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【患者が増える街、減る街】1,061万件のデータを分析して分かった、全47都道府県、全1,769市区町村のランキング。

こんにちは。医療介護データ研究所では、オープンデータを活用したデータ分析を行い、業界関係者に向けてわかりやすく情報発信をしています。

今回、医療介護データ研究所では、約1,061万件のデータを分析して患者が増える街、減る街を調査しましたので、その結果を発表致します。

【前提】2020年代と2030年以降で患者数の増減傾向が大きく異なる

ランキングを発表する前に、押さえておいてもらいたい傾向があります。それは、2020年代と2030年以降で患者数の増減傾向が大きく異なるということです。

都道府県別にみる前に、全国の入院患者数の推移を見てみましょう。2030年まで上昇傾向が続いたのちに、減少傾向に転じています。

入院患者数の推移

同様に、外来患者数の推移も見てみましょう。入院よりも少し早く、2025年まで上昇傾向が続いたのちに、減少傾向に転じていることが分かります。

外来患者数の推移

2020年代と2030年以降で患者数の増減傾向が大きく異なる理由は、年齢別の人口動態で説明できます。

2030年までは75歳以上の高齢者人口は増えますが、2030年以降は横ばいで推移します。75歳以上の高齢者人口が増え続けている時代は推計患者数も増えていきますが、75歳以上の高齢者人口が横ばいになると(総人口は減少していくため)、推計患者数は減少していきます。

人口動態の変化

全国的な患者数の動向に関する詳しい話は、他のnoteにまとめていますので、よろしければ合わせてご覧ください。

今回のランキングでは、このような傾向の違いを踏まえて、『2020年代に患者が増える街、減る街』と、『2045年までに患者が増える街、減る街』で、2つの年代に分けてランキングを作成しました。

トップは意外な県!?2020年代に患者が増える街(都道府県版)

まずは、2020年代に患者が増える都道府県トップ10をご紹介します!

2020年代に増える1

2020年代に増える2

2020年を基準に、2030年時点でどれだけ患者数が増える見込みであるかを計算しました。入院患者数の増加率と外来患者数の増加率をそれぞれ計算し、合計た数値を総合増加率として、ランキングの基準にしています。

意外!?なことに、沖縄県が他の都道府県に圧倒的な差をつけて1位になりました。

実は、沖縄県は、高齢化率が全国で最も低く約22.6%です。日本全体の高齢化率は約28.9%ですので、だいぶ低い水準であることが分かりますね。(高齢化率は2020年推計人口ベース)

さらに詳しく、沖縄県の人口動態を見てみると、75歳以降の高齢者がこれから大きく増加していくことが分かります。

沖縄県の人口動態

現状、高齢化率が低く、これから75歳以上の人口が伸びていく地域だからこそ、患者数が増える街になっているのですね。

ちなみに、沖縄の人口動態においては、75歳以上人口よりも、0~14歳の子供世代の人口が多いことも特徴的です。少子高齢化が進んだ日本では、基本的には0~14歳の子供世代の人口よりも、75歳以上人口が多いです。沖縄の他には、滋賀県、愛知県も75歳以上人口よりも、子供世代人口が多いですが、それも2025年までと見込まれています。2030年時点でも子供世代人口が、75歳以上人口を上回っているのは沖縄県を除いて例がありません。非常に未来のある地域と言えます。

東北・四国が目立つ。2020年代に患者が減る街(都道府県版)

続いて、2020年代に患者が減る都道府県ワースト10をご紹介します!

2020年代に減る1

2020年代に減る2

東北、四国のランクインが目立つ結果となりました。中でも、秋田県が47位と最下位となりました。先ほどの沖縄県とは反対に、秋田県は高齢化率が約38.0%で最も高い都道府県です。秋田県の人口動態も確認してみましょう。

秋田県の人口動態

75歳以上人口は増加傾向にあるものの、その他の年代の人口減少が大きく、結果として患者数が減ってしまう推計となっています。

秋田県では、75歳以上人口が、40~64歳の年齢層に迫っており、2040年までには、75歳以上人口が全世代の中で最も多い年齢層になる見込みです。

ランキングが大きく変動!2045年までに患者が増える街(都道府県版)

続いて2045年までに患者が増える街、減る街を見ていきましょう。トップ10はこちらです!

