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Marquee Moon by Television

暗い記憶の底に仄かな蛍光がザラついている。僕はその蛍光に向かって、火に吸い寄せられる悲しい虫のように歩みを進める。次第に像を成したその物体は明瞭で侘しい音を結んでいた。
TelevisionのMarquee Moonだ。

軽やかな高音のギターが水面に落ちた雫のように可愛く弾け、確かな中音のギターと低音のベースが高音の昂りを支えている。精密に放たれるドラムは数学的に美しく、嘆きに近い声は死の淵で月を讃えていた。

月が照らす墓地で、生と死の境界線に立つ。怨念を纏った強力な「死」に後ろ髪を引かれながら、それでも僕たちは生きていくんだと、泣きながら葛藤し、前に進む。そんな美しいディストピアを見た。

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