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地方でSaaS導入支援会社を起業して3年、階段から降りられなくなった(後編)

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謝辞

前編、中編が多くの人に、読んで頂けた。素人の物書きなので、見苦しいところもあったかと思う。感謝しかない。

実は、もっと否定的な意見が出ると覚悟していた。

「上手くいかないのは経営者としてのスキル不足じゃないか」

こんな意見があってもいい。現に、その通りだ。

私は、自身が優秀な経営者だとは思わない。実際、ぜんぜんすごくないメンタルも激弱だ。もっと経営者としてスキルがある人もたくさんいるし、javascriptがいじれるだけで、freeeみたいなものを1から作る技術も、無い。

ただ、本当にSaaSが好きなんだと思う。だからこそ、矛盾が苦しいし、なんとかしたいと、心の底から思っている。

中小企業とテクノロジーの「逆相関」

中小企業のIT導入は、本当に手間がかかるし、相当根気が必要だ。

SaaSは、レバレッジ(てこの原理)を効かせなければならないケースが多い。そうなると、コスト削減や拡張性を考慮して、オンライン上で、営業からサポートまで行うことが大半だ。

ここが、日本の中小企業とSaaSの矛盾だ。SaaS企業はスケール(拡大によるコスト削減)を目指すが、大企業よりも中小企業の方が、信頼獲得や導入成功のためにかかるコストが高い。しかし、大企業より、お金は、持っていない。逆相関が働いている。

SaaS企業が規模拡大のために社内プロセスを標準化したり効率化すると、特に地方中小企業との距離が開き、結局信頼が獲得できず、「SaaSはハードルが高い」で終わってしまう。

10年後を想像したときに、「最終的にエンタープライズ(大企業)向けSaaSだけ残りました」や、「東・名・阪のみで普及しました」という世界が来るかもしれない、と思っている。

"なめらか"なSaaSマーケットのために

別に世界最強の企業を作りたいわけでも、SaaS企業を宇宙一にしたいわけでもない。ただ、大好きなSaaSが、必要とする人のところに自然と届けば嬉しい。これを私は"なめらかな"と表現したい。

そのために、3つのやることを、決めた。

1.SaaS導入におけるノウハウの"オープンソース化"

怖いが、"秘伝のタレ"を、当社は公開していこうと思う。

中小企業経営がSaaSの検討〜導入フェーズにおいて中核となる考え方などの"公開"を考えている。今までは、このノウハウこそが当社の宝として、必死に守ることに固執していた。「ノウハウが漏れたら、ウチは潰れる...」という恐怖と戦っていた。

しかしよく考えれば、一度見ただけで真似できてしまうノウハウは、大した情報ではない。いずれ簡単に流出していくだろう。

これは、ITの世界ではよくある話だ。"オープンソース"という。従来はソースコードなど技術そのもののオープン化であり、SaaS導入ノウハウ、マインドセットといった定性的な情報のオープン化だ。

ノウハウをnoteにまとめておく、なども一つの手段かもしれないが、今までの経験から、"効率的なやり方"と、中小零細、地方企業との相性は非常に悪い。

泥臭いやり方で広めていけないか、ということを思案している。例えば、紙媒体であったり、啓蒙ポスター制作などがそうだ。商工会議所や経営相談窓口など、地方では非オンラインのポイントは多くある。

これは、同業潰しではない。むしろ、ノウハウを開示することで、地方の中小企業IT会社さんに、クラウド化の相談がもっと行くような社会を作っていくことも、目指している。

2.SaaSに対する「信頼」の獲得

そして何より、SaaS導入出発点である、「経営者への動機付け」も手掛けたい。課題を認識するための場の提供から始まり、テクノロジーは怖いものではなく、経営者や従業員の人生を豊かにしてくれる仲間なんだと、認識してもらう活動が、マーケットにおいてまだまだ不足している。

これは早速動き出しており、12月は岐阜県高山市、1月は札幌市と提携して、クラウドの基礎理解に関するセミナーを開催する予定だ。SaaSの純粋な啓蒙活動をしていきたいと思う。

3.SaaS企業に対するサポート

3つめが、これは恩返しの気持ちもあるが、SaaS企業自身へのサポートも、チャレンジしたい。逆説的だが、SaaS企業をサポートすることで、地方中小企業のためになることもあると思う。

実は早速これに関しては11月末に、とあるSaaS会社さんで私の社員向けセミナー開催に向けて動いている。地方におけるSaaS導入の笑あり涙ありの話、リアルな現場、成功ストーリーのお話をしようと思う。

SaaSビジネスという特性上、対面で顧客と向き合ったことのない部署や、ユーザーイメージがわかない社員も増えてきたと聞く。現場にいけないエンジニアや、新卒社員に、もっと手触りのある、中小企業の実情、感情や声を届けたい。SaaSがこんなにも喜ばれているということを知ってほしい。

それを種に、またSaaS企業自身の飛躍につながれば、エコシステムが回り出すはずだ。

お金からの出発をやめて、一から考えた

上記の事業はすべて、現時点ではお金の取り方は考えていない。依頼する方には、「何も決め切れてない」と正直に伝えている。マネタイズというのは、中編でも述べたが、ビジネスを行った最終結果にすぎない。成績表みたいなものだ。結果は待つものであり、書き換えることはできない。

しかし、行動なら今すぐに始められるし、変えられる。

おわりに

ちゃんと文章など書いたことも無い私にとって、今回こんなにもたくさんの反響があって驚いたし、少し恥ずかしい感じもする。

共感してくれたすべての方に、感謝したい。

そして、もし、否定的なコメントを我慢していた方がいたら、ぜひ直接伝えてほしい。すこし心臓がチクッとするかもしれないが、そういう過程を経て、私も前進していきたいと思う。

失敗に寛容な社会を、とよく言われる。

私だって、怖い。

これだけ大風呂敷を広げて、挫折したら、「ほらみろ」って言われるかもしれないと思うと、怖い。

起業して、クライアント先の駐車場で泣いたことも、ある。不安で眠れない日もあった。辛くて家出した事だってある。

それでも、なお。なお、だ。

愛するSaaSのマーケットに違和感があり、私のnoteに共感者がいる以上、何かできたらと思う。そして、この行動含めて、これが"私"であり、私が、まず私自身を受け入れてあげたいと思う。

・・・

東京駅から乗った、北陸新幹線が動き出した。長野県の厳しい山々が近づいてくる。ぽつりぽつりと人が降りていく。

そして私は、また長野県へ、戻ってゆく。

<前編>

<中編>


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