食品工場などブルーカラーの現場の業務フローをデジタル化するカミナシは実際に製造現場がどんなワークフローでどんな業務をどのように行っているかを、動画を用いて説明しています。これは、オーディエンスにブルーカラーで働いた経験がある人が少ないことが考えられるからです。(色々な人にLAUNCHPADを見てもらえるように頑張りたい。。!)

ただし、あまりに前提の説明が長くなってしまうとデモの時間が短くなってしまうので注意しましょう。

LAUNCHPAD SaaS / カミナシ

また、少し別角度でいうと「ジャーゴンは使わない。」ということも重要です。

ジャーゴンとは「専門用語・業界用語」という意味です。これがあるとプレゼンが急激に難しく聞こえてきます。「SaaS」「MRR」「MVP」などの言葉はスタートアップ界隈の業界用語なので問題なさそうですが、特にディープテック系のスタートアップなどこのジャーゴンをそのままプレゼンで使っても理解されにくいことが多いです。

昨年のIVS2020 LAUNCHPADで優勝したアダコテックは「HLAC」という技術を説明するときに以下のように工夫したとインタビューで語っていました。

あとは、特に難しいHLACの説明部分では、オーディエンスのアテンションが下がらないよう、少しでもキャッチーにしようと、アニメーションを組み込んだスライドも作っていきました。おそらくエンジニアさんからしたら抽象化・簡素化しすぎだとお叱りを受けると思うのですが、ここでも、とにかく初見の方に概要を掴んでいただくことに重きをおきました。

https://www.wantedly.com/companies/company_8396481/post_articles/245416

IVS2021 LAUNCHPAD / アダコッテク

他に重要なポイントとして、オーデエンスには投資家も多いのでビジネスモデルを入れましょう。そのビジネスがどのくらい大きくなるかを考えるために重要な点になります。

努力は必ず差になって現れる。

ここではまず、昔から選考参加者の方へ送っているメールの文を引用します。

これまでのLAUNCHPADの上位のプレンテーションでも予選の段階では褒められるようなレベルではありませんでした。
予選会でフィードバックを行い、本人の努力によって劇的にプレンテーションのレベルが改善されました。努力の跡は必ず差となって現れます。練習しているかどうかは最初の30秒程度でわかることが多いです。過去に優勝・入賞した方は圧倒的に努力・練習を重ねた方々です。

自分が参加した過去2回でも二次選考から最終選考でプレゼンを大きく改善させた方が本番でもさらに良いプレゼンをして、良い結果を残していると感じています。

また、プレゼン中に(特に本番では緊張して)喋るスピードが速すぎたり遅すぎたりする方も少数います。練習で、他の人に聞いてもらったり自分のプレゼンの録画を見直したりして確認しましょう。
聞いてもらうのは、VCや会社の人はもちろん、業界の知識がない家族や友人に聞いてもらうのも有効だと思います。そういった方に、6分間のプレゼンをしてみてよく理解してもらうことができたら、かなりプレゼンのレベルは上達してきているはずです。

YOUTRUST(IVS2020 LAUNCHPAD 登壇)のnoteには一日6時間も練習したと書かれています。事業も同時進行で進めなくてはいけない起業家にとってここまでするのは難しいかも知れませんが、プレゼンは6分間なので隙間時間を探して練習することで、塵も積もれば山となるはずです!

プレゼンは明るく元気よく。

これも選考参加者の方へのメールに書かれていたことです。

明るく元気なプレゼンは印象が異なります。笑顔で明るくということを心がけて頂ければと思います。

当たり前のことですが、意外と大切で難しいところです。

ここではプレゼンテーター自身が楽しんでいるかどうかが大きなポイントになるかもしれません。自分が楽しんでいれば、必然的に笑顔で明るい雰囲気が伝わってきます。せっかくの人生かけて挑んでいるサービスを説明する機会なので、LAUNCHPADという場面にに関わらず、いかにそれが面白く素晴らしいものなのか、是非楽しんで伝えてもらいたいと思っています。

そういった姿はプレゼンを聞いていると伝わってきて、他の多くをカバーするので、何よりも大切にしてプレゼンに臨んでみてください!

予選ではなるべくリラックスしてプレゼンしてもらえるようにIVSメンバーも気をつけています。(最近チームの拡大にともない選考参加者が増えてきていますが、みんな良い人なので安心してください😂)

また、もし余裕があれば少しジョークを挟んで笑いも取れたられたら最高です。以下は過去のIVSで特にユーモア力の高いプレゼンです。

IVS2017 LAUNCHPAD Fall Kanazawa / OQTA

IVS2018 LAUNCHPAD Winter Kanazawa / Virtual Cast

IVS2016 LAUNCHPAD Spring / 弁護士トーク

スライドのデザイン

最後に、スライドのデザインについてです。最近ではCanvaなどを使ってすごくキレイなスライドを作成している方も多くなってきました。その反動で、今度は逆にイケてないデザインのスライドが目立つようになってきてしまいました。

本質的なところではないのでそこに時間をかけすぎることもよくないですが、スライドの見た目もオーディエンスに大きな印象を与える点なので、できれば気にするようにしましょう。

画像14

LinkedIn:このスライドは悪い例としてあげられていますが、同時に2004年は洗練されたデザインのピッチデックはあまりなかったともコメントされています。また、素晴らしいコンセプトなのに、(デザインが簡素すぎて)とてもつまらないスライドとのコメントもついていました。

最後に

プレゼンについては以上です。他にも過去LAUNCHPAD登壇社の方が書いているnoteなどもたくさんあるので、是非参考にしてみてください。以下にいくつか載せておきます。
(見つけきれてない部分もあるので、その場合がご連絡いただけると助かります!)

note:
aba (IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO)
RECOTECH (IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO)
SPeak (IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO)
Poetics (IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO)
Keen (IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO)
SecureNavi (IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO)
PETOKOTO (IVS2022 LAUNCHPAD NAHA)
EC-GAIN (IVS2022 LAUNCHPAD NAHA)
IVRy (IVS2022 LAUNCHPAD NAHA)
ジェイタマズ (IVS2022 LAUNCHPAD NAHA)
カウシェ(LAUNCHPAD Entertainment)
ミーチュー(LAUNCHPAD Entertainment)
Graffity(LAUNCHPAD Entertainment)
Radiotalk(LAUNCHPAD Entertainment)
207 (IVS2021 Spring)
WASD(IVS2021 Spring)
coco(IVS2021 Spring )
カミナシ(LAUCHPAD SaaS )
YOUTRUST (2020 ONLINE)
FABRIC TOKYO (IVS2016 MIYAZAKI)

LAUNCHPADの出場者を募集しております!奮ってご応募ください!

応募はHPから↓

応募詳細などについてはTwitterやIVS公式noteをご確認くさい!

事前に質問などがあれば西島のTwitterまでDMなどお気軽に送ってください📨

また、今後も情報の更新などあれば随時アップデートを発信していきますので、よければIVSの公式Twitter( @IVS_Official )のフォローをお願いします。

参考:31 Pitch Deck Slide Examples: The Good, The Bad, The Ugly 

IVSやHeadline Asia(旧Infinity Ventures)の各種情報はこちらから↓
IVS HP:https://www.ivs.events/
IVS公式Twitter:https://twitter.com/IVS_Official
IVS Facebook:https://www.facebook.com/InfinityVenturesSummit
Headline HP:https://headline.com/
Headline Asia Twitter:https://twitter.com/headline_asia

Headline Asia 西島

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?