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ビジネス英語でもない、ファイナンスや経営戦略論でもない、留学して本当に役に立ったこと

カリフォルニア州のクレアモントにあるピーター・ドラッカーのビジネススクールへの留学生活で役に立ったことは、ドラッカー教授の授業から受けたシンプルで分かり切っていることをもう一度考えさせられ、それがいかに難しいことなのかを初めて知るというショック、学生たちとの英語を使ったディベートになかなか勝てず、いつも勢いで言いくるめられてしまう悔しさ(インド人とドイツ人のペアの怒涛のようなプレゼンテーションに負けたのは今でも悔しい)など、いろいろとある。

そんな中でも一番大切だと思うのは、やはり世界中からやってきた学生たちと知り合いになれたことだ。よく留学先では日本人同士で集まるなと言う話があるけれど、ビジネススクールでは私はそうは思わなかった。日本から留学してきていると言う事は、日本に帰ってから留学で学んだことやネットワークを活用して今後のキャリアに役立てたいという思いがあるはずだ。中には、私のように将来はアメリカに住んで、働きたい、ビジネスをしてみたいと思っている人もたくさんいる。そういう人たちと出会うということは、それが日本人であるか、外国人であるかには関係なく、とても貴重なことだからだ。ビジネススクールでは、日本人、外国人という線引きをすること自体が全く意味のないことに私は思えた。いろいろな業種から来ている日本人とたくさん知り合うことができたが、自分の将来のキャリアとして、やはり日本のマーケットとか日系コミュニティーに詳しいことがアメリカ企業に就職するとしても自分の強みとなる事は分かっていたし、実際にMBA留学でできたアメリカ人の友達よりも日本人の友達のコネクションを使って、ビジネスに役立てたことの方が多い。実際、卒業して日本に帰ってから、ベンチャー企業に出向した際に、アメリカに残っている日本人に、そのベンチャー企業のアメリカ進出について相談し、アメリカで会っていろいろな人を紹介してもらったこともある。

同時に、もちろんアメリカ人の友達がたくさんできたこともとても良かったと思っている。ビジネススクールに来ているアメリカ人や外国人の学生の中には、将来普通では自分のようなサラリーマンとは接点のないポジションにつく人たちがいる。今でも付き合いがある友達の中には、例えば、PCメーカーのレノボのバイスプレジデント、ロサンゼルスにあるゲッティー美術館の投資部門マネージャー、トムソン・ロイターのChief Marketing  Officerなどがいて、電話やメールでいろいろと相談することができる。こういったネットワークは、何物にも代えがたく、彼らは同期ではあっても、私のメンター的な存在になっている。特に、ゲッティー美術館の投資部門マネージャーは、私がボストンでベンチャーキャピタルにいた時やベンチャー企業で米国進出をした際にとても親切に手を差し伸べてくれた。転職先の紹介までしてくれた。

これがレノボのVP、Ajit の最近のビデオ。こいつのプレゼンにはいつまで経っても追いつけない。

留学中での勉強のことも本来は書きたいところだが、基礎として身についている事はたくさんあっても、そのまま実務に役立っている事と言うのは今となってはあまりない。その中でも、実務に近いことを教えてくれた印象に残った教授を何人か挙げておきたい。ピーター・ドラッカー教授はもちろんだが、その他にも優秀な教授がたくさんいた。その1人がマシャレロ教授だ。私のレポートに唯一良い評価をつけてくれたからと言うわけではないが、ドラッカー教授の教えを一番理解してそれをわかりやすく伝えてくれた教授だった。Daily Druckerの著者でもある。先日訃報をニュースで読んで、とても悲しく残念に思った。生存中にいろいろともっとやり取りをしておけば良かったと後悔している。次に頭に浮かぶのはプラグ教授だ。インベストメントの教授なのだが、初めて投資と言うものを学問と言う形で私にわかりやすく教えてくれたとても元気でアグレッシブな教授。ジーン・リップマン・ブルーメン教授も、組織行動論やリーダーシップ論について、とても実践的で洞察に溢れた授業を展開してくれた。ブルーメン教授で記憶にあるのは、パサデナにある自宅での課外授業だ。書斎には壁一面の本棚があり、いくつもの興味深い本を手に取ってみたことを覚えている。教授と交わした会話や、いろいろなやり取りは今でも記憶に残っている。ドラッカー教授については、日本に戻ってから出向していたベンチャー企業で、イベントに講演者として登壇して頂くことを考え、直接お願いしたことがある。もちろん多忙であったこともあり、丁寧にお断りされたが、ドラッカー教授から直接直筆のファックスが送られてきたのにはびっくりさせられた。

日本人、アメリカ人、インド人、インドネシア人、中国人、台湾人、韓国人、イタリア人、コロンビア人といった様々な国のビジネスマン、教授たちとの継続的な関係を持てたことはとても良かった。仕事だけの関係だとなかなか話すことができないような人たちでも、学校が一緒だったというだけで、何段階もすっ飛ばしてビジネスの話を進めることができる。学校というのは不思議なもので、卒業生だというだけで、LinkedInですぐにつながってくれたりもする。それを起点にビジネスになったこともある。同窓会みたいなものはあまり得意ではないが、生徒や先生とのずっと付き合っていくというのはとても貴重だということに何かあるたびに気付かせられる。

そういう意味では、夏休み中にフランスのトゥールース大学に一か月の交換留学をしたことも良かったと思っている。Arizona State Universityの生徒達と一緒に勉強し、フランス人の教授たちと課外活動や食事も一緒にしたことは貴重な経験だった。その当時、トゥールース大学では日本からの留学生をもっと受け入れたいと考えていて、私がその橋渡しを頼まれたりした。その後も学生たちとの関係は続いている。

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