無知は損をする。家を取られた話。

戦前から商店を経営していた祖父はかなりの金持ちで、店をいくつも持っていて豪邸に住み、女中さんたちを雇い、伯父伯母父親は小学校と幼稚園に通い昼は女中さんが温かいお弁当を持ってくるという、とんでもない家庭だった。

しかし戦争で困窮し、なんとか商店街の借地で商店を再開。それでも丁稚さんがいる大きめの商店だった。

ところが!!
道路を整備するとか、裏の家がビルを建てるとかで、土地を3割ほど譲った。
ここで土地に関する知識があれば大金を貰えたはず。しかし不動産のことはさっぱりな祖父は二束三文で借地権の一部を売ってしまった。

私が生まれた頃にはすでに風呂場と父親と丁稚さんの部屋が無くなって、せまーーい家になっていて、川の字で寝るような部屋しかない。

この時点で土地に関しての勉強を誰かがすれば良かったのに、金持ち意識が抜けない一家は特に何もしなかった。
そしてバブル。
裏のビルの持ち主がマンションを作るから店と3LDKを持たせてやると言ってきた。

全部嘘。
マンションはオフィスビルに、商店だけがその一角に。賃貸の住まいは最初のうちは家賃を支払ってくれてたけど、そのうち支払われなくなり、とうとうビルは銀行に抵当に取られ、商店も取られ……

ビルを建てた側は自己破産、商店は二束三文の金を渡され出ていくことになり、両親は無職になった。

気合いを入れて働くぞ!家族のために!と気持ちを入れ替えた朝、遅番で出かける前に茶の間に行くと、朝から酒を飲む両親の姿が。

えー、ちょっと待ってよー。
働きに出る娘と、酒を飲む両親て。ありえない。
帰ってから酒は夜だけ、昼間は水なり茶なりにしてくれ、と頼んだら、今度は毎日喫茶店でモーニング。
娘2人は昼食に500円もかけられないから、ドトール、なか卯、吉野家。喫茶店も週に2回までと決めた。

貧乏人は頭が悪いというか、頭を良くするチャンスがない。だから不動産屋の知人に聞いたら「借地権は所有権と同等の価値がある」と教えてもらい、祖父も両親も裏のビルの持ち主に騙されていたことが判明。自己破産したのは持ち主だけで、嫁は破産していないから嫁名義の豪華なマンションに住み、破産後の借金は親族間でグルグル回っているとのこと。

本当に無知は身を滅ぼす。

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