2045年までに増える1

2045年までに増える2

2020年時点と比較して、2045年時点でどの程度、患者数が増えているか(減っているか)で算出しました。

注目したいことは2つあります。

1つめは、ランキング6位以降は患者数がマイナスになる推計であることです。都道府県のうち42か所(約89%)は、今よりも患者数が減少する見込みです。2020年と比べて、非常に厳しい推計となっています。

冒頭の繰り返しになりますが、2030年までは75歳以上の高齢者人口は増えますが、2030年以降は横ばいで推移します。75歳以上の高齢者人口が横ばいになると(総人口は減少していくため)、推計患者数は減少していきます。2030年から、本格的な患者数減少時代に突入していくと言えるでしょう。

患者減少時代に突入


2つめの注目したいことは、大都市圏がランキングで、大躍進しているということです。特に、大阪府は2020年代に患者が増える街ランキングでは33位でしたが、2045年までで見ると7位まで急上昇しています。また、トップ3は東京都、神奈川県、愛知県と大都市であり、いずれも2020年代のランキング順位からランクアップしています。

なぜ、大都市圏はランキングで大躍進したのでしょうか。

その理由は、「団塊ジュニア」にあります。

ランキングが急上昇した大阪府の人口動態を見てみましょう。

2045大阪府の人口動態

2030年以降、75歳以上の人口は増加傾向が止まってしまいますが、その代わりとして、65~74歳の人口が増加しています。これは、2035年には、団塊の世代(1947~1949年生まれ)の子供たちである、団塊ジュニア(1971~1974年生まれ)が65歳になる為です。

東京都、神奈川県、愛知県でも同様の傾向がみられ、団塊ジュニアが多く住んでいる地域(大都市圏)ほど、2045年まで見据えたときには患者数が増える(又は維持される)ということが分かります。

一方、団塊ジュニアがあまり住んでいない地域では、総人口減少の影響を強く受けてしまい、患者数が減少していきます。

秋田はどうなる!?2045年までに患者が減る街(都道府県版)

最後に、2045年までに患者が減る都道府県ワースト10で見てみましょう!

2045年までに減る1

2045年までに減る2

ワースト10になると、2020年と比べて患者数が10%以上減少しています。特に秋田県はマイナス16.8%と、非常に大きいマイナス数値になっています。

秋田県の人口動態を見てみると、患者数が増える街の反対で、団塊ジュニアが増えていないことがわかります。

2045秋田県の人口動態

団塊ジュニアが増えないことで、総人口減少の影響を大きく受け、患者数が大きく減少してしまう推計となりました。

全47都道府県、全1,769市区町村のランキング

ここまで都道府県ランキングトップ10とワースト10をご紹介してきました。さらに詳しく知りたい方は、BIツールにてランキングを公開していますので、ぜひ見てみてください。

あなたの街の患者は増えるでしょうか、それとも減ってしまうのでしょうか。

2020年代に患者が増える街ランキング

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2045年までに患者が増える街ランキング

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■参照データについて

国立社会保障・人口問題研究所が公表している地域別将来推計人口と、厚生労働省が行う患者調査の傷病別・年齢別患者数から、将来推計患者数を算出しました。

データレコード数は、1,061万4千件に上りました。(市区町村数(1769件)×年齢区分別人口(5段階)×2020年から2045年までの5年毎の人口変動(6年代分)×傷病分類別受療率(20種類×年齢5区分×2種類(入院・外来)))

参考データの詳細

■人口動態のデータについて

人口動態のデータはこちらのBIツールにて公開しています。ランキングの原因分析をしたい方はぜひ合わせて確認してみてください。

2020年代の人口動態変化

2045年までの人口動態変化

なお、本推計は受療率を一定として計算しています。近年、国の政策により平均在院日数が減少するなど、受療率自体が下がる傾向がみられています。今回の推計はあくまで人口動態に基づいた患者数の動向になりますので、国の政策を加味すると、患者数の増加率は下振れする可能性が高くなります。

今回は、以上です。

これからも、医療介護専門のコンサルとして10年以上勤務し、データマニアである私が、調査・研究した情報を週1回程度のペースで発信していきます。また読んでみようと思っていただけたようでしたら、ぜひフォローをお願い致します!調査・分析の励みになります。

ではまた!

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