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驢鳴犬吠  ─猫─ 

『もう何日、食べて無いだろう』

と、足元がフラフラ。

最近は上手く食べ物に
有りつけて無い日々が続いていて
腹が限界だ。

歩くのも辛い。

ボヤケた視界で空を見れば
黒い鳥が旋回しているのが見える。

『行き倒れそうな俺を狙ってる…な』

『とにかく、鳥達から逃げないと』

と、思っていても
足が、もう動かない。

『まだ死にたく無い』

と、思っていても動かない身体は
どうにもならない。

道に倒れた瞬間、
鳥の羽音が近付いて来て
鳥の足に掴み取られ
捕らわれた。

空中にブラブラとしている感覚と
全身に当たる風、
耳に聞こえる翼の音。

薄っすらした意識の中で

『喰われる…ぅ』

と呟いて意識を失った。


バサッとした音と共に
何処かに、降ろされた衝撃で
意識が戻るが目は開かない。
力が無い身体を
仰向けに降ろされた時

『喰われる…なら
 意識…戻…て…良かっ…にぃ…』

と思った時、

ガッ!!と
顔に当たる爪の感触?!!
─ッ何!!!!????
─息がッ!!!!

『食べる力も無いのか?
 仕方が無い』

との声の後、

─ィタッ!!イタッ!!ッ!!??

『ゲホゲホゲホっ!!!!』

と僕は盛大に咽て
口の中から何かが転げ落ちた。

─ッ!!!!??

何が起こったか分からない。
パニックな僕に

「カアーッ」

の鳴き声の後

『食べ物、粗末にするな』

との声。

─食べ物─?!

と、キョロキョロしたら
側に食えそうな物が!!
見た瞬間に齧り付く。
側には水もあった。
ガツガツと
腹を満たす事に
夢中になった。
幾らか食べたところで
今の状況に
ハタッと気付く。

食べ物を食べている自分。
それを見ている
嘴の白いカラス。

─狙われてる?
イヤ、違うか。
そういや、朦朧としてる時
『─食べる力が…』
どうとか言ってた様な?
カラスに助けられた??
食べるのを止め
カラスの方を
伺い見る様に尋ねる。

『…もしかして、
 助けてくれた?』

『死にそうだったからな』

と素っ気なく答えられた。
カラスに助けられた事に
ありがとうって
感謝しかけた所で
おかしな事に気付く。
意識が朦朧と、していたとはいえ
仰向けになった時に
息が出来なくなったり
ガツガツと
殴られてた様な…

『…あんた、僕の事、
 殴ってなかったか?』

『殴った?あっ!あぁ
 オレは口に食い物を入れて
 食べれる様に
 顎を動かしてやっただけだ』

…つまり、
飢えていた僕に食い物を
食べ易くしてやったと…
言いたいのか?
助けてくれたのは有り難い。
けど、
状況的に僕は殴られたんじゃなくて…

蹴られてたんだな…。

と、カラスの足を見た。
とりあえず、
カラスが助けてくれたんだ。
僕はカラスに

『ありがとぅ…』

と言った。
助けるにしても
ガツガツゲシゲシと
蹴るのは、どうかと思うけど!!
すっげー痛かったし!!
カラスなりの
雑な優しさなのか?!
と、
感情を抑えて言ったので
口元は引く付いていたけどな!
カラスは

『オレは充分に
 腹が満たされた生き方を
 してるから出来た事。
 お前みたいに腹が減ってたら
 お前、食ってたかも』

とゾッとする
恐ろしい事を言われた。

『暫くは、この辺りに
 居ると良い。この辺りなら
 食べ物に有り付けられる』

『あんた、お節介な奴だな。
 それに、超、雑やし。
 カラスの印象が変わったよ』

『印象を変える必要ない。
 他のカラスに会ったら
 お前の身が危ない。
 それに、
 オレだって他のカラスと
 なんら変わらない』

と、忠告された。

『でも、
 カラスのあんたに助けられた事は
 覚えておくよ。
 それに
 他のカラスと見分けも付く。
 その、
 白い嘴が、あんたの目印だ。』


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