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高齢者1人にかかる医療費は年間92万円!?|将来推計人口を分析しよう(中編)

はじめに

「病院・介護施設のはじめての外部環境分析」と題して、病院・介護施設の外部環境分析の方法について解説しています。

これから医療介護経営に関わる方や、はじめての外部環境分析に挑戦したい方に向けて、出来るだけ分かりやすく解説していきます。

前回は、「将来推計人口を分析しよう(前編)」を紹介しました。

「将来人口推計を分析しよう」では、全3回に分けて、各地域の将来人口推計をどのように調査し、調査結果からどのように経営のヒントを得るのかを解説します。

今回は、医療需要、介護需要と高齢者の数の関係性について解説します。

後期高齢者の1人あたり年間医療費は92万円

医療需要や介護需要を考えるときに切っても切り離せないのが高齢者の数です。一般に、高齢者が多い市場ほど、医療需要や介護需要が多い市場とされます。

「何を当たり前のことを!」と思われるかも知れませんが、実際にどのような関係があるのかはデータで見てみないことにはわかりません。

見たことがない方には、きっと発見があると思います。

早速ですが、「年齢階級別の1人当たり国民医療費」を見てみましょう。

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※画像をクリックするとBIツールに遷移します。

2017年度の1人当たり国民医療費を見てみると、65~74歳の前期高齢者と75歳以降の後期高齢者の1人当たり国民医療費が、他の年齢層に比べて圧倒的に高いことが分かります。

40~64歳の1人当たり国民医療費が年間25万5千円というのも、なかなか高い印象を受けますが、65~74歳の前期高齢者はさらに高く、年間55万7千円(40~64歳の約2.2倍!)、75歳以降の後期高齢者はさらにさらに高く、年間92万1千円(40~64歳の約3.6倍!)です。

「えー!ほんとにそんなにかかってるの!?」と思われるかもしれませんが、事実、1人当たりこれだけの国民医療費がかかっています。私たち国民の自己負担分は1~3割ですので、その金額で割り戻すと、実際に窓口で払っている金額になります。概算でも窓口で払っている金額を計算してみると、腑に落ちるのではないでしょうか。

特に65歳以降の高齢者において、1人当たりの国民医療費が高いことから、65歳以降の高齢者数が多ければ多いほど、医療需要が高くなることが分かります。

75歳以降の介護給付費は、40~64歳の約86倍!

続いて、介護需要と高齢者数の関係についてみていきましょう。

以下の「年齢階級別の1人当たり介護給付費」を見てみましょう。

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※画像をクリックするとBIツールに遷移します。

1人当たり年額介護給付費を見てみると、75歳以降の後期高齢者の1人当たり介護給付費が、他の年齢層に比べてスバ抜けて高いことが分かります。

数値について詳しく見ていく前に、少しだけ介護給付費について解説します。介護給付費は、要支援・要介護者に関してかかった費用を表しています。高齢者が介護サービスを受けるためには、市区町村から介護保険の認定を受ける必要があります。認定は介護を必要とするレベルによって「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階に分かれています。どの区分になるかで、受けられる介護サービスの内容や、個人負担額などが変わってきます。

そして、要支援・要介護に認定されるのは40歳以降の方のみになります。

そのため、グラフの中には40歳未満の年齢階級はありません。

数値の話に戻ります。

グラフの40~64歳の1人当たり介護給付費は年間5.8千円です。これは自己負担額だけではなく、介護保険給付額も合わせた額になります。意外と少ないと思われるのではないでしょうか。

40~64歳の1人当たり介護給付費が少ない理由は、40~64歳で介護給付を受けている人がそもそも少ないためです。40~64歳で介護給付を受けている方は、0.3%しかいません。ほとんどの人の介護給付費が0円の為、平均してみてみると1人当たり介護給付費が少額になります。

さて、介護給付費を考えるうえで、大事なのはここからです。

40~64歳の1人当たり介護給付費は年間5.8千円でしたが、65~74歳では5万8千円(40~64歳の約10倍!)、75歳以降では49万8千円(40~64歳の約86倍!)です。特に、75歳以降で1人当たり介護給付費がズバ抜けて高くなることに注意が必要です。

それもそのはずで、40~64歳で介護給付を受けている人は0.3%でしたが、65~74歳で介護給付を受けている人は約3%、75歳以降で介護給付を受けている人は約24%で、75歳以降になると、介護サービスを受ける方が急増するのです。

75歳以降の高齢者において、1人当たりの介護給付費がズバ抜けて高いことから、75歳以降の高齢者数が多ければ多いほど、介護需要が高くなることが分かります。

まとめ

今回は、「高齢者1人にかかる医療費は年間92万円!?|将来推計人口を分析しよう(中編)」と題して、医療需要、介護需要と高齢者の数の関係性について解説しました。

1、医療需要は、65歳以上の高齢者数の影響を強く受ける

2、介護需要は、75歳以上の高齢者数の影響をずば抜けて強く受ける

3、以上のことから、病院の外部環境を分析する場合は、65歳以上の高齢者数が将来どのように推移していくのかに注目し、介護施設の外部環境を分析する場合は、75歳以上の高齢者数が将来どのように推移していくのかに注目することが重要になります。


次回は、「将来人口推計を分析しよう」の最終回として、将来推計人口から経営のヒントを得るためのコツについて解説します。

今回の内容を気に入ってくださった方は、ぜひ、フォローの上、また見てみてください。

お読みいただき、ありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!

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