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28日後… ロンドン封鎖日記

かゆ… うま……

ロンドンが封鎖になって1週間が経ちました。封鎖以前の自粛期間も含めると、既にかれこれひと月近く引き篭もり生活を送っている事になります。

元々絵描きなんてギークサイドの人間だし、在宅作業も珍しいものではないので、個人的には割と普通に生きられていますが、周囲の環境の激変っぷりが凄過ぎて、今でもなんだか夢見てるような気分です。だってこんなB級ブロックバスター映画みたいな状況が現実に起こるとか、しかも全世界同時で逃げ場もないとか、つくづく世の中何が起こるかわからないなーなどと呑気な自宅謹慎です

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思い返せば2020年1月。ついこないだです。年明け早々、中国で感染症が起こっているというニュースは、イギリスでも報道されていました。が、ほんのちょこっとだけ。誰ひとり気にする人もいませんでした。

2月に入り、感染が東アジアに広がっているとのニュース。この時点でも誰も気にしない。ただダイヤモンドプリンセス号あたりから、イギリス人の乗客がいた事もあって報道が増え始めます。こちらの人々の反応は「なんか日本がおかしな事やってんなー」という感じ。カルロスゴーン騒動とかも記憶に新しい中で、乗客の隔離を受けて「日本の人権意識も中国と大差ねーな」くらい思われてたかもしれません。というか僕が思ってましたごめんなさい。詳細もよくわからないまま、乗客解放にて一件落着的なムードで新型コロナは一旦ニュースから消えました。

3月。ある日イタリア人の友人と飯食ってたら、「イタリアがヤバい事になってる」と。最初何の事かわからなくて「コロナウィルス?てあの中国の感染症?今?イタリアで??」とさっぱり話が繋がらなかったのを憶えています。

イタリアの状況が報道され始めたのはその2〜3日後でした。感染が拡大して多数の死者が出ていると。そしてそこからは毎日、信じ難い情報が怒涛の勢いで押し寄せる事になります。

イタリアでは自粛勧告が出され、無人のヴェニス等の衝撃映像が次々届きます。死亡者が200を超えたあたりで全国封鎖。死亡者数が毎日倍々で跳ね上がっていきます。一体何が起こっているのか誰にもわからず、しかしヤバい感じだけはひしひしと伝わってきて、これぞまさにパニックという感じで皆震え上がりました。

続いてスペインでも同様の事態が広がり始め、スペインも封鎖になります。僕のパートナーはスペイン人なので、地元の家族や友人たちとのビデオチャットでのアップデートが毎日の日課に。

更にフランス、オランダ、ドイツなどにも感染が拡大、続々封鎖。そしてコロナ被害はついにここイギリスにも到達。外出自粛や在宅勤務への移行が始まります。当初は自粛勧告のみという雰囲気でしたが、事態は深刻であるとの判断から、翌週にはセミ・ロックダウンに切り替わりました。最初に友人からイタリアの話を聞いた日からたった2週間であれよあれよとヨーロッパ全封鎖、この驚愕怒濤の急展開

ロンドン中心部からは人が消え、僕が住んでいるエリアでも通勤者などがいなくなり、通りが静寂に包まれます。普段ロンドンの空を埋め尽くす航空機群も消えて、空が青く澄み渡ってる…。ライフライン以外の全経済活動・社会活動が停止。満開の桜の中、人類の叡智と能力をいきなり根こそぎ封じられたディストピア感

…こんな事があり得るのか。

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3月末日現在、ロンドンは尚もロックダウン下です。イギリスでの死亡者も1000人を超え、今後更に増加していくでしょう。とはいえ、個人レベルでは直接的な生命の危険などは感じないし、外出も禁じられてはおらず、買い物や軽い運動は許可されているので、戒厳令のような切迫感はありません。それでも人が人を避け合う異常な空気で満たされている上、基本的にリアルソーシャル活動が無いので、友人との他愛の無いパブ飲みとかが無性に恋しい。人間は一人では生きられない社会性生物なんだなあとしみじみ再確認したり。

ずっと家にいるので、当然ネット漬けで、日本の状況も随時追っかける訳ですが、現地ニュースやTwitterなどでの日本の呑気っぷりに日々唖然。オリンピックとかお肉券とか、世間知らずのガラパゴスもここまでいくと、さすがに痛すぎてもう全然笑えません。そしてそんな中、俺の…俺たちの志村が…。うしろに気付けなかったか…。セレブとしては全世界で最初の犠牲者になってしまった。よりによって俺たちのヒーローのこんな最後、あんまりだ。謹慎生活中で一番堪えた…

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不幸中の幸いで、今のところ僕の直接の関係者に深刻なトラブルはありませんが、失職した友人はチラホラ出ています。ロンドンはあらゆる国の出身者が住んでいるので、友人の知人くらいの距離感になると、時折悲報も聞こえてきます。

イギリスより2週間早く、イギリスより厳しい待遇で、今も尚謹慎している南欧の人達は相当キツいだろうと思います。ラテン気質の人たちにとっては家族に会えないだけでも相当な拷問なのに、それは今後もまだまだ続きます。経済的にも元々弱ってたエリアなので、今後の見通しもかなり険しい。

中国は2か月で封鎖解除しましたが、全世界的にはもっと長引くでしょう。EU離脱直後のイギリスだって、他所の心配してる余裕は無いですし、経済が繋がっている以上、2020年は世界のどの国にとっても過酷な1年になります。正直オリンピックは来年でも厳しい気がする。

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ある夜、「#clapforyourcares / NHS(国営医療機関)で働く医療従事者を讃える拍手をしよう」というイベントがSNSを通じて企画されました。似たような企画はイタリアやフランスの映像で見ていたし、フ〜ンて感じで流してたんですが、一応バルコニーに出てみました。

夜8時、一斉に始まった拍手喝采。鍋を叩く人、使い残しの花火を飛ばす人。照明ピカピカさせて音楽を爆音で流す人。車で絶叫しながら走り過ぎてく人。あんなに静まり返ってた街に、一瞬だけ生命力が戻ってきた感じ。僕の住むエリアはムスリムが多いんですが、老若男女、人種も宗教も超えた、今だけいつものロンドンが戻って来た一体感。距離を取り合って静かに暮らしてるけど、みんなちゃんとここにいる安心感。毎日滅入るニュースばっかの中で、久しぶりのポジティブなエネルギーに勇気付けられる。バカにしてたけど、実際こんなに心理的効果があるもんなんだな、と感心しつつ隣を見たらパートナーが号泣してた。ぅおぃ。

後でBBC見たら、本当にロンドン中、イギリス中の人たちが参加してたみたいです。SNSでも号泣報告多数。そりゃそうだよな。やっぱりみんな怖いし、不安だし、ストレス溜まってるし。頑張ってガマンして平静を装って生活してるんだよな。そしてSolidarity/結束でなんとか乗り越える。Life goes on。またしても人間の社会性生物たるやを実感。

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なんつーか、今回はざっくりとサマリーで振り返ってみようとしたんですが、思う事が多すぎて全然まとまらないですね…。まあ考える時間だけは大量にあるので、もうちょっと分割して改めてまとめてみようと思います。

まだまだこれから何がどうなるかわからないですし、とりあえず日本のみなさんも気をつけて。


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いつの世も、アーティストという職業はファンやパトロンのサポートがなければ食っていけない茨道〜✨